主 要 な 意 見 の 概 要

<意見交換>

(発言者)●:委 員
●:事務局
1.河川整備計画全般に関する事項について

本委員会は直轄区間について議論する場であるが、水系でみた場合、県管理区間等の支川が背景として非常に重要であるが、この県管理区間や市管理区間を含めた水系全体については、本委員会ではどう扱うのか。
 県管理区間や市管理区間等上流の河川整備との整合性についての基本的な考え方を、整備計画に記述しなければならないのではないか。

本整備計画の範囲は直轄区間として整理している。
方針に添った形で各々の河川管理者が各々の区間について整備計画を策定する。多くの河川で直轄と指定区間を分けて委員会を開催しているが、合同で実施している水系もある。
阿武隈川は大河川であるため、まず骨格となる直轄区間の方向性を明らかにした上で、引き続き福島県・宮城県において自らの区間について、直轄区間の整備計画と整合が図られた整備計画を作る。
 国の整備計画を策定する段階で、指定区間との整備計画の整合、進捗調整等十分調整を図りながら実施するということを書き込んで行くことも可能ではないかと思う。
それについては検討させていただき、策定の段階でまたご説明させていただきたい。


2.治水の目標に関する事項について

基本方針の計画高水流量の確率規模は150分の1だが、150分の1を目標にした整備は、とても30年間ではできないとしたことは、非常に現実的な選択だろうと認識している。
  しかし、昭和61年洪水の実績洪水が対象ということだが、60分の1以上の洪水は当然起こりうるわけで、そのあたりの見通しを説明してもらいたい。

国が管理している河川では、100年に一度から150年に一度、利根川でも200分の1であり、概ね河川の流域の大きさや、そこに存在する国家としての影響度合を考えながらの安全度を考慮している。
 昭和61年8月洪水を目標にしたいと考えているのは、昭和33年からの流量統計を記載しているが、その中で一番大きいということと、昭和61年8月洪水がきわめて大きな被害をもたらしたという事実があることによる。
 その洪水の再度災害防止をまだ実施していない部分があって、実際に起こった洪水の対応がまだできていないということを考えれば、この昭和61年8月洪水に対してきちんと対応しておくことが最初に必要ではないかと考えたということである。決して、昭和61年8月洪水規模まで整備すれば大丈夫だということではない。

昭和61年8月洪水への対応・対策を計画して、平成の大改修等をやって福島は安全になったけれども、それより下流では前より多少状況が悪くなっている。
 いわゆる上下流の関係をきちんと説明しなければ、上流でこれから堤防整備します、掘削しますというのはなかなか通りにくいのではないか。

昭和61年8月洪水で実際に抜本的な改修を実施したのは、広瀬川合流点の区間にほぼ限定されている。あとの区間については、あまりにも大きな災害であったため、災害復旧のレベルでしか整備しておらず、改良工事はほとんどできなかった。
 その後、平成10年洪水が発生し、その時は、国家としてこの河川は2回目だから、全川にわたって3年間ぐらいの集中投資をした結果、平成14年洪水では、概ね浸水被害を免れたという経緯である。
 そういう意味で、平成10年洪水対応規模まで実施済みであるが、昭和61年洪水規模を次のステップの目標に掲げなおすということで、昭和61年洪水規模を当面の目標にさせていただきたい。

基本として、福島と岩沼で治水の目標流量を決定することは良いと思うが、昭和61年洪水の雨の降り方と平成10年洪水,平成14年洪水では、雨の降り方がだいぶ違う。
 阿武隈川のような大きな流域では雨の降り方の違いを考慮した整備計画にしなくても良いのか。

河川整備基本方針は、全水系の中の将来国として確保すべき責任を示したもので、実際に起こった水準の洪水よりも大きな水準を一般的には採用して、いわゆる確率評価をしている。
 今回の整備計画は、段階施工のプログラムを示すということに近く、その到達点の内挿をどこにするかということである。
 治水の目標流量は、全川を通してこれまでの洪水を概ね内挿しているということを見据えた上で、昭和61年8月洪水を採用している。

