(2)コンパクトシティ論いろいろ

 コンパクトシティの考え方は、90年代初め頃よりヨーロッパを中心とする欧米諸国で、自動車利用による環境問題や都市空洞化の解決策の一つとして注目を浴びています。しかし、その定義や効果、実現性についてはさまざまな論説があり、まだ一本化には至っていない状況です。
 ここでは、さまざまなコンパクトシティ論の中からいくつかを取り上げて紹介していきます。

欧米におけるコンパクトシティの考え方(「コンパクトシティ 持続可能な社会の都市像を求めて」海道 清信著 )
神戸市復興・活性化推進懇話会が考えるコンパクトシティ(「持続可能な都市づくり・地域発意のまちづくり『コンパクトシティ』構想調査報告書」神戸市復興・活性化推進懇話会)


○ 欧米におけるコンパクトシティの考え方(海道清信「コンパクトシティ 持続可能な社会の都市像を求めて」より)

1. コンパクトシティの9つの原則
 コンパクトシティの原則は提案者によってさまざまであるが、欧米で考えられている基本的な特性を整理すると、次ぎの9点があげられる。その中心的な命題は、密度の高さ、多様さ、ヒューマンスケール、独自性である。

2. コンパクトシティによる効果
 コンパクトシティが実現することによる効果を、グラスゴーのストラットクライド大学のフレイ享受の『都市をデザインするーより持続可能な都市形態を目指して』その他の論文を参考にまとめると、以下のようになる。

3. コンパクトシティを実現するための都市、地域政策
 英国、オランダ、ドイツ、アメリカなどの事例、その他の論文も参考にして、都市や地域をコンパクトにする方法として提案、実施されているものをまとめると、次のような手法である。

■詳しくは、海道清信著「コンパクトシティー 持続可能な社会の都市像を求めて」(学芸出版社)をご覧下さい。


○ 神戸市復興・活性化推進懇話会が考えるコンパクトシティ(「持続可能な都市づくり・地域発意のまちづくり『コンパクトシティ』構想調査報告書」神戸市復興・活性化推進懇話会)

 「コンパクトシティ」は、自律した生活圏の交流・連携によって構成されている。その生活圏の単位を「コンパクトタウン」と呼ぶ。

● 「コンパクトタウン」とは
 わが“まち“意識を育てる地域のまとまりの中で、住民の日常生活がある程度可能となるような自律性を持たせ、住民は自らのまちのあり方を発想し、地域の自然や歴史、文化などの個性を大切にしたまちづくりを自ら、実践していくことによって、安全で安心して快適に暮らすことのできる生活圏を築いていくものである。

このような定義のもとで、「コンパクトタウン」の具体的内容は次の通りである。
@ 身近な生活の場において、日常の生活の大半の用が足せる。
A 住民自身がその地域の自然や歴史、文化などの多様な魅力を発掘し、いわゆる「わがまち」という意識を持ち、また地域に愛着を感じる。
B 地域が抱えるさまざまな問題の解決に向けて、地域の持つ魅力や資源を活かして、住民が主体的にまちづくり活動に参加する。

上記のような要素を兼ね備えた「コンパクトタウン」づくりにおいて、以下のような基本的視点を持つ。

(1) それぞれの地域の自然、歴史、文化、景観などを大切にするまちづくりを進める[個性豊かなまちづくり]
(2) 環境との共生を目指した身近なまちづくりを進める[環境と共生するまちづくり]
(3) コミュニティを大切にする協働によるまちづくりを進める[コミュニティを大切にするまちづくり]
(4) 地域に密着した経済を育むまちづくりを進める[地域経済が豊かなまちづくり]

 こうした、環境=コミュニティ=地域経済を通じて、その「コンパクトタウン」固有の価値(自然、歴史、文化、環境など)を高める取り組みが「コンパクトタウン」づくりであり、それらが多重にネットワーク化しているのが「コンパクトシティ」である。