地味で大変な作業だけど、
郷土の記録は残さなければ…


 考古学や、郷土史研究といったジャンルはとても地味な仕事で、よく人からは「好きでなければやれないよなあ」と言われたりするんですが、確かに私自身「好き」なのは事実です。でも、好きだけでこの仕事が務まるものでもないと思います。このまちの学芸員として給料をもらっている以上、ちゃんと働かなければならないという義務感もありますし、やっぱりやるからには結果を出して「満足感」を得るとともに、それが後世のための貴重な資料として役立ってほしいという欲もあります。
 例えば平成9年度に、「『安永風土記(あんえいふどき)』記載百姓屋敷調べ」という調査結果報告書を作成しました。仙台藩には安永年間(1770年代)にすべての村々から提出された「風土記御用書出」というものがあります。幸いなことに胆沢町の資料はすべて残っていますので、その内容から当時の散居集落の様子を復元しようとしたのがこの報告書です。
 この調査は、胆沢町内に在住している方々に一軒一軒聞き取りをしながら、文献とつきあわせていくという地道な作業を行わなければなりません。その膨大な作業を実施して下さったのが、10名の文化財調査委員会の方々でした。私一人では、とてもこのような詳細な調査はできませんし、そのような地の利も持ち合わせていません。本当に調査委員の方々、そして町民の方々に多大なご協力をいただき感謝しております。
 私は、胆沢町の学芸員としてはまだまだ未熟です。しかし、このような地道な積み重ねがあってこそ、郷土の歴史が次の世代へと受け継がれていくための貴重な資料になるのだと思います。その思いを私の仕事の糧として、これからも頑張っていきたいと考えています。

展示室の企画を考え、展示するのも佐々木さんの大切な仕事です。

シリーズ19
[郷土のことを
もっと調べてみよう]


胆沢町教育委員会
社会教育課文化係
学芸員
佐々木
いく子
さん

衣川村増沢生まれ。増沢ダム建設に伴い、家族で胆沢町に移住。大学では考古学を学ぶ。平成4年、文化創造センターの学芸員となり今日に至る。「皆さんもそうかと思いますが、若かったころの私は、郷土の歴史に興味もありませんでしたし、全くといっていいほど知りませんでした。でも、歳をとるごとに、少しずつ自分の故郷や様々なことに興味を持つようになったんですよね」。



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