本川や流域全体の被害を最小化するということが重要で、本川の整備計画でも主張するし、支川でも「とてもこれは流せないからここは溢れさせる」ということが考えられるので、きちんと合意した上で方向性としては、むしろ上流や支川の流量規模を本川よりも低いものにして、土地利用規制をかけるというようなことを期待している。

 昭和61年の氾濫戻し流量を治水の目標流量とすることでよろしいですか。(澤本委員長)

 昭和61年洪水を超える洪水になった時のことも想定しながら、この30年間での整備内容を示すというのは非常にわかりやすい説明になるのではないか。

 昭和61年洪水というのは、降雨特性からみても標準的な形と思われ、妥当である。


3.治水対策目標流量に対する具体的方策について

遊水地の新規整備について、減反政策で水田は作るなという時代だが、水田地帯が上流のほうにあるので、大きな面積を農地として利用しながら遊水地にすればあまり費用をかけないでできるのではないか。

遊水地については、浜尾遊水地のように将来掘削して容量を確保するため、土地そのものを買収するタイプと、岩手県の北上川で施工中の一関遊水地(1450ha,国内でも1,2番の遊水地)のように遊水地内でも圃場整備を実施して農地として永続的に活用するタイプがある。岩手県の一関遊水地は、遊水地としての権限を永久に残すために地役権というものを設定して、買収の概ね3分の1から4分の1ぐらいの価格での地役権補償を行っている。
  遊水地は公共性の高い土地になるため、河川管理者として補償を行うのが前提になってくるが、ケースバイケースである。
 遊水地の新規整備地域での補償についてどうするかは、まだ検討は行っていないが、土地利用を行いながら遊水地にするということも含め、整備計画が策定され、遊水地を位置づけてから多角的に広い範囲で遊水地の計画を進めていくことにしたい。

遊水地であれば、地役権設定し農地として残していただきたい。
 今、米そのものは実際余っているが、米だけではなくてきちっと農地として持続できれば良いと思う。自給率が40%で60%の食料輸入をしており、さらに60%の輸入している食糧の裏側にはそれを生産するための水の問題も強く指摘されてきている。
 一関遊水地も地役権設定され、宮城県の迫川水系にある蕪栗沼遊水地も地役権設定されて農地として利用されており、新規遊水地も地役権補償をお願いしたい。
 12ページに金額約500億円という事業費が出ているが、この場合には、遊水地を土地利用しながら補償するというお金で見込んでいるのか、それとも買収する形でこの予算を見込んでいるのか、教えていただきたい。

必要事業の500億は、河道掘削もしくは遊水地の組み合わせに限定した額であり、このほか堤防整備や堤防強化等の費用が全川としてかかるので、それを除いた額である。 
 この500億の算定にあたっては、遊水地については、将来の河川整備基本方針の流量に対応するため、遊水地の拡張を想定しており、この資料では掘削により容量を拡大することを仮想して条件設定しているため、買収した場合の事業費になっている。
 地域の皆さんとの話し合いの中で土地利用を永続的にしていく必要があれば、土地利用を前提とした遊水地の選択もあるし、それはこれからの検討課題だが、この資料では、将来時点での掘削を想定し、買収を前提にした試算を行っている。

地役権を設定して面積を広大にするほうがコストは高くつくということか。

遊水地の面積が倍になると、周囲の堤防の延長が大きくなり整備費がかかるということである。買収して掘削するというやり方と、どちらがコスト的にいいかという経済的な検討になる。
 ただ、これは地域との話し合いをよくしていくことが前提となっているので、農業という営農の場を尊重することが優先されれば、まさにそういうところに重点を置いた計画作りが必要だろうと考えている。
 買収して遊水地を小さくするか、買収せず地役権設定をして遊水地を大きくとり、土地利用してもらうか、という2通りの道筋から検討していく事になる。あとは地域との話し合いの中で、具体化していくことになると認識している。

浜尾遊水地の場合、貯水量を確保するために掘削するという説明があったが、掘削後の遊水地内の土地利用はどのように考えているのか。(鈴木委員)

浜尾遊水地の利用の仕方を今後どうするかということは、検討会を何度か開いて私どもも参加させていただき話し合ってきた。
 その結果として、水門を開けておくと湿原になるのではないか、例えばヨシ野原などになるのではないかということでそのようにした。そうすることによって、浜尾遊水地は様々な生物が住める環境となり、さらに、環境教育の場にも利用できたらよいのではないかという意見が出され、最後話し合いが終わったように記憶している。

