●遊水地の新規整備について、減反政策で水田は作るなという時代だが、水田地帯が上流のほうにあるので、大きな面積を農地として利用しながら遊水地にすればあまり費用をかけないでできるのではないか。
●遊水地については、浜尾遊水地のように将来掘削して容量を確保するため、土地そのものを買収するタイプと、岩手県の北上川で施工中の一関遊水地(1450ha,国内でも1,2番の遊水地)のように遊水地内でも圃場整備を実施して農地として永続的に活用するタイプがある。岩手県の一関遊水地は、遊水地としての権限を永久に残すために地役権というものを設定して、買収の概ね3分の1から4分の1ぐらいの価格での地役権補償を行っている。
遊水地は公共性の高い土地になるため、河川管理者として補償を行うのが前提になってくるが、ケースバイケースである。
遊水地の新規整備地域での補償についてどうするかは、まだ検討は行っていないが、土地利用を行いながら遊水地にするということも含め、整備計画が策定され、遊水地を位置づけてから多角的に広い範囲で遊水地の計画を進めていくことにしたい。
●遊水地であれば、地役権設定し農地として残していただきたい。
今、米そのものは実際余っているが、米だけではなくてきちっと農地として持続できれば良いと思う。自給率が40%で60%の食料輸入をしており、さらに60%の輸入している食糧の裏側にはそれを生産するための水の問題も強く指摘されてきている。
一関遊水地も地役権設定され、宮城県の迫川水系にある蕪栗沼遊水地も地役権設定されて農地として利用されており、新規遊水地も地役権補償をお願いしたい。
12ページに金額約500億円という事業費が出ているが、この場合には、遊水地を土地利用しながら補償するというお金で見込んでいるのか、それとも買収する形でこの予算を見込んでいるのか、教えていただきたい。
●必要事業の500億は、河道掘削もしくは遊水地の組み合わせに限定した額であり、このほか堤防整備や堤防強化等の費用が全川としてかかるので、それを除いた額である。
この500億の算定にあたっては、遊水地については、将来の河川整備基本方針の流量に対応するため、遊水地の拡張を想定しており、この資料では掘削により容量を拡大することを仮想して条件設定しているため、買収した場合の事業費になっている。
地域の皆さんとの話し合いの中で土地利用を永続的にしていく必要があれば、土地利用を前提とした遊水地の選択もあるし、それはこれからの検討課題だが、この資料では、将来時点での掘削を想定し、買収を前提にした試算を行っている。
●地役権を設定して面積を広大にするほうがコストは高くつくということか。
●遊水地の面積が倍になると、周囲の堤防の延長が大きくなり整備費がかかるということである。買収して掘削するというやり方と、どちらがコスト的にいいかという経済的な検討になる。
ただ、これは地域との話し合いをよくしていくことが前提となっているので、農業という営農の場を尊重することが優先されれば、まさにそういうところに重点を置いた計画作りが必要だろうと考えている。
買収して遊水地を小さくするか、買収せず地役権設定をして遊水地を大きくとり、土地利用してもらうか、という2通りの道筋から検討していく事になる。あとは地域との話し合いの中で、具体化していくことになると認識している。
●浜尾遊水地の場合、貯水量を確保するために掘削するという説明があったが、掘削後の遊水地内の土地利用はどのように考えているのか。(鈴木委員)
●浜尾遊水地の利用の仕方を今後どうするかということは、検討会を何度か開いて私どもも参加させていただき話し合ってきた。
その結果として、水門を開けておくと湿原になるのではないか、例えばヨシ野原などになるのではないかということでそのようにした。そうすることによって、浜尾遊水地は様々な生物が住める環境となり、さらに、環境教育の場にも利用できたらよいのではないかという意見が出され、最後話し合いが終わったように記憶している。
●整備計画では、新設の遊水地もさることながら、浜尾遊水地を拡張したいと考えている。今180万m3の容量に加えて50万m3確保するが、これを確保するためには掘削しなければならない。
排水門に近いところを深く掘り、そこをビオトープ化して維持する等、使い方を含めて今、地域の皆様方と浜尾遊水地の管理について事務所で検討していると聞いている。できれば、自然と調和できるような整備をしていきたい。
ちなみに、鶴見川遊水地は、ワールドカップの会場が遊水地の中にある。まさに都市部の遊水地はそのような一体型の活用をしているし、風光明媚な自然環境が良いところでは環境との調和を図った遊水地にしている。
