自然豊かな高瀬川(小川原湖)の整備と保全を考えるシンポジウム
平成16年11月7日(日) 上北町町民文化センター



高瀬川・小川原湖の
自然と私たち




 八戸工業大学の佐々木教授をコーディネーターに、4人のパネラーが、高瀬川(小川原湖)の現在の自然環境とこれからの整備や保全について、それぞれの立場からの意見の交換を行いました。

 自然豊かな高瀬川ということであれば、そのまま放っておけばいいじゃないかという議論があります。しかし、ヨーロッパでは手を入れて守っていく自然というものをしっかり捉えています。なぜ自然があって整備が必要かというと、自然というのは優しいときと怖いときがあります。例えば大雨で洪水になったとき、自然が急激に変化していきます。しかし、我々の手でその急激な変化を少し押さえながら、自然環境を守っていく必要があります。
 また、手を入れないでそのまま放っておく自然もあります。青森県の白神山地がその例です。
 こういう2つを明確に区分しながら、小川原湖の環境を守っていかなければいけないのではないかと思います。
コーディネーター
高瀬川河川懇談会
座長
八戸工業大学教授


佐々木幹夫
さん



 小川原湖には水鳥が主体ですが、仏沼も含めると、それ以外の様々な鳥が集まっています。
 世界に2千羽といわれているオオセッカという鳥は、そのうち6、700羽がここで生


NPO法人おおせっからんど理事
日本野鳥の会三沢支部会長
県立三沢高校教諭


津曲隆信
さん
活し、繁殖しています。
 しかしアシ原は遷移の途中にあり、ある程度管理していかないと、乾いて草原に変わっていきます。そのため、地元改良区の人々が管理し、状態をずっと保っているのが、オオセッカがいつまでもここで繁殖している一つのポイントだと思います。
 また日本では六ヶ所湖沼群でしか確認されていなかった、カンムリカイツブリのヒナが今年羽化しました。これらが小川原湖の中で生息することができると言うことは、湖全体を見ても、非常に貴重で豊かな生態系があると言うことを証明するのではないかと思います。

 小川原湖には多種多様な生態系が存在しますが、その大本は、小川原湖に塩水が侵入していることが一つの理由だと考えています。ほとんどの場

八戸高専建設環境工学科助教授

藤原広和
さん
合、上流河川からの流入によって水位の上下を繰り返しています。その水位が比較的低いときに海の水位は潮汐によって変動し、それが大潮や満潮時に小川原湖の水面より高くなり、海水が侵入してくるしくみです。
 小川原湖の最大水深は25メートルですが、毎年ほぼ水深18メートル以下では海水の1/3位の塩分濃度です。このように非常に微妙なバランスでここの塩分濃度がたもたれており、18メートル以上の表面付近では、非常に塩分濃度が薄く、小川原湖は低塩分の汽水湖であると言えます。
 海水がうまく入り淡水と混ざって、いつも同じ濃度で小川原湖が維持されているというのは、やはり高瀬川の河道の管理が重要だと言えます。

 東京で行われた高瀬川に関する河川整備基本方針を決める会議に出席した際、まず感じたことは、高瀬川、小川原湖の環境の豊かさについては、中央の委員会でも非常に重視して

河川整備基本方針小委員会専門委員
光星学院八戸短期大学客員教授


三村三千代
さん
いると言うことでした。さらにもう一つ感じたことは、今の豊かな環境が当たり前だと思ってしまう事の危険性です。それは小川原湖の富栄養化も進んでおり、水質についても考えなければいけないというようなことを、自分のこととして真剣に考えなければいけない時期にあるのだろうと思いました。委員会では、高瀬川と小川原湖だけでなく、周辺の湖沼群一帯を含めて豊かな環境を維持していることを忘れないでもらいたいという指摘がありました。手を加えないで保っておくのではなく、人間の手を加えつつ、人間といい関係を保ちつつ、この豊かな環境を次世代に引き継ぐことが一番求められていると思います。


 県の内水面の約70%を占める小川原湖は漁業資源でもあり、これまで農水産業、畜産業など、地域のために、注いでいる河川や小川原湖は恵みを与えてきました。しかし一方では汚染が進んでいるのも事実です。行政では有用微生物群、通称EM菌を小川原湖の浄化と資源を守る事を目的に、2年半ぐらい前から町単独で活用してきました。その結果、データ上では浄化されていることがわかり、今現在、三沢市、東北町、六ヶ所村の4市町村でこのEM菌による町づくりの協議会をつくって、小川原 湖に直接投入したり、河川・畜産・農業に投入しています。上北町では家庭排水にこのEM菌を活用しており、現在は集落2つをモデル地区とし、活用した農業に取り組んでいます。これを世に出し、本当に自然と資源あるいは農業に生かせる町づくりができればと望んでいます。
主催者代表
高瀬川流域改修促進
期成同盟会会長
上北町長


竹内亮一
さん

 最後に、「それぞれの川の違い、自然の特性などをきちっと踏まえながら川づくりをしていくということが重要であり、この自然豊かな高瀬川、小川原湖のいい環境と仲良くしながら、我々の暮らしも向上させていくと言うことが重要ではないかと思います。」と、佐々木コーディネーターの言葉で、パネルディスカッションは終了しました。




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