大沢しのぶ
昭和49年大館生まれ。

大館鳳鳴高校卒業(45期)後、大館市役所(中央図書館)勤務。その傍ら「大館曲げ
わっぱ太鼓」の「忍組」リーダーとして現在活躍中。

「大館曲げわっぱ太鼓」に最年少(当時10歳)メンバーとして参加。
平成13年に子供チーム「つくし組」を結成。後進の指導にあたりながら、自身も打楽器ユニットに参加し、ソロ(アマチュア)として各地で活動を展開。
現在、大間ジロー(元オフコース:ドラム)氏が率いる打楽器ユニット「天地人」に参加。10月25日に小坂町の康楽館にてライブを行った。
11月3日に能代市で行われた「クボタ民謡お国めぐり」に「天地人」として出演。
和太鼓を始めて約20年のキャリアを持ち、地域のオリジナルに根ざし、うねりと躍動感あふれる新しい和太鼓を目指して活動中。
Act.1
ステージではいつもクリアーな自分でいたい。

佐藤:始めに、大沢さんの和太鼓奏者としての活動についてお話をお聞かせいただきたいと思います。
大沢:普段は曲げわっぱ太鼓のチームでパーティーや結婚式のアトラクション、物産展等のイベントの出演が主になっています。チームと言っても2、3人のユニットや私個人で演奏する事もありますから、その場に応じて演奏スタイルは異なってきます。
ソロ活動としては打楽器と津軽三味線のユニットへ参加させていただいてライブ活動もしています。
佐藤:先月小坂町で行われたライブでは「天・地・人」というユニットで演奏されたようですが、三味線とドラムと太鼓と伺っておりますが、その「天・地・人」について教えていただけますか?素人的な発想ですが、ジャズで言うとセッションみたいな感じなのでしょうか?
大沢:「天・地・人」はドラムス・大間ジロー氏、津軽三味線・黒澤博幸氏、私の3人で構成される打楽器ユニットです。演奏内容をすべて決めてしまうのではなくてフリーの部分も多く、その場のノリで変わることがけっこう多いので、ジャズのセッションに近いですね。アレンジを事前に考えても全然違うパターンで演奏する場合もあります。普段チーム「曲げわっぱ太鼓」でやるのとはまた違った刺激を受ける魅力があります。
佐藤:先日の小坂町のライブでも、普段演奏される時でもかまいませんが、和太鼓を演奏される際に大沢さんが心がけているとか、注意していることなどありますか。
大沢:本番前は「純粋に太鼓を打つ」事だけに集中したいので、自分を清めるというとおかしいですけど、邪念を払うというか、クリアーな自分に戻って太鼓をたたくようにします。
演奏中はお客さんの反応や場の空気を感じて、一緒に演奏するメンバーに気を配ったりしつつ、太鼓をたたく事を楽しむようにしています。
佐藤:実は、大沢さんがアコースティックギターの方と、三味線の方とセッションみたいな感じで演奏されているビデオを見させていただきまして、その時思ったんですが、すごいハツラツとした演奏だったんですけれども(笑)
大沢:そう言って下さるのは嬉しいです。恐い顔してたたいていると見ている方が疲れてしまいますから、疲れてしんどくても「スマイル」を心がけています。

Act.2
太鼓は体力が勝負。

佐藤:
しんどいというと、やっぱり体力的にもけっこう響きますか?普段トレーニングなどはしていらっしゃるんですか?
大沢:相当疲れます。
体力維持とけがの予防のためにもトレーニングは必要ですね。
佐藤:ところで、演奏の時間というのが、曲目によって長かったり短かったりするようですね?
大沢:曲げわっぱ太鼓でも5、6分から10数分の曲まで様々あります。アレンジを入れるとまた時間がかわります。
あとは主催側で、これくらいの時間でお願いしますなど要求されますので、それを考慮したりして曲を選んだりもします。依頼があれば何分でも何時間でも。特別 興味を持たれていない方にも楽しんで頂けるよう心がけてその場で編曲する事もあります。

