砂防事業の歴史
昔から土砂災害が多い日本
 日本では大昔から土砂災害が多く発生しています。古くは奈良時代に、大雨で山やがけがくずれ、人の命や畑、道路などが失われてしまわないように、山の樹木を切ることを制限する法律ができていましたが、土砂による災害はあとを絶ちませんでした。
 江戸時代になって、治山治水の思想が生まれ、各藩により砂防工事が行われるようになりました。そして明治時代になって、ヨーロッパから砂防技術が入り、治水三法と呼ばれる法律が整備され、全国各地で砂防事業が進んでいきました。
日本に土砂災害が多い理由
日本に土砂災害が多いのは、地形や気候に関係があります。
1つは、
  山が多く、その山ももろくくずれやすい岩や土でできているため
2つは、
   梅雨や台風の時、世界の国々の平均2倍半ほどのたくさんの雨が一度に降るため
3つは、
  急な流れの川が多く、大雨の時、洪水になりやすいため

という大きな3つの理由があります。
阿武隈川の土砂事業の歴史
▲昭和11年 荒川第2堰堤
▲荒川第2堰堤〔昭和12年(1937)〕
▲荒川流路工〔昭和20年(1945)〕
▲東鴉川第1堰堤〔昭和22年(1947)〕
▲荒川第7堰堤〔昭和25年(1950)〕
▲東鴉川第3堰堤〔昭和27年(1952)〕
▲蟹ヶ沢第3堰堤〔昭和28年(1953)〕
▲塩の川第4堰堤〔昭和30年(1955)〕
▲東鴉川第4堰堤〔昭和32年(1957)〕
▲荒川第9堰堤〔昭和34年(1959)〕
 さて、阿武隈川において、はじめて砂防工事がおこなわれたのは、砂防法(明治30年制定)がつくられてから3年後のことです。
  まずは、明治33年、荒川流域で山腹工が開始されました。その後、須川、松川などへの工事の範囲が広がっていきましたが、当時の工事技術はまだ高度ではなかったため、台風や洪水がおそってきてはこわされ、こわされては直しの繰り返しでした。こうして福島県の砂防工事は明治から、大正、昭和と継続して行われていきました。
  その中でも荒川筋は、吾妻山の火山活動や温泉作用による熱が原因で草木がなかったり、地すべり、洪水などの影響で荒れ方がひどくなっていました。下流には福島市街地や田畑が広がっているため、このままでは生活や人の命にかかわります。そこで、大正8年、今度は国による荒川の河川事業が開始されました。しかし、大雨のたび多量の土砂が流れ込み、川が埋まり、氾らんを繰り返したことから、土砂の流出を調整する砂防対策も必要とされ、昭和11年荒川上流域においても国の直轄砂防事業が開始されたのです。
 その後も昭和13年東鴉川での土石流や、第2室戸台風、カスリーン台風、アイオン台風、キティ台風などによる災害がたびたび起こりました。また、昭和52年吾妻山(一切経山)が小噴火をおこしたことから対策が急がれるようになり、松川流域、須川流域も国の直轄施工区域となって、火山砂防事業を実施しています。

沿 革
明治33年(1900)  ・福島県が荒川流域で工事に着手
昭和11年(1936)  ・阿武隈川水系荒川流域直轄砂防施工区域に編入。
 ・土湯村に内務省荒川砂防工場設置され、荒川第1堰堤着手。
昭和12年(1937)  ・〈荒川〉 荒川第1堰堤完成。
昭和15年(1940)  ・〈荒川〉 荒川第3堰堤完成。
昭和16年(1941)  ・〈荒川〉 荒川第2堰堤完成。
昭和21年(1946)  ・荒川砂防工場を工事事務所内に併置。
 ・〈荒川〉 川上第1堰堤完成。
 ・〈荒川〉 川上護岸完成。
昭和22年(1947)  ・〈荒川〉 荒川第1堰堤補修完成。
 ・〈荒川〉 天沼第1護岸完成。
昭和23年(1948)  ・〈荒川〉 東鴉川第2堰堤完成。
昭和24年(1949)  ・荒川砂防工場を工事事務所所管の出張所に統合。
昭和25年(1950)  ・阿武隈川水系松川流域は直轄砂防施工区域に編入。
 ・松川砂防出張所設置、大笹生村役場2階を借りて開所。
 ・〈荒川〉 荒川第6堰堤完成。
 ・〈荒川〉 東鴉川第1堰堤完成。
昭和26年(1951)  ・〈荒川〉 荒川第7堰堤完成。
 ・松川砂防出張所庁舎、大笹生村に設置。
昭和27年(1952)  ・〈荒川〉 荒川第8堰堤完成。
 ・松川砂防出張所位置変更。(山形県米沢市板谷へ移転)
