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湯田ダムビジョンシンポジュウムが開催されました
「みんなで考える 水と緑と流域の暮らし―湯田ダムビジョン・シンポジウム―」が、平成17 年1 月29 日(土)に、岩手県湯田町にある ゆだ文化創造館 銀河ホールにて開催されました。流域住民や行政関係者など、約200 名の参加のもと、「ビジョンの紹介」や「住民との意見交換」が行われました。また、シンポジウムの中では、参加者の意見をもとに、湯田ダムビジョンのキャッチフレーズを
「和賀川流域−活きる水・育む自然・つながる人」
に決定しました。
当日のプログラム
 各プログラムの概要については以下をクリックしてご覧下さい。
1. 開 会
2. ごあいさつ 湯田町長 細井 洋行
3. 基調講演 『源流の宝を活かす』
東京農業大学 森林総合科学科 教授 宮林 茂幸
4. 湯田ダムビジョンについて−策定委員会からの報告−
湯田ダムビジョン策定委員会 委員長 堺 茂樹
第1分科会長 海田 輝之
第2分科会長 小野寺 聡
第3分科会長 軽石 昇
5. 子どもからの提言
和賀川流域子ども代表
・・・湯田町立川尻小学校/沢内村立沢内第一小学校 5・6年生の皆さん
6. パネルディスカッション・意見交換
『次世代にむけて、わたしたちが、今なすべきこと』
パネリスト 第1分科会長 海田 輝之
第2分科会長 小野寺 聡
第3分科会長 軽石 昇
コーディネータ 委員長 堺 茂樹
オブザーバー 東京農業大学 教授 宮林 茂幸
7. 閉 会
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基調講演 源流の宝を活かす
講師:東京農業大学 森林総合科学科 教授 宮林 茂幸
■自立した“地域内循環”(地産地消)社会の構築を!
【講師:宮林 茂幸 氏 紹介】
●専門:林業経済学、森林政策学、
     森林レクリエーション学
●農山村と都市との交流に関する研究、上下流連携による森林管理に関する研究等の分野で活躍
〜源流地域産業の確立をめざす
 地域づくりは、本物で安全で健康的な「ものづくり」と、流域連携や伝統文化の発展など様々な場を起こす「ことづくり」と、地域の教育力によってこれらを次世代に受け継ぐ「ひとづくり」である。
 手にある資源を活用して、できる範囲でできることをやり、できるものをつくる。本物をつくり、下流域のニーズが生まれることで競争原理が発生し、研究活動が活発化し、地域全体の技術水準が向上する。これが本物の連携であり自立である。

■「連携」と「持続」が流域をつくり財産をつくる
21世紀のキーワード“安全”。安全を守るためには地域社会が持続的に取り組むことが重要であるが、そのためには住民の「連携」が必要。文明社会で失われた「連携」と「持続」の精神が源流地域では数多く残されており、21世紀社会を支えるポイントになっている。
 森林、川、自然・・・ひいては“土地”は流域社会の最大の共通財産であり、皆で守り、皆で活用することが課題。
■責任を果たす 〜 生活、地域社会、そして次世代へ 〜
何を持って地域社会での責任を果たすか?それは“生活”がベースである。安心して生きがい
がもて、将来性がある生活構造を形成しなければならない。
今の生活における責任は、やがて次の世代へ「何を残すか」を問われるものとなる。
次世代の人材を育てるには、将来性のある(将来に不安のない)生活・産業構造の形成が不可
欠であり、農山村の産業振興と流域連携が重要なカギとなる。
地域に子供たちが残る条件、残るような気持ちにさせるということが非常に重要。「ああ、こん
なにうちの農業っておもしろいのか」、「やっていくことにこんなに楽しみが出てくるのか」とい
う子供に対する教育が地域の中でできていなければならない。