整備計画では、新設の遊水地もさることながら、浜尾遊水地を拡張したいと考えている。今180万m3の容量に加えて50万m3確保するが、これを確保するためには掘削しなければならない。
 排水門に近いところを深く掘り、そこをビオトープ化して維持する等、使い方を含めて今、地域の皆様方と浜尾遊水地の管理について事務所で検討していると聞いている。できれば、自然と調和できるような整備をしていきたい。
 ちなみに、鶴見川遊水地は、ワールドカップの会場が遊水地の中にある。まさに都市部の遊水地はそのような一体型の活用をしているし、風光明媚な自然環境が良いところでは環境との調和を図った遊水地にしている。
 これは地元の皆様方のアイディアや意向もあるので、十分お聞きしながら、同じ掘削でも工夫して掘削することを考えている。

何十年に1回浸かるかもしれない可能性があるとか、そういう事も含めて水田がいいのかその他の農地として使うのがいいのか、その辺りの知見はあるのか。

流域特性と河道特性と氾濫特性の3点から遊水地を決めていくので、先に土地利用の方法を決定してから遊水地化するという検討のプロセスはもっていない。
 ただし、人家が沢山あるところに遊水地を作るという非現実的なことは、最初から排除しており、そういう意味では畑地か農地で整備を行うことで限定されてくるのではないかと考えている。

阿武隈川については、まだ十分な精度で調査が進んでいるダムの計画はないので、この整備計画では入れていないが、仮に、大きな災害が生じて緊急的な対策を実施することになった時には、この整備委員会をもう一度開催して、整備計画の内容を変えることもある。
 例えば、昭和61年の規模を越える洪水がこの先起こった場合、そのレベルに引き上げるかどうかの議論も含めて、この委員会の場をお借りし作っていくことになる。
 30年間この計画を固定していくということではなく、今の時点で考えた計画を今説明させていただいており、その中で有力な治水対策が遊水地であるということを説明させていただいている。

上流の安全度が非常に低いという説明があったが、低いところを優先的に整備していくことが大事だと思う。遊水地がその中で一番効果があるという説明だが、目標としている昭和61年洪水がどのくらいの再現期間をもっているのか、そしてピークを下げるために遊水地を使うとしたらどのくらいの頻度で遊水地に水を入れることになるのか。
 間隔があいていると、普段農地としてかなり有効に使えるという答えも出てくるし、2年に1度くらいであるとなかなか農地としては難しい。
 その辺の関連が頭に入っていなかったので、説明いただきたい。

昭和61年の洪水は、福島で概ね60年に1度程度の生起確率なので、60年に1度は当然この遊水地は浸かる。ただし、郡山や須賀川の流下能力は福島より低いので、もっと早い段階で水を入れないと安全度を確保できない。
 したがって、福島を目標としないで、もっと上流の厳しいところを基準に運用していくのが遊水地を造る上でよいのではないかと考えている。
 一般的に遊水地は10年から15年くらいに1度の頻度で水が入って、計画規模で最大効果を発現するように計画されるが、阿武隈川でも同様の議論をしたいと考えている。

上流の候補になっている地域の現状での冠水頻度に関する資料をいただければ、今までの話がもう少しはっきりすると思うので、資料を提供していただけるとありがたい。(虫明先生)

資料は次回提示します。

治水の資料の12ページについて、遊水地と河道掘削の組み合わせがいいと思うが、ただ、第2案の河道掘削による対応について、「河道掘削では上下流の安全度の格差が拡大」と書いてあるが、河道掘削も上 下流のバランスをとりながら実施できないのか。
また、遊水地というのはダムのような効果というが、ダムよりもその直下流には効果がはっきり効く。ダムの場合ダム流域に降った雨に対しての効果しか期待できない。

この表現は変えさせていただく。
 上下流の安全度の格差を拡大しないように掘削しようとすれば時間がかかるということである。
本来、掘削は上下流の安全度のバランスを取りながら掘削するというのが原則であり、そのためには下流部の安全度を確保して次に中流部の安全度の確保と段階を踏んでいくと40年ぐらいかかってしまうということである。

下流で穴があいているところをわかって上流を掘削はできない。
 少なくともここの表現としては上下流の安全度の格差が増大するというのはきわめて誤解となりますので修正します。

狭窄部の掘削は考えてないのか?

