主 要 な 意 見 の 概 要

<意見交換>

(発言者)●:委 員
●:事務局
1.経済的妥当性の確認について

東北地方整備局の事業評価監視委員会のときに時折議論になるのだが、人命など深刻な被害に対する効果の扱いについてどこかで示さないと経済的なものではないのかもしれないという話しになる。実際に深刻な被害がこれからどのように軽減されるかということをどこかで説明しておく必要があるのではないか。ここではこういうものが入っていないということを説明することは重要だと常々感じている。

人命をベネフィットとして数えられないから評価しないというのは、防災事業をやる場合には大変都合が悪いと考えている。保険では人命一人いくらぐらいなどの基準はもっているわけで、ストレートにそれを出していいかどうかはわからないが、そういう効果の評価は、これから先必ず必要になってくるかと思う。
 今回は、1.9ということで1を超えているからいいといえばいいが、それ以上の効果もあるということを明確に出すような方向がこれからの公共事業の場合必要ではないかと思っている。

今回は阿武隈川の河川整備トータルの事業評価となっているわけだが、堤防等一つ一つの事業を予算の単位で評価するとどうしても氾濫域の評価などで、ダブルカウントしていたり、この評価でいいのかというような事がよくある。今回の場合は全部パーツを組み合わせた完成品で、トータルでこういう評価ができるということを、事業評価委員会等の場でも大きく言っていく必要があろうかと思う。

効果をカウントする上でハザードをどういうふうに設定したかということが結構大きなポイントになるかと思うが、この資料にはその辺のことが書かれていないので、やはりどういう想定をして効果を出したかというところは明示されたほうがよろしいのではないかと思う。

効果を出すときの浸水区域の設定方法だが、まず150分の1確率の洪水の場合や、50分の1などで浸水区域が違うので、それぞれ確率ごとに氾濫計算をして浸水区域を出している。当然150分の1の確率だと広い範囲が浸水し被害額も大きくなるが、逆によく起きる洪水だと額は少ない。その確率と額をかけたような形で年間の平均期待額を出している。この年間被害軽減の期待額が50年間続くということを仮定して効果を出している。

今回はトータルの整備計画が大体どの程度かという批評なので、この委員会としては大体の値を押さえておくということで済ませたいと思う。大体これくらいのB/Cの事業として阿武隈川河川整備計画を向こう30年程考えていこうということでご理解いただきたい。


2.パブリックコメントの実施結果について

リスクと住民の意向の間に乖離があるような場所もあったと思うが、その辺はどのような状況だったのか。安全なところは人が集まらなかったのか、あまり安全性は高くないのだけれども人が集まらなかったような場所もあったのか、その辺のことをお伺いしたい。

例えば郡山会場は22人と少ない参加人数だったが、郡山は下流に比べてまだまだ整備水準が低く、低い状況にあるにも関わらず今回参加者数が少なかったということで、危険度と参加者数の関係というのは、危険度が高いところほど参加者数が多いという結果にはならなかった。伊達市や二本松市など、狭窄部を抱えているところでは参加者が多かった。危険度と参加者数というのは一概には言えないところであるが、総じて都市部では少なかった。

正確にこの数を分析できてるわけではないが、端的に言うと現在事業を行っている所では非常に参加者数が多かったと感じている。安全・安心の部分もそうだが、この整備計画の中には環境や利水の問題などいろいろなことを含んでいるので、そういった川に対する関心をもっとたくさんの人に持っていただけるようにしなければいけないと、この結果を見て思っている。これをきっかけにもう一度地域の方々に川との関係を考えてもらうようにしていきたい。

いわゆる当事者になっている所は非常に関心が高い。一方、河川環境の方で集まりなどを持つと、本川だけではなくて支川のところで非常に河川環境に興味をもって活躍されている方がたくさんいる。この30年の整備計画というのは本川だけの問題ではなく支川との連携が非常に重要であるという位置づけをもってもう少し宣伝していただき、その上でまたこのような住民の意見を聴く機会があれば、随分参加者も増えると思うのでよろしくお願いしたい。

この整備計画を作る議論の中でも何度か市政府間との関係や県の関係などについてご意見を賜っている。これまでも県等と連携しながら行ってきたが、引き続き、県・市町村とも連携しながら、この阿武隈川流域全体の話として地域の方々と話していきたいと思っている。