Act.3
曲げわっぱ太鼓は女性的な「郷土の音」。

佐藤:
ビデオで見させて頂いたんですが、あの時演奏されている普通 の和太鼓と曲げわっぱの太鼓は音がちがいますよね?
大沢:曲げわっぱの太鼓を使用しているのは私達だけなんですが、非常に音がやわらかいんですね。ドーンという力強い音の中に、ポワーンとした優しく、やわらかい響きがあるんです。
全ての太鼓を曲げわっぱでそろえることは金額的に今は無理なんですが、いつかやりたいです。
設会当時は酒樽の上の蓋をとって、そこに革を張って太鼓を作っていたんですが、杉の木は柔らかいので、使っているうちに壊れてしまって今は使っていません。また作って、郷土の音として打ちたいなという夢はありますね。
佐藤:大沢さんにとってお気に入りの音っていうのは?
大沢:ドーン!の一発です。

Act.4
大人に混じって何となく。それが始まりだった。(笑)

佐藤:
それでは、太鼓を始められたきっかけというのを簡単にお話いただけますか?
大沢:今から20年前になりますが、当時市役所の商工観光課長でした田畑準吉氏(現在「大館曲げわっぱ太鼓」会長)が、大館の地場産業の曲げわっぱを使ってなにかできないかと考え、筒状の曲げわっぱの両側に革を張った和太鼓を考案しました。それが「大館曲げわっぱ太鼓」の始まりなのですが、その時にちょうど母親が観光協会に勤めていたこともあって、母親に連れられて始めたというのがきっかけですね。
当時私はまだ10歳でしたので、はじめは大人にまじって練習していました。その後、子どもチームにも参加して、夕方は子供の、夜は大人チームの練習。眠いし(笑)テレビも見たいし(笑)、ぐずって母親を困らせた事はしょっちゅうでした。特別 音楽をやっていたわけではなかったので、「何これ、うるさい」が第一印象でしたね。
ですから、好奇心さえもなかったと思います。(笑)大人って子どもに何かをやらせて「上手、上手」っていう、ほめる?あれでおだてられて調子にのってしまった部分のほうが大きいです(笑)
佐藤:(笑)そうすると、子どもの頃はなんとなくバチを握っていたという感じだったんでしょうか?
太鼓に対する意識が変わった時期というのはいつ頃なんですか?
大沢:社会人になってからだと思います。学生の頃は、「何?」「太鼓?」「カッコ悪〜」とか、言われましたし。自分が好きでやっているはずなのに、そう言われると恥ずかしくなって、友達の前では絶対やりたくないとか思っていました。
最近ようやく、からかわれていた同級生や友人にカッコいいねとか、よく続けてきたね等、声をかけていただけるようになって、やっぱり意義がある事だったんだなと。太鼓を叩く事が地域にこれくらい関わっているんだという意識をもてるようになったのは、やはり社会人になってからですね。

Act.5
太鼓の音の清々しさが心を無にしてくれる

佐藤:
演奏する際に不安に思うことや一番恐いなと思うことはありますか?例えば、田畑会長に聴かれるのが恐いとか・・
大沢:(笑)恐いけど会長の手厳しい指導がないと、これで良いのかなと逆に不安になります。あの指導あっての私たちですから。私は上がり性なので、いろいろな不安はつきませんが、良い意味で開き直るようにしています。それでもまれに観客に自分の太鼓が上手い具合に伝わらない時、そういう空気を太鼓を打ちながら敏感に感じてしまうんです。
自分が楽しければいいじゃないと言う方もいらっしゃるのですが、太鼓をたたいく事を、見てくれる方に何かを感じてほしいという気持ちを持っていますので。その一体感を楽しむということを大切にしたいんですね。
ですから、お客さまが引いているのを感じてしまった時は、打ちながら自分のテンションも「ガーン」と落ちてしまうこともあります。それからまた、じゃあお客さんをどうやって掴んでいこうかなとか考えたり。観客の反応も恐いかもしれませんね。
佐藤:「場の一体感が大切」、そういうふうに感じていらっしゃるわけですね。
そんな大沢さんにとって、太鼓の魅力というのはなんですか?
大沢:ありきたりですけど、ドーンという音ですね。打ち出すまでの一瞬の静けさは至福の時でもあります。
佐藤:太鼓を通して自分に向き合えるという感じなんでしょうか?

