○ コンパクトシティを実現するための戦略


●自律的な都市社会の形成を目指した都市マスタープランの策定
 「都市マスタープラン」は、各市町村が策定する計画ですが、国や県などの農業政策や国土行政との関わりの中で、市町村がマスタープランに主体性・独自性を盛りこむのは難しくなっているのが現状です。また、都市マスタープラン策定課程への住民参加も、市町村によって内実がまちまちの状態となっています。
 しかし、合理性と実効性のある都市マスタープランを練り上げ、コンパクトシティを目指した都市計画を展開していくには、住民参加のなかで、共通の都市のあるべき姿の認識をつくっていくことが不可欠です。今後は、各市町村間で情報を交換しながら、住民と行政の目指す都市像の合意形成に力を入れていく必要があります。そのためには、研究者や専門家、行政担当者の研究を蓄積し、それらを支えていかなくてはなりません。

●広域連携のための事業展開とコンパクトシティの統一
 コンパクトシティへの取組みは、それぞれの市町村が個別的に展開するだけではなく、広域的な地域整備の課題として取り組んで行くことが重要です。高速交通体系の整備や河川流域を重視した地域連携などの広域連携が進む中で、これらとコンパクトシティの考え方を両立させた地域整備が求められていくと考えられるからです。まず着手できる手がかりとしては、広域連携の推進に関わる事業について、そのインフラ整備とそこに関わる都市マスタープランの調整が考えられます。

●コンパクトシティに向けた諸課題の調査研究の推進
 コンパクトシティの実現に向けては、その地域の特性や、人々のライフスタイルにより、多様な課題の発生が考えられます。これらの課題に取り組む上では、系統的な調査研究が不可欠となるでしょう。
 国内・国外における課題への取組み成果を活用しながら、その都市に相応しい対応策を見出していくための、専門知識の横の連携・政策研究の継続が重要です。

●市街地再生・コンパクトシティのためのネットワーク形成
 コンパクトシティへの取組み成果をさらに効果的に活用していくために、各市町村との経験交流をしたり、広域連携の相互調整を行うためのネットワークを形成することが有効であると考えられます。そのためには、NPOなどがコンパクトシティに向けた学習、協議、経験交流、シンポジウムなどを継続的に企画し、行政・住民・企業が都市像としてのコンパクトシティやその実現に向けた地域整備のプログラムについての広範な共感を得られるようなキャンペーンを行えるような支援体制づくりが必要です。

●新しい創造型都市産業(周辺農・林・漁業との関連を含む)の育成
 コンパクトシティが個性的で創造的な魅力を持つためには、都市が独自の価値を生み出す活動が必要であり、その中心は産業が担うことが予想されます。地域の資源を活かしたモノづくりの産業の充実こそ、流通産業の充実や大手企業への依存により失われた地域の個性を取り戻す上で重要なのではないでしょうか。

●コンパクトシティに向けた国―都道府県―市町村の連携
 コンパクトシティの実現に向けては、国が各分野の連携をさらに進め、県や市町村への合同支援体制を確立することが求められます。都市再生は極めて総合的な課題であり、国、都道府県及び市町村は、従来の縦割り型の対応を改めることと、創造的な施策形成の能力をもつことが不可欠となります。