福島市の参加者が一番少ない。どうも福島市民というのは、環境に関してあまり関心がないようだ。よく言えば都会的というか、会津地方などとは全然違う雰囲気が福島市にはあるのではないかと思う。私どもももっとPRしないとまずいとは思うが、本気になって環境のことを考えていただきたいと思う。


3.阿武隈川水系河川整備計画「大臣管理区間」(原案)について

全体としてこの整備計画原案は他の河川流域に比べて非常によくできていると思う。法定計画なので目次は大体同じだが、内容は阿武隈川らしいものがきちんと入っていて、例えば101ページの健全な水循環系の構築に向けた調査研究などはあまり他の整備計画にはないわけで、そういうことも含めて、非常にわかりやすく書かれていると全体の評価として思う。
 原案10ページに阿武隈川流域内の人口の推移があるが、阿武隈川の変化は大正頃から始まったかどうかはわからないが、昔の姿を見て今を考えるということがあるので、もう少し古い資料、戦前からの人口の推移を作成していただいているのでぜひそれを入れていただきたい。
 原案122ページで、いわゆる土地利用との関連を入れられたのは非常にいいことだと思うが、その図のタイトルが「災害危険区域の指定について 土地利用一体型水防災事業」とあるが、この水防災事業というのは一般の人には非常にわかりにくい特殊な用語である。ここも主旨を表すようなタイトル、例えば「土地利用規制とそれに対応した治水対策の例」など素直なタイトルにすれば、ここで取り上げた主旨がわかりやすく伝わると思う。

原案122ページ本文中に地方自治体という言葉が出てくる。大学の研究者は地方自治体という言葉を平気で使うが、国の方で地方自治体という言葉でよろしいのか。下の図では、地方公共団体になっている。ここは何か使い分けをしているというふうに理解をしてよろしいか。

特に意識して使い分けているわけではない。どちらかに統一したほうがいいと思うのでそのようにさせていただく。

パブリックコメントの中で30年計画といわず早く実施してくれという注文があったりする。計画というのはその期間内に何の事業を実施するかというのが日本の場合はすごく多く、それを早めにやってくれというのが至極当然の要求になってしまい、ある意味では偏った側面が強調されるようになってしまうが、河川や都市計画というのは、50年続くような内容もあるし、極端に言うと100年も引きずる、永劫に引きずる、これを節目をつけて計画を作るという内容もたくさんある。そういう計画というのは、節目の中で何を地域の人達や地方自治体が展開し、未来永劫に向かって取組んでいくという要素もあるので、獲得目標だとか事業の実現だけを主張しているのではないという計画の側面があるということも理解していただく工夫が必要。

原案をどうするかではなく、原案をどうやって利用する人に知らせていくかということが、結構大事な宿題だろうと思う。

全体的に非常によくまとまってきているのではないかと思う。ただ水質の点で考えてみると、原案53ページの環境基準の類型指定のようにBODで考えるのは20世紀だったと思うが、やはり、窒素、リンがもたらす一次生産があり、一次生産というのは有機物を作るということに関連してくる。有機物ができるということは、結局BODを高めるということにも関わってくる。そういった面で、ここでの環境基準の類型指定状況はこのような形で出さざるを得ないと思う。一方、窒素、リンは今後重要な課題である。例えば原案57ページにT-N、T-Pの平均値が出ている。これは単に濃度ばかりではなく、流量を加味した負荷量で出すことを検討いただきたい。源流そのものが持っている負荷量に対し、いかに下流の方で窒素、リンの負荷量が高くなっているかということがわかってくると思う。

原案58ページの図3−27ダム湖水質の経年変化グラフについて、COD、BOD、大腸菌群数これも大事だと思うが、七ヶ宿ダム、三春ダムもそうだが、湖沼については富栄養化現象が問題となることから窒素、リンも水質項目としてぜひ入れておいていただきたい。

この原案から附図がついているが、附図の利用の位置づけとそれを引用した場合の見方を教えていただきたい。 
 この附図がつくと、地先の問題になってくるので、全体の整備の問題と地先の問題が合体しているというところで、ある程度整理の仕方というのを考えておかないと、おそらくこれが30年のバイブルになってくるというと、ここの地先の家のところにはこういう問題が入っていないじゃないかというところに必ず話が発展するので整理をうまくしていただきたいと思う。

