1-(2) 河川の総合的な保全と利用に関する基本方針

 最上川水系では、洪水から貴重な生命・財産を守り安全で安心できる地域を作る治水、全国的に有名な庄内平野を代表とする穀倉地帯へのかんがい用水や生活用水等を安定供給する利水、そして多様な動植物の生息・生育環境を提供し、うるおいとやすらぎの水辺を有する豊かな環境のバランスのとれた保全と利用を行う。そのためには、最上川の姿を良く知り、流域との連携を図り、地域の人々の意見を十分に踏まえるものとする。

 本水系は、米沢市、長井市、山形市、新庄市、酒田市などの主要都市を多く抱える重要地域を流れているため、水害発生の状況、河川利用の現況、流域の文化及び自然環境の保全等を考慮し、東北地方開発促進計画、庄内及び置賜地方拠点都市地域基本計画、環境基本計画等との調整を図り、かつ、土地改良事業等の関連工事及び既存の水利施設等の機能に十分配慮し、水源から河口まで一貫した計画のもとに、段階的な整備を進めるに当たっての目標を明確にして、河川の総合的な保全と利用を図る。

 災害の発生の防止又は軽減に関しては、沿川地域を洪水から防御するため、計画的に上流域に洪水調節施設を建設し、下流の洪水の軽減を図るとともに、堤防の新設、拡築及び河道掘削により河積を増大し、護岸等を施工して、洪水の安全な流下を図る。さらに、河口部については砂州堆砂を抑制するための対策を実施するとともに、各河川沿岸の低地地域において内水対策を実施し、安全度の向上を図る。これらに当たって、地震防災を図るため、堤防強化等を実施する。これらに加えて、整備途上段階で施設能力以上の出水が発生した場合においても、できるだけ被害を軽減するため、必要に応じ堤防強化等を実施するとともに、計画規模を上回る洪水に対しても、極力被害の拡大を防ぐよう配慮する。さらに、ハザードマップ等の提供、情報伝達体制及び警戒避難体制の整備、土地利用計画との調整、住まい方の工夫、越水しても被害を最小限にする対策等を関係機関や地域住民等と連携して推進する。  支川及び本川上流区間については、本支川及び上下流間バランスを考慮し、水系として一貫した河川整備を行う。

 
 河川水の利用に関しては、諸用水の需要に対処するため、寒河江ダム等を完成させ、流水の正常な機能を維持し、河川環境の保全に努めてきた。今後も増大する都市用水及び農業用水等の安定供給を確保するため、水資源の開発及び広域的かつ合理的な利用の促進を図るとともに、流水の正常な機能を維持するため必要な流量を確保するよう努める。さらに、流水の正常な機能を維持しつつ、必要に応じ消流雪用水や環境用水の確保等に努める。また、渇水等の発生時の被害軽減のため、情報提供、情報伝達体制の整備など関係機関等と連携を図る。

 河川環境の整備と保全に関しては、「歴史を育み、未来を拓く、紅花の路 最上川」をテーマに、母なる川をやすらぎとうるおいあるオアシスとして、人と自然の豊かな触れ合いの場を整備・保全するとともに、河川の水質を生態系の保全や親水性が図られるよう維持する。また、舟運を始めとする河川の利用に関する多様なニーズに配慮して、自然環境との調和を図りつつ必要に応じて整備・保全を行う。さらに、流域の人々のかけがえのない財産として、豊かな自然環境と良好な景観の保全にも努めるとともに、河川整備に当たっては、これらに配慮し、現有する生物の多様な生息・生育環境の保全を図るため、多自然型川づくり等を推進する。

 また、伝統行事・風習・祭等の活力のあるふるさとづくりや紅花の路として栄えた舟運・河岸の歴史文化の継承・醸成が図られるよう歴史的河岸景観の整備などに努める。

 さらに、健全な水循環系を構築するため、関係機関を始め流域全体で一体となって取り組んでいく。

 河川の維持管理に関しては、最上川には豊富な自然が残されており、その一部は県立自然公園にも指定されていることから、環境調査等を今後も行い、維持管理に反映させる。また、最上川には、こうした貴重な自然や全国有数のハクチョウ飛来地が存在する一方で、公園・運動広場や舟下りなど河川利用の期待の高い河川であることから、流域の自然環境・社会環境から見た地区特性との整合及び地域のニーズを踏まえた調整により適正な河川の空間の利用と保全を図るとともに、河川空間を安心して利用できるよう的確な河川情報の提供に努める。

 最上川は地形的に多くの狭窄部を抱えており、これらの区間においては大洪水時に道路の寸断等が考えられるため、洪水時における河川巡視の強化及び迅速な河川情報の収集と提供に努めるほか、洪水流下の阻害となる河道内樹木や堆積土砂を適切に管理する。また、河川区域内の土地における土石の採取については、洗掘の防止や魚類等の生息環境の保全の観点から適切に管理する。

 最上川は多くの樋門、水門、排水機場等の河川管理施設を有することから、これらの施設を管理するに当たって操作の確実性を確保しつつ、高度化、効率化を図るとともに、常にその機能が発揮できるように巡視・点検及び補修を行い、良好な状態に保全する。

 また、河川の維持管理には、流域の人々や地域との連携、協力が不可欠であるため、その体制づくりに努めるとともに河川美化、水質事故対応等に努める。