|
昭和43年7月22日に指定を受けた栗駒国定公園内に位置する焼石岳は、標高約1548メートルの胆江地区随一の高さを誇る名峰です。胆沢平野から見る焼石連峰は、ゆるやかで優しさを感じさせてくれますが、一歩足を踏み入れれば、そこは人々を寄せ付けない荒々しい原始のままの自然が残る別の姿を見せてくれる山でもあります。
焼石連峰には、上沼、中沼をはじめ大小50あまりの沼地があり、そこから流れる清澄な水は渓谷へと集められ、一気に里まで流れ下ります。中でも尿前渓谷は、深く切れ込んだ谷間の両岸にそびえる石英安山岩の柱状節理が、まるで中国の山水画を思わせるような雄大な景色を醸しだし、水の豊かさとそのパワーのすごさを見せつけています。
|
|
焼石岳への登山シーズンは、山開きが行われる6月第1日曜日から紅葉まつりが行われる10月中旬ころまでで、季節ごとに様々な表情で私たちを楽しませてくれます。焼石連峰山開きは、予約なしで誰でも気軽に参加でき、焼石岳を知り尽くしたベテランの人たちと一緒に登るので、登山経験の少ない方でも安心して登山を楽しむことができます。
早朝、スタート地点のつぶ沼キャンプ場で、シーズンの安全を祈願して神主が祝詞をあげ、登山道入口でのテープカットで登山が始まります。焼石岳への登山ルートは、大きく分けて、中沼コースとつぶ沼コースがあり、中沼コースは距離が短く比較的短時間で登ることができます。一方のつぶ沼コースは、登坂距離が長く途中谷川を渡ったりしますが、ブナの原生林や石沼など風光明媚な景色を楽しむことができるルートです。
|
|
|
山開きの頃の焼石岳には、大きな雪渓が幾つもあり、残雪の白さと新緑のブナ林の緑、そして澄み渡った青空のコントラストが印象的です。しかし、雪渓の上はとても滑りやすく、また登山路は雪解け水でぬかるんでいるところが多く、歩きにくいことは覚悟しなければなりません。登山の鉄則である「決して無理をしない。マイペースを守ること」が大切です。
コースのほぼ中間地点には、避難小屋があり、ここでは銀明水という名水が湧きだしているので、喉を潤しながら登山の疲れを癒す絶好のポイントとなっています。避難小屋を過ぎると、山頂までは高山特有の低灌木地帯となり、雪渓も一段と大きさを増してきます。また、貴重な高山植物が群生する地帯を通過するので、できるだけ登山道を踏み外さないよう注意しながら山頂をめざします。
姥石平まで来ると、いよいよ山頂は目の前です。山頂付近は急な登り坂となりますが、比較的距離が短いので最後の力を振り絞って登ります。山頂からは、胆沢平野をはじめ360度の雄大なパノラマを眺めながら昼食を…。と言いたいところですが、昨年は残念ながら霧と折からの強風のため、皆、早々に帰路につきました。
|
これまでの道のりの苦しさを一気に吹き飛ばしてくれる山頂でのひととき。あいにく昨年は霧に覆われて、山頂からの雄大なパノラマを見ることができなかった。今年の山開き登山では、ぜひとも晴れてほしいものだ。
|
|
|
|
山の天気は常に変わりやすく、また麓では初夏のような暖かさでも、山頂では全く違ったりします。どのような天候にも対処できるような十分な防寒具や雨具などは必ず準備しましょう。それから、夏山と違い、雪渓あり、冷たい水たまりあり、また岩場ありと、足場がめまぐるしく変化します。靴もそれらに対処できるような機能を備えたものを慎重に選択しましょう。
備えあれば憂いなし。しっかりと準備を整えたら、あとは焼石岳の自然をたっぷりと堪能しながら、すばらしいひとときをお過ごしください。
|
|
|
登山行程のほぼ真ん中あたりに銀明水の避難小屋がある。 |
|
収容人数20人の避難小屋内は、きれいで快適。疲れた体を癒すのにちょうどよい。 |
|
金山沢を横切る。雪解け水が流れ込む沢の水は冷たく、思わず身が引き締まる。 |
|
|
青く澄んだ石沼が、新緑のブナ林の合間から見え隠れしている。 |
|
|
雲の隙間から、時々胆沢平野が見える。ここから見ると、胆沢平野が扇状地であるということがはっきりとわかる。 |
|
|
姥石平はなだらかな高原のようになっており、貴重な高山植物が多数見ることができる。くれぐれも草花を摘み取ったり、踏み荒らしたりしないよう注意して観察してほしい。 |
|
|