狭窄部での掘削は考えていない。

どれだけ貯留するかという事を3ケースぐらい検討しているということであるが、これについて、次回もう少し具体的に説明していただきたい。

最初に上中下流域での今の流下能力のアンバランスを基本高水の分母として表現しているが、それを昭和61年洪水の流量規模で書くと同時に、整備計画実施後にどういうバランスになるかということも堤示していただければわかりやすくなると思う。  

いただいた意見について整理して再度ご説明するので、次回ご意見をいただきたい。


4.治水対策と土地利用について

昨今の気象状態を見ていると、集中的な豪雨が増えてくるということが考えられる。
内水被害の軽減について、30年間の長期を考えるとますます河川区域周辺への資産の集中が予想され、適正な土地利用への誘導、土地利用規制というものを含めた総合的な内水対策は、国と地方が連携して早急に取り組むべき問題だと強く感じる。
 そこに対する見通しというか、見解の方向を聞かせていただきたい。

内水被害については、阿武隈川は近年顕在化してきている。
平成10年までは、至るところ堤防がなかったため内水は見えなかった。しかし、堤防ができるとともに内水という問題が発生している。
 東北地方整備局の整備計画で、ここまで積極的に内水を記述しようとしているのは阿武隈川が最初である。
 人の命に関わるような外水に対しては、いわゆる氾濫確率100分の1という目標をもって整備しているが、内水に対しては概ね10分の1くらいが相場であり、そうなると、排水ポンプ場ができたからといって安心ではなく、被害が軽減されるという段階である。そういう意味では、しっかりした土地利用を自治体で戦略的に進めていただかないといたちごっことなる。
土地利用規制も含めて内水対策を積極的に対応されるところを優先的に内水被害のダメージを少なくしていこうという議論をしているところであり、平成17年度の新規事業の内水対策については、このような趣旨の内水被害軽減対策計画を市町村と一緒に作っていこうという取り組み等を実施している最中である。

内水氾濫についてはかなり強く懸念しており、土地の利用規制というのはわかってはいてもなかなかできない。県の様々な会議でもそういう話をしているが、それができないというのはどの辺に問題があるのか、どうすればそれが具体的に動き出すのかということを教えていただきたい。

国土が狭く沖積平野と氾濫地形に都市がある中で、治水対策は実施したが、もともと危険度が高いので土地利用を制限するところまでは今までの政策は及ばなかった。
 最近は、少子高齢化の時代に入り、今までのような開発は相当減っていることから、危ないところは危ないと表記し、放置できない箇所は所定の安全度を確保する対策を実施するが、その上で氾濫解析の結果ここまで浸水するということをはっきり言おうとしている。
 河川管理者だけでは限界があり、地域とよく話し合いをしながら水害に強い街づくりに向けてソフト、ハードの整備を行う。
 水害は、河川事業だけでは恐らくなくならないと思うので、このことは整備計画の根底にも十分認識しておきたい。問題意識を持って議論はしていくが解決策はまだという状態である。

土地利用規制に関して二本松の例について、紹介していただきたい。

二本松は狭窄部上流に位置するところで、家屋が川沿いに点在しており、なかなか治水対策を集約するのが難しいことと、狭窄部は水位が急上昇してしまうので水理特性が複雑でなかなか治水対策を決定できず、昭和61年、平成10年、平成14年の各洪水時にはほとんど何も対策ができなかった。
 丸森や二本松の問題というのは極めて重要だと認識している。
 それは、上流の治水対策の負荷がかかる可能性があることから、現在、連続堤で計画している箇所を一部輪中堤化して、農用地については氾濫域の中にとどめる方法を実施している。あわせて守れないところは災害危険区域を設定し、家を造るのであれば所定の高さ以上に作るようにしていただくこととしている。
 地域によっては連続した堤防で防御すべきだという意見も当然あるが、治水対策のスピード感が出ないということであれば、土地利用を制限しつつも、命に直結する住家については優先的に守る手法を取り入れ、そのかわり守れない土地に関しては災害危険区域等地方自治体の制限行為をかけていただくという調整を二本松市と行いながら実施している。