■源流域は資源の「宝庫」
 四季が明確な源流域は、冬の雪による“リセット機能”があり、これが山村の文化や日本の自然を守っていく構造を形づくっている。地域資源は自然だけではない。郷土料理でも自信を持って提供すれば国際社会に進出できることもある。恥ずかしがって閉鎖的になるのは間違い。
 以上のように、この地域の様々な資源をピックアップし、商品化し、積極的に提供する。さらに商品の情報を開示することで“地域ブランド”が形成され、関連産業への波及効果も生じる。特に、「だれが、いつ、どのようにしてつくったのか」という信用度は必要。どういう価値が基調講演の様子【講師:宮林 茂幸 氏 紹介】.1975 年、東京農業大学 農学部林学科卒業.専門:林業経済学、森林政策学、森林レクリエーション学.農山村と都市との交流に関する研究、上下流連携による森林管理に関する研究等の分野で活躍あるのか、情報を積極的にPRすれば需要が生まれる。需要は発展し、眠っていた資源を再発掘する動きにつながる。
 源流域は、多様なものの融合により発展する宝が資源として残っている。これをどう活用するかが課題。この際、人間が「自然をこうしよう」と主体的に仕掛けるものではなく、自然から得る、下流域から得る、上流域から得る・・・「から・から」という謙虚な姿勢で社会を形成できれば様々なものごとを認め合える社会になるのではないだろうか。
■源流地域が果たす役割 〜 忘れられた機能の“再生” 〜
 地域の中にはお祭りがあるが都市社会には少ない。“祭り”の機能には、地域における役割分担が決まっている。その機能を継承していく段階で、教育がなされている。これが「地域の教育力」「農業の教育力」である。
 農山村の生活そのものの提供、つまり“農山村ライフ”“源流ライフ”が非常に大きな産業の芽になるのではないか。
 また、「生きる力」をどう養うか。基本的には日常生活の中から教わるが、都市部の子供たちにはその機会が少ない。つまり自然体験に接する機会が少ない。源流域ないしは水源地域、農山村には地域の教育力があり、主体的に身につける能力や宝がある。
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湯田ダムビジョンについて 策定委員会からの報告
◆主な内容
 堺委員長をはじめ、海田第1分科会長、小野寺第2 分科会長、軽石第3 分科会長から湯田ダムビジョン素案の報告が行われました。
 堺委員長からは策定委員会の経緯や基本理念等を紹介され、各分科会長からは、ビジョンの3つの目標に対する取組の視点や実施メニュー案などについて説明がありました。
策定委員会の経緯・活動
策定委員会の経緯・活動
●平成14年11月25日、24名の委員で構成される
 「湯田ダムビジョン策定委員会」を設置
  ・沢内村、湯田町、北上市の住民・市民活動団体の方
  ・行政関係者、関連行政機関
  ・学識経験者
●住民意見の収集
  ・関係者の聞き取り調査 (計6団体)
  ・湯田町、沢内村、北上市の広報誌による意見募集
   (H14年12月)
  ・湯田町、沢内村での座談会の開催 
   (各H15年2月、計2回)
  ・現地調査 (H15年5月、9月、計2回)
  ・アンケート調査による和賀流域住民の意識の把握
   (H16年2月)
策定委員会の経緯・活動
●これまでの委員会の活動内容
 ・住民意見の収集
 ・これまでに委員会を4回、3つの分科会を
  各4回ずつ実施  (計16回)
 ・湯田ダムビジョンの素案が固まる
     ▼ 
 ・ビジョンのこれまでの検討経緯や内容を紹介し、広く意見を聞くため、シンポジウムを実施
ビジョンの検討
●第1・2回委員会、座談会などで議論された課題を整理
      ▼
●ビジョンの検討テーマを3区分とする
 「自然・文化」「地域資源」「参加・連携」
      ▼
●3分科会を設置し検討
 ・第1分科会
 「自然の保全と文化の継承」
 ・第2分科会
 「資源を生かす地域づくり」
 ・第3分科会
 「住民参加と地域連携」
      ▼
●基本方針、実施メニューの策定
基本理念
西和賀地域には豊かな自然があり、
人と自然がうまく調和するための知恵の積み重ねと、
それを育んできた歴史がある。
このような“豊かさ”を今後も享受し、
また地域の多様な発展と魅力ある生活を実現し、
流域全体の健全な水循環系を構築するため、
自然環境を保全し、文化を継承するとともに、
地域が有する独自の自然・歴史・文化的な資源を
生かした地域づくりに取り組むものとし、
湯田ダムを核とする流域圏全体の
新しい価値の創造を目指すものとする。
目標と基本方針
目標1自然の保全と文化の継承 基本方針(1) 西和賀地域の豊かな自然と歴史の中で育まれた独自の文 化を認識・発掘するとともに、これらを次世代に伝え、 自然・文化の維持・保全・再生に取り組む 目標2資源を生かす地域づくり 基本方針(2) 和賀川流域全体で培われてきた「森・川」「雪」「温泉」 「食文化」「湯田ダム・錦秋湖」等の資源を適切に活用 した地域づくりを行う 目標3住民参加と地域連携 基本方針(3) 和賀川・北上川流域の人々が、共に生きる流域民という 自覚のもと、連携交流を通じて自立的な地域活動への参 画を積み重ねる
推進体制の提案
流域住民がビジョンの理念と方針についての共通認識を持ち、積極的な参加と実践に展開していくために、次の方針で取り組む
1.機動力のある体制づくり
2.流域民からの提案と実践(プロジェクトの実施)
3.円滑な運営─推進事務局の設置
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子どもからの提言
 1月27日に「湯田ダムビジョン・シンポジウム−子ども会議」が行われ、湯田町と沢内村の子供たち15人が、「自分たちが大人になったらどんなまちになってほしいか」とか、「自然ってどうなるのだろう、そのためにどんなことができるのだろう」といったことを考え、まとめました。
 シンポジウムでは、会議の結果について、子供たちがこうやりますという「子どもたち宣言」・大人たちに一緒にやってほしい「大人たちへの提言」を、大勢の大人たちの見守る中、自分たちの思いと共に元気よく発表しました。
【子どもたち宣言】
  • 自然を汚さない。
  • 住みやすい環境をつくる。
  • 排水をきれいにする。
  • ポイ捨てをしない。
  • 生き物を大切にする。
  • ごみを見つけたら拾う。
  • リサイクルをする。
  • 宣伝をする。
  • 雪がきれいなので、伝えていく。
  • 自然に対する活動に参加する。