大沢:そうですね。純粋な自分に戻れるところも好きですね。
佐藤:では話を変えまして、各地の公演会場での苦労話など教えていただきたいと思うんですが。
大沢:そうですね。太鼓を運搬するため、車での移動が多いですが、最近はリアルタイムな交通 ・天候情報が手に入りますから、だいぶ移動は楽になりました。
野外での演奏は外気温に太鼓の音が影響されちゃうので、雨が降ると音が湿って太鼓本来の音がでなくなるという苦労はありますね。



Act.7
県北を知ってもらいたい。

佐藤:他の場所の方とお話しする機会もあると思いますが、県外の方から見て「大館」っていうのはどういうイメージというか、どんな印象を持たれていると感じました?
大沢:まず大館がどこにあるのかを説明するのが難儀します。大曲市と勘違いされて、あの花火の街ねと言われることが多いです。
大館を説明するときは、「きりたんぽ」・「忠犬ハチ公」、それでだめなら「曲げわっぱ」・「秋田民謡」を言って最後にダメ押しで樹海ドームにB'zとSMAPとモーニング娘。が来たというと、「オーッ」って言われます。
芸能人を出すとインパクトがあるようで、「オーすごいじゃない!」という反響はありますね。(笑)
佐藤:(笑)。そうすると、他県の方の印象は、まず場所が解らない。そこで「きりたんぽがあるよ」、「ハチ公があるよ」という説明をされていますが、大沢さんにとってこれから大館市をPRしていく上でどういう形のものが大館市にとってプラスだと思いますか。
大沢:誰でもわかるようなインパクトのあるものが必要ですね。
メディアの影響もあり、味覚に訴えるもの、というのが一番掴みやすいかなとは思います。
味覚から入って、県北の住み良さとか、地域の人柄とか、そういったものまで伝えられたらいいんですが。力強さに訴えることが多いので、それ以外の部分を出していくことがこれからの課題でもあります。
佐藤:今、味覚という話がでてますけど、やはり大館となるときりたんぽ。(笑)
大沢:きりたんぽは若者には知名度はまだ低いですね。あと隣の比内町の比内地鶏とか。比内地鶏は全国的にも有名になっているので反応は良いですね。
あと味覚ではないのですが、鷹巣町の大太鼓とか。
佐藤:その辺は逆にライバルみたいなかたちにはならないんですか。
大沢:県北全体を知ってもらうために、今やライバル視している時世でもないでしょう。
佐藤:今後の抱負とか活動されていることについてPR等ありましたらお話いただければ。
大沢:自分達の太鼓がもっともっと広がればいいなと思いますし、自分の住んでいる地域を全国に発信して皆さんに興味をもっていただけるところまで繋げていきたいなと思います。
自分の活動が少しでも地域の起爆剤になればいいなと思います。私達の活動で地域の方も自分達も何かしなきゃ、とかよい意味で影響を与えたり受けたりしていきたいですから。

Act.6
道の駅はみんなで盛り上がれる場所。

佐藤:過去の公演先で福井県などいろんなところを廻られてるわけですけど、廻った先で何か、太鼓以外でもいいんですが、おもしろかったエピソードなどはあるんですか?
大沢:時間的に余裕がないので、観光とかはあまりできませんが、行った先々の地元のおもしろいお店を探したりします。結局行けないで終わるんですけど(笑)、地元の情報を見たりとか、実際に道の駅で何かおもしろいものを見つけたときは、チームで盛り上がっています(笑)。
佐藤:道の駅ですと、私どもの管轄になるんですけども(笑)お気に入りの場所なんかはありました?
大沢:最近はどこでも道の駅というと物販に力を入れている所が多いように感じます。
地元ネタで恐縮ですが、大館市にある道の駅矢立峠は、簡単な休憩所とトイレのみ。隣に矢立ハイツがありますけど大げさではなく、周りが森で静かですし、新鮮で私は好きですね。
あと、山形の道の駅あつみ。周りが岩場で海に降りて行けるので。海沿いのところはいいなと思います。
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