公共下水道の区域が広がるからといって、全部公共下水道に直結するという考え方でいいのかどうか。それが直接河川に負担を増やすことになるので、そういう考え方についても今後河川サイドと都市計画、土地利用の関係部局との情報交換、協議が必要ではないか。この整備計画の中でも、今後の課題あるいは取り組み方の方向として提起をしていただけるとありがたい。

河川整備計画は河川法の範囲内であるため、例えば下水道の水質の関係など違う法律体系に基づく事業は書けない。
  ただし、例えば関係機関と協力して流域内の貯留効果をもたせるとか、そういう土地利用を促進していく、関係機関と協力するということを書くことは当然可能である。それ以上になると整備計画の範囲を超えるので、整備計画にはそのような精神をきちんと入れておき、それを踏まえて関連公共事業との具体的な調整を図っていくということになろうかと思う。

都市関係と河川整備の接合性によくご非難をいただくことがあるが、実務的には近年は地域とよく話をしながら、この整備計画に対する意見をいただきながら作るというような行政の進め方をしているため、仮に都市計画決定がされていなくても都市機能と不整合の起こるような河川整備は相当少なくなっているのではないかと思っている。
 今後もそういう意味での努力はしていきたいと思っている。


5.堤防の質的整備について

弱い堤防が結構あるということで、これを整備していくということが書かれているが、早急に全部整備することはできないわけで、その弱い区間がかなり長期間残ってしまうという状況もあると思う。そうしたときに28ページのように、堤防の信頼性を積極的に公表し、住民がどのくらい堤防に信頼をおいていいかということについて、情報提供をしていくということは大切と思われる。

直轄区間の堤防は概ね1万1千キロあり、平成15年度から本格的に詳細点検を行っており、平成21年度までの5年間で全区間実施するということを国土交通省として推進している。東北地方整備局についても、あと数年間で全ての調査結果が出る。毎年度の調査結果はすでに公表している。
 対策には時間がかかるため、その堤防の評価をした時点でわかったものから順に公表していくようにしており、水防団にもその情報を提供させていただき、実際の水防活動に活かしていただく。計算結果も全て公表するということで対応している。
  逆に地域から出水時における堤防の状況を情報提供いただき、評価技術を上げなければいけないと考えている。


6.正常流量について

舘矢間の40m3/sについては、既設ダムの運用を行えば特にこれから整備計画で整備しなくても解決すると言う事か。

舘矢間40m3/s は方針レベルである。
したがって、40m3/s で我々はこれからも管理する。
40m3/s を下回った場合、渇水調整をしなければならないと考えているが、40m3/s を整備計画段階で全て確保する事は、摺上川ダムができて平成18年度の運用が始まったので、かなりの安全度を持って確保できる。

舘矢間では上流の三春ダム、摺上川ダムの補給があるという事だが、三春ダムよりもさらに上流になると自然水だけになるので、正常流量は、基準点は舘矢間でよいと思うが、監視点なり注目点は何点かおくべきであり、そこの考えを教えていただきたい。管理目標としてある程度検討しておくと、流域全体にわたってより効果がでる。

正常流量について舘矢間40m3/sと説明したのは、縦断的に見て水文資料が整っていることからで、舘矢間を代表地点として決めている。
 補給するダムが途中の三春ダムと摺上川ダムのため、その上流についての補給ダムは現在のところなく、上流部分においては正常流量を特に設定していないが、舘矢間40m3/s を決定した時の検討数値はある。
 上流部分においては、10分の1の安全度は確保できていないということになるが、舘矢間地点で現在のところは管理しているということである。

舘矢間だけを検討対象地点にして40m3/s としたわけではなく、全川チェックした。
舘矢間を管理しなければならないことから、舘矢間に数字を与えた。
中間河道も含めて、取水と支川上流等のバランスをみながら、河川として必要な流量を検討した。
ただ、最上流については補給ダムがないので、自流の中でうまく納まっている時期を除けば、補給を受ける地域より若干安全度が低いということである。