【大人たちへの提言】
  • ダムにたくさんの生き物がいるようにしてほしい。
  • 生き物を大切にしてほしい。
  • 水をきれいにしてほしい。
  • ダムの利益が地元にあるようにしてください。
  • スキー場を安全に使えるように工夫してほしい。
  • ごみを捨てないでほしい。
  • クリーン大作戦、ごみゼロ運動を地域ごとに盛んにしてほしい。
  • いいところを宣伝してほしい。

子どもからの提言(子ども会議の皆さん)

湯田町立 川尻小学校 沢内村立 沢内第一小学校
6年生


5年生
瀬川 匠 / 菅原 輝太
高橋 亜子 / 森 美聡
高橋 葵
菅原 拓哉 / 高橋 結希
金子 美紀
6年生

5年生
盛島 詩織 / 佐々木 喜代
大島 光稀 / 佐々木 翔平
高橋 勇気 / 新階 里穂
蛭坂 彩伽
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パネルディスカッション意見交換「次世代にむけてわたしたちが今なすべきこと」
◆主な内容
 パネルディスカッションでは、コーディネーターの堺委員長の進行で、主に次ぎの観点から行われ、会場の質問などにも答えながら、活発な意見交換がされました。
<主な議題>
・「自然文化、地域づくり、流域連携」の現状と課題
・「子どもたちの提言」について
・流域連携と推進体制について