附図について、河川整備計画で必ず合本し、作成することになっており、附図の位置づけについては、30年で実施する具体的整備内容ということで、自分のところではどういう整備が行われるか理解しやすいように、ある程度縮尺の大きい図面を用いて作成している。
 附図の位置づけについては、注釈をつけ、本文との関係がわかるように修正したい。

資料-5共通6に出てくる、節目節目での情報の交換をお願いしたいという意見はその通りで、節目節目にこういう、パブリックコメントの機会は持ったほうがいいと思うが、最終的に工事段階になると、工事業者と住民とのコミュニケーションになってくると思うが、仕様書の段階で要求することは可能なのか。可能であればやった方がいいと思うが。

一般的に工事に入るときは地元で説明会を開く。実際に工事が始まった中でいろいろな地先からの要望が施工業者に出る場合もあるが、業者も当然ながらお答えしながら実施していくという形になる。その声が非常に大きな話であればまた説明会のような形で開くこともあるかと思う。コミュニケーションを契約上つけるというのは、一般的には行っていないが、当然そのようなことは行っていただかなければということで指導はしている。

漁業関係者との連携が外来魚の記述のところで出てくるが、環境教育のところにも関係してくると思うが、実は阿武隈川漁協というのはおそらく全国の内水面の組合で見ても非常に活発な活動をしていると思う。漁業協同組合の役割、漁業協同組合という単語自体、これには出てこないが、十分考えられた上で出さなかったということはあるかもしれないが、阿武隈川の組合というのは、全国でも自慢できる組合だと思うので、環境の教育や外来種の対策の項で具体的な名前や活動等を出してもよろしいのではないか。

原案68ページの表の中にイベント一覧の中に阿武隈川塾という活動を掲載しており、主催として阿武隈川漁業協同組合を記載している。

原案63ページで阿武隈川の注目すべき種というところの選定の視点の依存度ということだが、カジカというのは依存度が高いという意味では非常に繊細な魚で綺麗な水でないと生きていけないという意味だと思うが、その一方で、鳥類、カワウというのも出ていて、この依存度というのがどういう意味なのか理解できない。
 その他、この表の中の種名でシラウオを記載しているが、ハゼ科のシロウオが河川の淡水域まで依存している種類ではないか。出典がわかればこちらも確認しようがあるが、引用文献がないので確認のしようがない。

原案68ページ 地域との連携に関係する部分、113ページ環境教育の支援、河川愛護の啓発ということで考えると、川のひとつの理想像というのは泳げる川ではないかと思う。そういった面で、ここで泳いでもいいよという川の部分を少しずつ広めていくというような方向で検討いただきたいと思う。

整備計画はこれまで実施してきたような様々な手続きの段階を踏んで策定しているということを、読む際に理解できるよう、参考的な記述があった方が良い。

地域の住民から、数多くの意見が出されているが、素案に含まれるということで、新たに反映する意見が1つもないというのはどうか。特に資料5の治水−11の意見は非常に良い意見であり、何らかの反映はした方が良い。


4.その他

整備計画ができたのは出発点で、これからこの整備計画に基づいて順次実施していくわけだが、その後のフォローアップのようなものはこの整備計画のような委員会を設けて行うのか。

資料の参考2委員会の役割の中で示すとおり、整備計画策定後も5年毎の事後評価や整備計画の見直し等の際はこの整備委員会を開催しご意見をいただくことになる

こういう形で、整備委員会が計画策定後も続くというのは非常に全国的には珍しい例だという理解が必要。計画を作ってそれがその後も続いていくというのは、この整備委員会の構成が、両市長等地元の代表の方が入っていただいているということもあると思うが、本来は、同時に全ての階層から出るというのがいいと思っている。両市長は地域代表であるが、関係する県の代表が抜けている。両県知事あるいは両県の代表が入るというような構成が今後、この委員会を続けていくにはいいと思うので、県と連携するという意味も含めてぜひ検討いただきたい。

国土交通省 東北地方整備局 福島河川国道事務所
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