猪苗代湖は膨大なポテンシャルを持っているが、安積疏水と郡山市上水にしか使われていない。水理秩序を変えるのは大変だろうが、異常渇水時には安積疏水の水を都市用水に使ったこともあったらしいので、阿武隈川と猪苗代湖とは決して無縁ではないと考えることは重要。整備計画とは直接関係ないかもしれないが、低水流量引いては正常流量等を検討する上で猪苗代湖流域が占めるウェイトが大きいという認識はもっておいたほうがいい。

利水・環境に関する目標の12ページに健全な水循環系の構築という形で最後に水の流域管理へ展開されるというふうに書いているが、猪苗代湖からの安積疎水や阿賀野川水系の羽鳥ダムから阿武隈流域へ導水している部分があり、細かい数字はいいと思うが、そのような支川の状況については、水循環系の構築というところで触れておく必要があるのではないか。


7.河川環境について

適切な樹木管理を行うとある。平成の大改修の時もお願いしたが、水辺林の重要さが特に最近クローズアップされており、なるべく樹木を残すような工事をしていただければ大変ありがたい。

表土の中には様々な樹木の種が入っており植生の早期回復にも有効であるため、工事実施時には表土の保全、再利用に努めてほしい。

樹木の伐採管理というのは、我々としても非常に重要な管理だと認識している。
流下阻害を起こす部分を長期で放置すると、実は樹木が阻害するのではなく周辺に土砂がたまって河積そのものを縮小してしまう。
 そういう意味で樹木の管理をしっかり行わないといけない。
 ただ、周辺環境や生態系の影響等もあるので、実際に施工する際は、その地域の専門家のご指導をいただきながら、現場で管理伐採を行っているところである。
 表土の活用については、現在、各工事現場で実施しており、使い方についても地域の専門家の意見を聞いて実施している場合もある。

河道掘削の方法で、アユの産卵場所を避けると書かれているが、逆にアユの産卵場所となる可能性のあるものを増やすことも可能か。
それから、掘削した土石はどういう処理がされているのか。

アユの産卵床を地域の漁業関係者の皆さんと共同で研究して河床材料を入れ替えたりする例は少なくない。
 管内ではあまりないが、北陸の阿賀野川あたりでは実施したと思うし、東北でも河床材料の入れ替えは実施した。そのような取り組みは、各工事現場で少しではあるが実施している。
 基本的には、今ある物を残せるように頑張っている。残せないときは代償として考えるというやりかたになると思う。
 土砂に関しては、基本的に堤防に利用する例が多い。
堤防も全ての断面ができているわけではなく、やせた堤防もあるため、そういうところを優先的に土砂を利用するが、使い道がない場合には処分するということになる。
 ただ、その処分にはお金がかかる事なので、用地確保が可能であれば防災ステーションとして堤防に腹付けを行い、そこに防災資材を置いたり、町の水防倉庫を置くなどできるだけ土は捨てずに有効に使っている。
 最後は地域の方に供給する。たとえば、住宅造成とか圃場整備の時に土を必要とするのでそちらへ運ぶなど無駄のないような使い方をしている。

海岸の土砂が供給不足で侵食が進んでいるという現象が起こっているので、できるだけ土砂を海まで流せるような仕組みを作っていただけるとトータルとして管理できると思う。なかなか難しい問題であるが、是非ご検討いただきたい。

阿武隈川の下流では、昭和48年頃から砂利採取を実施してきたが、平成17年度をもって禁止となった。
 ただ、上流の信夫ダム等では採取しているようだ。
 三春ダムでは、流砂系の保全という事でダムの下流にダムに堆積した土砂を置き、洪水時に還元するということを試験的に実施している。

平成の大改修の直後に福島県庁の向かいの河川敷で生態系保全のために小さなサンクチュアリを実験的に造った事がある。
 しかし、その後すぐに平成10年の洪水で水位が増えた時に流されてしまい、サンクチュアリを造るのは大変かなという話になった時期があった。
 このような取り組みは、これからもありうるのか。

今も県庁の前である程度自然景観としては残しているが、先ほどの遊水地でもサンクチュアリが再現できるかということを考えながら、精神として書くのか、具体的に書くのか、これから議論しながら検討していきたいというふうに考えている。


8.水質の改善について

水質改善についてここに書かれている事は、とにかく水質状況を把握しよう、対策のために地域住民や関係機関と連携をして取り組みますとうたっているが、具体的な打つべき手について、あとでもう少し具体的に書かれるのか。このレベルの内容なのか。   

水質改善の具体的な話では、モニタリングをしながら連携して行っている。
今、整備計画で具体的に書き込めるものとして、現在想定しているものはないものの、水循環の話も含めながら勉強して書き込める物については書き込んでいく。

もう少し具体的に言うと、水質改善で河川サイドでできることはあるのか?

