第6回コンパクトシティ研究会 事例紹介1

青森市が進めるコンパクトシティについて
青森市都市整備部 脇坂 隆一 部長

■中心市街地活性化の効果と課題
 今後の取り組みについてお話ししたいと思います。このように、上手くいっているところがある一方で、やはり問題も抱えています。それは、中心市街地の商店街全体が盛り上がっている訳ではないということです。具体的には、駅前のアウガなど集客性のあるエリアについては回復基調ですが、そこから離れたエリアでは減少傾向が続いています。特に、駅前から1キロ近い距離に松木屋という大正時代からの百貨店がありました。これが平成15年に閉店しました。大規模な商業施設がなくなると、ぱたっと客足が途絶えてしまい、それがなかなか戻っていない状況です。現在ここでは、マンション業者が温泉付きマンションを建設中ですが、マンションができたとしても、交通量という点ではやはり限界があるのではないかと思います。青森の中では、こちらの賑わいを確保するべきではないかという声がある一方で、選択と集中で投資効果が出てくるのだからこれはやむを得ないではないかという、二つの議論があります。

 次に人口ですが、当然マンションができて人が増えているので、平成7年辺りを境に人口は中心市街地では増加傾向です。この増加傾向はマンションの建設がまだ続いていますので、当分続くものと考えております。現時点では昭和60年クラスに戻っているというような状況で、もう少し伸ばしていきたいというのが市の考えです。

■郊外部の開発の抑制(保全)
 ここまでが中心市街地の活性化ですが、次に郊外部の保全についても少しお話します。これが青森自動車道ですが、このラインが区画整理等で開発をおこなっているミッドエリアと、アウターエリアの境です。また、現時点で保留人口フレームをゼロにしておりますので、今後、線引き編入は予定されていない状況です。

■郊外開発の抑制(新幹線開業対策)
 次に、3年後には新幹線が青森に来る予定ですが、それも中心市街地ではないところに新幹線駅が来ます。従って、中心市街地にマイナスの影響が出ないよう、逆に中心市街地に人を呼び込むような戦略を打ち出すことが課題となっています。今、国の補助をいただいて新幹線新駅周辺の区画整備事業を180億円ほどかけて進めております。その中で、商業地の保留地を売る際には、3千m2の建物規制をかけて売るということを考えています。つまり、ここには大規模なオフィスビルや、商業施設が絶対に建築できないような規制をかけるということで進めています。

■まちづくり三法改正への青森市の対応
 このような形でまちづくりをこれまで進めてきおり、まちづくり三法についてもこの一年、相当な対応をしています。5月に都市計画法の改正、6月に中心市街地活性化法の改正がなされて、施行の方は中心市街地活性化法が8月、都市計画法はまだ一部施行されておりませんが、準工業地域の特別用途地区の指定を10月1日に行っています。また、今回の都市計画法の改正で準都市計画区域の指定については県決定になりますが、改正都法施行前に、駆け込みのような形で、市で準都市計画区域の決定を行っています。特別用途地区の指定に合わせて大規模集客施設立地規制条例も制定しています。

 一方、中心市街地活性化法の対応では、検討委員会などを立ち上げて基本計画の策定作業を進め、12月22日に内閣府に申請しております。また、商工会議所による中心市街地活性化協議会も11月に設置し、約半年間で中心市街地活性化基本計画の認定に向けたハードルは全部越えているというような状況です。

■コンパクトシティを推進する都市計画
 これが準工業地域の特別用途地区です。この規制内容は今年の11月から施行される1万m2規制とほぼ同様な内容で、青森市の準工業地域802haにおいて、1万m2を越える大規模集客施設の建築を規制するというものです。これを8月30日の審議会にかけて10月1日に施行するという相当早いスピードで行っています。これが結果的に全国初だったということです。それで、市の説明としては、とりあえず1万m2については国の言う通り規制しておき、この規制を外す場合については提案制度などで審査を行う、という整理をしたところです。

 次に、準都市計画区域についてですが、都市計画区域外の県道沿いで温泉開発が行われていたため、準都市計画区域と用途地域を指定し、さらに条例で300m2以上は開発許可の対象とすることで一定の開発制限をかけました。

■都市計画提案制度
 先程のストーリーでいくと、準工業地域の今後の開発については全部提案制度によるものということで、市では制度を定めて運用しております。都市計画も事前相談をして提案を受けて、もし変更するのであれば市で責任を持って説明会を開催し、案を縦覧して審議会にかける。変更しない場合はそのまま審議会にかけて、それで承認に至るという制度です。

 既に、新聞等でご存知かと思いますが、かねさという地元のみそ工場の跡地に32,000m2の大規模な集客施設の計画があり、昨年の4月頃には売買契約が結ばれていました。それで、さあ建てようという時に、市が開発を規制する条例を制定してしまったということで、それでは提案制度で議論していくこととなった訳です。