コーディネーターの堺委員長
「自然文化、地域づくり、流域連携」の現状と課題

 海田第1分科会長は、自然文化の面について、「素晴らしい自然がこの流域にはあります。また昔からの里山など我々の過ごした時代の原風景が残されています。しかし、意外とこの豊かな自然・文化について数多く知られていません。下流域の人々に流域の素晴らしさを体験してもらうことが必要でしょう。そして素晴らしい自然を保全して、次世代にこの文化、自然をいかに伝えていくかが大切です。」と、課題を指摘しました。

 小野寺第2分科会長は、地域づくりについて、「例えば西和賀広域エコミュージアムでは、さまざまな地域の宝を発見し、どうすればその宝を利用し恩恵にあずかれるかという取り組みを進めています。この活動を通じて、自分たちの暮らしの中で、地域の宝を資源として認識できるようになってきました。しかしまだ、埋もれている多くの資源の本当の価値を理解しきれていません。ふだん当たり前だと思っているものへの価値づけ、意味づけをさらに進めていかなければなりません。」と、これからの取り組むべき方向性を述べました。

 軽石第3 分科会長は、流域連携について、「和賀川を自分のもの、川は一本のものだと認識し、湯田ダムビジョンの提案について時間をかけて議論し実践していくことが重要です。川と共に生きるという思想、流域圏、という見地からビジョンを醸成すべきです。一方、行政は市民のエネルギーを確実に受けとめ、市民参画のキャパシティーを持つための勉強をして欲しいですね。かつ流域民である私たちも個々に自立して、行政に頼る考え方を一回忘れたほうがいいですね。」と、行政・市民の連携姿勢について課題を述べました。

 また宮林教授は、全国的に共通した流域連携の問題について、「一般に都市河川では、“自然”は下流域では『守るもの』、上流域では『経済性を持ちながら守るもの』という認識の差があり、流域の連携と持続の面で大きな課題があります。」と指摘しつつ、和賀川流域においては、「上流域である沢内村から下流域の北上市まで70キロと比較的短距離で、かつ森林とのかかわりが北上市も強いため、早期に合意形成できるかも知れません。」と、当該地域におけるプラス要素を挙げました。


「子どもたちの提言」について

 海田第1分科会長からは、「自然に関する意見では、このビジョンの提言が多く包含されており、子どもたちと考え方が共有できていて、非常に嬉しく思います。」との喜びのコメントがありました。
 また、小野寺第2分科会長は、「野生生物にも、人権と同じく生きる権利があることを子どもたちが感じていることを知りました。ふだんの生活の中で生き物とのふれ合いが十分にある地域だからでしょう。」と感想を述べました。

流域連携と推進体制について
 軽石分科会長は、「我々もライフスタイル等を変えなければ。公共サービスをすべて行政がやるものでしょうか。市民と行政の領分を決めずにどんどん踏み込むんです。行政のバリアを崩す民の行動と行政の受ける姿勢が必要ですね。」と、行政と市民の新たな関わりによる流域づくりへの取り組みについて指摘しました。
 また宮林教授は、ビジョンの推進体制について、「完成したビジョンは全員で守らなければなりません。個別考えず、推進協議会のように全員がかかわる組織で、常にフィードバックし確認しながらスキルアップしていく必要があります。」と述べるとともに、ビジョン策定後は、早急に推進体制をつくることが重要だと強調しました。

おわりに
 パネルディスカッションの最後に、コーディネーターの堺委員長が、「我々の役目も一応終わりますが、これは終わりではなく始まりです。実践に移さないと全く意味がありません。大至急推進体制を確立し発足しなければなりません。さらに、推進母体となるプロジェクトチームが立ち上がらないとビジョンは実現しません。これは地域の皆さんからの自立的な企画立案、提案、実施がないと動きません。住民の方が主役なのだという認識を持っていただくことが重要です。」と、まとめとともに、参加者の皆さんにビジョン実現への協力を呼びかけました。
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