水質については、入ってきた流水の処理については河川浄化事業になるが、これは流域の中における最後の対策になり、実際は、河川に入る前に対策してほしい。河川に入ってきた水を処理するというのは最終手段で、河川の場合は流量が多いことなどから処理しきれない。
 流域社会が河川の状況を見てゴミを捨てない、汚水を流さない、必要な施設整備を行うというような意思を確認し、実施する場を作るということは極めて重要である。
 ただ、お金のかかる話でもあるため、その場で議論して決まったら即座に実行というわけにはいかない。各分野毎に計画を達成するための活動をするということで、そういう意味では時間をかけながら実施しようと思っている。
 河川だけで処理するというのは非常に難しいということである。

BODはよくなっているが、改善されているというような印象が強いのは問題があると思う。BODが良くなっていても濁りが気になる。
 そこを書いていないので、濁りについて書くことと、おそらく福島市の水道局の経年データなどがあると思うので、そのデータが阿武隈川の汚さとどう関係しているかという資料をつけていただきたい。

12ページの水循環の展開というのがこの計画の中でどの程度文言で盛り込まれるのか。
 考えてみると川をきれいにするとか自然の川の状態を保つというのは、やはり水の流域管理の積極的な展開というものが非常に重要であると考える。
 奇しくもこの中に書いてあるのは、やはり水質の悪化、通常の水量が少ないというのが一番の根本なので、水を川に戻すという仕組みを積極的に地域と連携を図って展開すると書くのか、流域管理の展開と書くのか、これは川からものを発信するという意味では方向性が変わってくるだろうと思う。この辺の記述についてお伺いしたい。

12ページはまだ概念中の概念であるが、流域管理という言葉が妥当かどうかは別として、流域として取り組んでいくという姿勢は、基本方針レベルの話であると思う。
治水で言えば150分の1の最高の目標点である。
 従って、段階計画や整備計画もこういう取り組みもしていくのだということはやはり入れ、福島県も今、県知事が先頭になり水循環系の様々な議論がされており、そういうものと連携していくという意味で整備計画では1つ階段が登れるくらいの内容は書く方向である。

BODについて、阿武隈川ではC類型はなくなったのではないか?
もしC類型がなくなったのあればこれは削除したほうがよい。

水質改善というのは本当に大変なことなので、県民全体で気を配っていくべき問題ではないかと思う。


9.人と河川との豊かなふれあいの場の確保について

人と河川とのふれあいの状況についてたくさん事例を示しているが、阿武隈川について、具体的に河川愛護団体やNPO団体などがどの程度あるのか。

次回に資料としてお持ちしたい。

阿武隈川流域・地域の人たちが河川やダムに関わった様々な取り組み事例がある。例えば摺上川ダムの水源地域ビジョン策定等を契機にして、地域の人たちとダム周辺の地域づくり協議会等が活発に活動している。これも水源地あるいは河川の関わりで非常に重要だと思う。
 それから、荒川の整備計画を作った時に、川づくり協議会ができ、地域の住民と連携しながら進めているが、発足当時、荒川全体がエコミュージアムになるのではないかと提言したことがある。それには市も協力し、水林公園にあった元喫茶店を資料館に提供してくれたということがあった。そういう活動をできるだけ増やす、材料にしていくという部分を整備計画の中で詰めていってはどうか。

荒川のように地域の方と一緒になって学習の場として使うようなお話だが、これはまさに荒川はふるさとの川という形で、むしろ地元の方が主体になって様々な活動をしていただいているという状況にある。
 そういうところも紹介しながら、環境を維持できるような書き方についても勉強していきたいと思っている。

以上

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