 その提案の内容ですが、最終的に工場移転に伴い準工業地域を準住居地域にするというような提案です。準工業から準住居というのは一般的には規制強化ですから、他への波及がない、また準住居については、法律上、今年の11月までは大規模集客施設の立地が可能ですので、それで何とかしようというような計画です。そして関係ない建物については地区計画で規制することとし、準工業地域を外すから連動して特別用途地区を外してくれというような提案でした。この提案について内部や県、国とも検討しましたが、結果としてはこの提案は受けられないと判断しました。というのは、まずまちづくりの方針に適合していないことです。というのは、「居住エリア」として位置づけるという提案ですが、ここを準住居にするということ自体はいいにしても、1万m2の規制を外す積極的な理由にはならないということです。ですから1万m2を外す積極的な理由がない以上、方針には即していないのではないかということです。それから致命的なこととしては、交通渋滞に対する計画が全く不十分で、200メートルの渋滞予測に対しての滞留長が100メートルしかないなど、計画そのものに問題がありました。また、地元には、都市計画変更の内容しか説明せずに、どんな施設が建つかはまだ決まってない、という説明でした。それがいつ分かるかは、市が都市計画変更するから、その際に話すというような説明で、変更することが前提のような仕事ぶりでした。まさに説明責任を市に押しつけるような対応でしたので、この提案は市として認める訳にはいかないという判断を通知しました。当然、色々反発があり、マスコミや地元町内会などを利用した反発がありました。特にマスコミの使い方がひどくて、内閣府に公開質問状を出してそれを全部マスコミにばらまくとか、とんでもない対応をしてニュースになったのは皆様ご存知の通りです。市としては1月25日に開催した都市計画審議会で提案の内容、市の考え方を説明して、さらには業者側の反論も全部説明して議論をおこない、最終的に全会一致で市の判断が妥当だということで正式に却下されました。

 ただその中で問題になったのは、提案制度の一種の欠点といえるかと思いますが、都市計画の提案を受ける前には、業者が住民に対して説明会を開催します。それを受けて市が判断することとなりますが、それはあくまでも内部判断です。都市計画の変更をしない場合には住民に説明をする機会がありません。しかし、住民からみれば、業者側の説明会はあったけれども何かよく分からない形で市が却下したようだと、市の方に苦情などがきました。業者やコンサルの方も、住民に対して集会所をつくってあげますなどと都市計画変更の際の飴を出したりして相当もめました。つまり、制度的に、都市計画の変更が行われない限りは住民説明の機会がないため、その結果、住民はこの都市計画の変更に対してきちんと関われたのかというようなところが議論になりました。ただ、判断自体は妥当だということで、市長に正式に答申され、開発業者さんの方に通知したということです。この時に、市の決定を不服として、その決定以前の特別用途地区の指定がおかしいのではないかということで提訴の動きがあるというのは新聞報道の通りです。

■コンパクトシティを推進する新中心市街地活性化基本計画
 中心市街地活性化基本計画の策定にあたっては、これまで内閣府の中心市街地活性化本部と議論を重ねてきましたが、一番難しかったのが評価指標です。今回の中心市街地活性化基本計画は、プロジェクトの成果をきちんと数字で示し、その目標の達成具合を5年後に判断するので、歩行者通行量、観光施設年間入込客数、夜間人口、空き地・空き店舗率、小売年間商品販売額等の目標値の設定とその根拠、さらにはその根拠と事業との関係というところに時間がかかりました。これらの目標は全て、中心市街地活性化基本計画の目標をそのまま指標化したもので、青森市と富山市の目標値の考え方が、今後認定される基本計画の一つのモデルになるのではないかと考えています。

 中心市街地活性化基本計画で取り組むことについてお話いたします。青森の街なかは観光資源が大変少なく、弱いところです。青森で勝てる観光資源は、「ねぶた」があるので、ねぶたの常設展示ができる文化観光交流施設をウォーターフロントに整備して、観光振興を図っていこうというのが一つの大きな事業です。これを「ふるさとミュージアム」と言っており、県の「アスパム」、また「八甲田丸」という青函連絡船のミュージアムと合わせて、ミュージアムゾーンを結成するのが大きな柱です。

またもう一つ、郵政公社で「ぱるるプラザホール」というのを整備しましたが、それが郵政民営化で去年の10月31日に廃止されました。それを郵政公社との交渉の末、10億円で市が買収することになりました。今回の中心市街地活性化基本計画にも位置づけ、まちづくり交付金のほぼ全額を充当するようなことで、今年度事業で全部買い取ることになりました。したがいまして中心市街地活性化基本計画の認定を受ければまちづくり交付金の方も活用でき、青森市が汗を流した効果がこういう形で出ています。

 またハードのみならずソフト事業としては、AOMORI春フェスティバルがあります。これはゴールデンウィークのよさこいとねぶたのコラボ事業です。また、まちなか散策コースは、今は寺山修司や太宰治などが暮らしたことを偲べるようにしていこうというものです。またレンタサイクル、女子大生によるまちなかサポーター、こういったようなことを位置づけて推進しています。

 また、住宅政策ですが、中心市街地への住宅の供給に関しては、基本的には市場にまかせていく考えです。これから市では、住み替え支援事業をやろうとしています。全国的に住宅戸数が余っている状況の中、中心市街地に住み替えた際の郊外の住宅ストックが意外と活用されていません。売却したり、息子が住んだりできればいいですが、そのままにしているという例が結構あります。従って、そういった良好なストックはできるだけ中古住宅市場を発達させて使っていくということが望ましいですが、全然発達していません。

 そこで、郊外の優良な住宅の空き家などについては、市で個別に借り上げて公営住宅にしていこうと考えています。その公営住宅は、例えば3人以上子供がいる家庭などという形に限定し、子育て支援というようなことも視野に入れています。青森市の借り上げ公営住宅等を呼び水として、中古住宅の情報などが流れるようにし、中古住宅市場をつくっていき、世代間の住み替えを支援していこうというような事業で、中心市街地活性化基本計画に位置づけて取り組みます。これは、平成17年〜18年の2カ年かけて弘前大学北原先生の研究室と共同で調査した結果を政策化したものです。

 説明は以上です。あとは色々ご質問がありましたらお答えしていきたいと思っております。

 

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