これは地元の皆様方のアイディアや意向もあるので、十分お聞きしながら、同じ掘削でも工夫して掘削することを考えている。
●何十年に1回浸かるかもしれない可能性があるとか、そういう事も含めて水田がいいのかその他の農地として使うのがいいのか、その辺りの知見はあるのか。
●流域特性と河道特性と氾濫特性の3点から遊水地を決めていくので、先に土地利用の方法を決定してから遊水地化するという検討のプロセスはもっていない。
ただし、人家が沢山あるところに遊水地を作るという非現実的なことは、最初から排除しており、そういう意味では畑地か農地で整備を行うことで限定されてくるのではないかと考えている。
●阿武隈川については、まだ十分な精度で調査が進んでいるダムの計画はないので、この整備計画では入れていないが、仮に、大きな災害が生じて緊急的な対策を実施することになった時には、この整備委員会をもう一度開催して、整備計画の内容を変えることもある。
例えば、昭和61年の規模を越える洪水がこの先起こった場合、そのレベルに引き上げるかどうかの議論も含めて、この委員会の場をお借りし作っていくことになる。
30年間この計画を固定していくということではなく、今の時点で考えた計画を今説明させていただいており、その中で有力な治水対策が遊水地であるということを説明させていただいている。
●上流の安全度が非常に低いという説明があったが、低いところを優先的に整備していくことが大事だと思う。遊水地がその中で一番効果があるという説明だが、目標としている昭和61年洪水がどのくらいの再現期間をもっているのか、そしてピークを下げるために遊水地を使うとしたらどのくらいの頻度で遊水地に水を入れることになるのか。
間隔があいていると、普段農地としてかなり有効に使えるという答えも出てくるし、2年に1度くらいであるとなかなか農地としては難しい。
その辺の関連が頭に入っていなかったので、説明いただきたい。
●昭和61年の洪水は、福島で概ね60年に1度程度の生起確率なので、60年に1度は当然この遊水地は浸かる。ただし、郡山や須賀川の流下能力は福島より低いので、もっと早い段階で水を入れないと安全度を確保できない。
したがって、福島を目標としないで、もっと上流の厳しいところを基準に運用していくのが遊水地を造る上でよいのではないかと考えている。
一般的に遊水地は10年から15年くらいに1度の頻度で水が入って、計画規模で最大効果を発現するように計画されるが、阿武隈川でも同様の議論をしたいと考えている。
●上流の候補になっている地域の現状での冠水頻度に関する資料をいただければ、今までの話がもう少しはっきりすると思うので、資料を提供していただけるとありがたい。(虫明先生)
●資料は次回提示します。
●治水の資料の12ページについて、遊水地と河道掘削の組み合わせがいいと思うが、ただ、第2案の河道掘削による対応について、「河道掘削では上下流の安全度の格差が拡大」と書いてあるが、河道掘削も上 下流のバランスをとりながら実施できないのか。
また、遊水地というのはダムのような効果というが、ダムよりもその直下流には効果がはっきり効く。ダムの場合ダム流域に降った雨に対しての効果しか期待できない。
●この表現は変えさせていただく。
上下流の安全度の格差を拡大しないように掘削しようとすれば時間がかかるということである。
本来、掘削は上下流の安全度のバランスを取りながら掘削するというのが原則であり、そのためには下流部の安全度を確保して次に中流部の安全度の確保と段階を踏んでいくと40年ぐらいかかってしまうということである。
●下流で穴があいているところをわかって上流を掘削はできない。
少なくともここの表現としては上下流の安全度の格差が増大するというのはきわめて誤解となりますので修正します。
●狭窄部の掘削は考えてないのか?
●狭窄部での掘削は考えていない。
●どれだけ貯留するかという事を3ケースぐらい検討しているということであるが、これについて、次回もう少し具体的に説明していただきたい。
●最初に上中下流域での今の流下能力のアンバランスを基本高水の分母として表現しているが、それを昭和61年洪水の流量規模で書くと同時に、整備計画実施後にどういうバランスになるかということも堤示していただければわかりやすくなると思う。
●いただいた意見について整理して再度ご説明するので、次回ご意見をいただきたい。
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