 ・〈荒川〉 東鴉川第3堰堤完成。
 ・〈松川〉 松川第1堰堤完成。
昭和28年(1953)  ・〈荒川〉 荒川第5堰堤完成。
昭和29年(1954)  ・〈荒川〉 塩の川第1堰堤完成。
 ・〈松川〉 蟹ヶ沢第1副堰堤完成。
昭和31年(1956)  ・〈荒川〉 塩の川第4堰堤完成。
 ・〈松川〉 蟹ヶ沢第3堰堤完成。
昭和32年(1957)  ・〈荒川〉 東鴉川第4堰堤完成。
昭和33年(1958)  ・〈松川〉 蟹ヶ沢第1堰堤完成。
昭和34年(1959)  ・松川砂防出張所位置変更。(板谷地内にて変更)
 ・〈松川〉 蟹ヶ沢第5堰堤完成。
昭和35年(1960)  ・〈荒川〉 東鴉川第1床固堰堤完成。
昭和38年(1963)  ・〈荒川〉 東鴉川第3床固堰堤完成。
昭和40年(1965)  ・〈荒川〉 荒川第10堰堤完成。
 ・〈荒川〉 東鴉川第2床固工完成。
 ・松川砂防出張所板谷から庭坂へ移転。
昭和41年(1966)  ・〈荒川〉 荒川第9堰堤完成。
 ・〈松川〉 前川第2堰堤完成。
昭和43年(1968)  ・〈荒川〉 蟹ヶ沢第2堰堤完成。
昭和45年(1970)  ・〈荒川〉 東鴉川第4床固工完成。
昭和47年(1972)  ・〈荒川〉 荒川第11堰堤完成。
 ・〈荒川〉 東鴉川第5堰堤完成。
昭和51年(1976)  ・〈荒川〉 塩の川第2堰堤完成。
昭和52年(1977)  ・須川流域を直轄施工区域に編入。
 ・〈荒川〉 東鴉川階段工第5堰堤完成。
昭和53年(1978)  ・〈荒川〉 東鴉川階段工第6堰堤完成。
 ・〈松川〉 蟹ヶ沢第6堰堤完成。
 ・〈須川〉 不動沢第1堰堤完成。
昭和54年(1979)  ・〈荒川〉 東鴉川階段工第7堰堤完成。
 ・〈須川〉 白津川第3堰堤完成。
昭和55年(1980)  ・〈須川〉 水沢第3堰堤完成。
昭和56年(1981)  ・〈松川〉 蟹ヶ沢第4堰堤完成。
昭和58年(1983)  ・〈荒川〉 東鴉川第6堰堤完成。
 ・ 荒川橋完成。
昭和59年(1984)  ・〈荒川〉 荒川第12堰堤完成。
 ・〈須川〉 鍛冶屋川第3堰堤完成。
昭和60年(1985)  ・〈松川〉 蟹ヶ沢第7堰堤完成。
 ・〈須川〉 姥滝沢第4堰堤完成。
昭和61年(1986)  ・〈荒川〉 塩の川第3堰堤完成。
昭和62年(1987)  ・〈松川〉 前川第7堰堤完成。
 ・〈須川〉 鍛冶屋川第4堰堤完成。
平成元年  直轄火山砂防事業で実施
平成2年(1990)  ・〈須川〉 姥滝沢第5堰堤完成。
 ・〈須川〉 天戸川第1堰堤完成。
平成3年(1991)  ・〈松川〉 松川第4堰堤完成。
平成6年(1994)  ・〈松川〉 前川第6堰堤完成。
 ・〈須川〉 不動沢第2堰堤完成。
平成7年(1995)  ・〈松川〉 蟹ヶ沢第9堰堤完成。
 ・〈須川〉 鍛冶屋川第1堰堤完成。
平成9年(1997)  ・〈松川〉姥湯床固工完成。
平成11年(1999)  ・〈荒川〉荒川流路工概成。
 ・〈荒川〉東鴉川第2堰堤改築。
 ・〈荒川〉塩の川第5堰堤完成。
 ・〈松川〉蟹ヶ沢第10堰堤完成。
 ・〈松川〉板谷第1堰堤完成。
 ・〈須川〉白津川第2堰堤完成。
平成12年(2000)  ・〈荒川〉塩の川第1副堰堤完成。
平成13年(2001)  ・〈荒川〉東鴉川第3副堰堤完成。
 ・〈荒川〉東鴉川階段工第6堰堤補修。
平成14年(2002)  ・〈荒川〉荒川第13堰堤完成。
 ・〈荒川〉川上第1副堰堤完成。
 ・〈松川〉蟹ヶ沢第7堰堤(嵩上・腹付)完成。
平成16年(2004)  ・〈須川〉高湯第1堰堤完成。
平成17年(2005)  ・〈須川〉須川第1堰堤完成。
 ・〈松川〉袖川第1堰堤完成。
平成19年(2007)  ・〈荒川〉荒川遊砂地完成。
平成23年(2011)  ・〈須川〉須川第2堰堤完成。
平成26年(2014)  ・〈松川〉松川流路工完成。
平成28年(2016)  ・〈松川〉松川遊砂地完成。
平成29年(2017)  ・〈須川〉不動沢第3堰堤完成。
令和元年(2019)  ・〈須川〉不動沢第4堰堤完成。
令和2年(2020)  ・〈須川〉下高湯沢第1堰堤完成。
令和3年(2021)  ・〈荒川〉塩の川第7堰堤完成。