1927年、西磐井郡花泉町から野牛(バイソン)の骨の化石が発掘されました。この発見は、約2万年もの太古から岩手県に野牛が生息していたという事実を私たちに教えてくれるものでした。さらに野牛の骨と共にナウマンゾウや、オオツノジカなどの獣骨化石に混じって原始牛(現在の家畜牛の祖先と言われているもので、日本のオーロックスとも呼ばれる)の骨の化石も発掘されました。
一方、藩政時代から昭和の半ば頃にかけて、岩手では馬や牛の飼育が盛んに行われており、主に農耕や荷物運搬の労働力、または肥料生産用として、家族のように大切に扱われてきました。
これらの歴史からもわかるとおり、岩手の地と牛との関係は遙か2万年も前から続いていたのです。言い換えれば、岩手の風土が牛の生息に適した環境だったからこそ、そのような関係が続いてきたということが言えるでしょう。前沢牛の名声は、何も突然に誕生したのではなく、背景にこのような岩手の風土があってこそのものだったのです。 |