「新しい公共」取組み事例

友好都市の元気いっぱい農山村コミュニティづくりモデル事業

団体名

特定非営利活動法人 まち研究工房
 

ホームページ

http://www.machi-ken-kou.net/

所属/ 担当者名

代表理事 金田 好明
 

連絡先

電話 048-445-9038
FAX 048-445-8734
E-maile info@machi-ken-kou.net
E-maile kim@machi-ken-kou.net

活動地域

福島県白河市の主に表郷(おもてごう)地区
 (および白河市と友好都市の埼玉県戸田市内の一部)
 

 

活動地域の概要

【市町村合併と友好都市】
・対象地域である表郷地区(旧表郷村)がある白河市は、福島県南部のほぼ中央に位置し、栃木県那須町に隣接。現在の本市は、平成18年に旧白河市と旧表郷村・旧大信村・旧東村の3つの村が合併し、新市として誕生した。
・また、本市の友好都市の戸田市との交流は行政同士だけでなく、市民活動等を通して農産物の紹介や祭りへの参加など親睦が年々深まっている。しかし、双方が連携した民間ベースの具体的活動は構想段階に留まっている。
【少子高齢化の状況】
・白河市の人口は、平成21年3月現在約65,360人であるが、人口減少・高齢化率が集落地域を中心に進んでおり、既に高齢化率は20%を越え、今後、総人口・生産年齢人口の減少と高齢化がより一層進むことが予測されている。
・表郷地区(旧表郷村)は本市の中でも高齢化が進んでいる地域であり、地区面積の多くを占める山林や農地の適正な維持が難しくなっているとともに集落コミュニティの活力が低下しており、限界集落も顕在化している。

白河市の位置

JR新白河駅構内にある白川郡の間伐材の利用を促している 看板と製品例(県南地方の人工林の6割が間伐を必要としている)

表郷地区の遊休農地の状況

【自然資源・農林業】
・阿武隈山系の自然資源・環境に恵まれている一方、山林の適正な維持と林業の負担軽減のために間伐材の利用促進が図られているが(写真参照)、その需要拡大が白河市の大きな課題のひとつである。
・その中で、白河市の市民団体が表郷地区に在る営林署・森林管理事務所と連携し、国有林や民有林の間伐材を利用促進に関わっているなど、市民レベルの森林保全・木材を活用したまちづくりの動きがある。
・農産物は比較的多品種であり、農業産出額は9,540百万円(2004年)であるが、農業労働力は低下傾向にある。
・しかし、本対象地域は、高齢者の元気づくりやコミュニティの維持に不可欠な農林業関係者の結束力とともに、間伐材や遊休地等の有効活用しながら都市部(友好都市等)の市民ニーズに応えられるポテンシャルを有している。

活動地域の課題

・耕作放棄が増える一方で営農の意欲のある高齢者は少なくない。また、間伐材の利用が課題である一方で、都市部では今後増える高齢者のための休憩所が必要であるなどを踏まえつつ木材のニーズを掘り起していく必要がある。
・こうしたことから、間伐材の様々な利用促進に向けた都市部での需要喚起や、遊休農地の再利用による都市住民が求める新鮮で多彩な野菜を提供する取り組みが、農山村の元気なコミュニティを創生するカギであるといえる。
・しかし、市内の限られた財政・民間活力による対策の実施は容易でないため、外部との連携・協働事業の推進方策として、友好都市のNPOのノウハウや市民パワーを活用し、新たな概念・形態のコミュニティ創生が必要である。

活動の内容

平成21年度
(1)友好都市で活動するNPOの木材活用事業による、山村集落コミュニティの元気再生事業
@ 間伐材の利用実態、林業関係者・友好都市住民等へのヒアリング、アンケート調査の実施
A 都市住民に好まれ利用される木製品についてのワークショップ、デザイン研究・開発
B @Aの結果を踏まえた間伐材利用の需要喚起の可能性の検討、及び以下の木造・木製品の試作.
(2)白河市内の「戸田市民共同農園」(約450坪)の試験的開設・野菜栽培およびレシピの研究開発・試験販売
@ 遊休農地を活用した仮称「戸田市民共同農園」の試験的開設.
A 地元農家(高齢者等)の参加による戸田市民への野菜の栽培、及び戸田市内の街角でのPR・提供.
B 野菜の提供を受ける戸田市民の登録会員(モニター)制の試験的実施(戸田市の地域通貨を併用).
C 農産物を使ったレシピの研究開発・試験販売(白河市と戸田市の市民による合同ワークショップにて検討).

活動の成果

平成21年度
・NPO・市民団体や農林関係者および一般の市民が当該活動に参加・協力したことにより、交流が深まるとともに連携相手が増え、また、間伐材や野菜の新たな販路や販売方法の開拓の可能性を見出すことができたといえる。
・現在、白河市関係者の意向とログハウスメーカー・建築士の協力により、間伐材を利用するログハウスキット材を白河市の地場産品として自前で一貫して製材加工できるか検討に入っている。
・また、そのログハウスキットによる野菜保管を兼ねた休憩小屋(ラウベ)を白河市内の「戸田市共同市民農園」の敷地に設置できるか検討中である。一方、戸田市側での取り組みとして、地元の木工職人の協力により、白河の間伐材を使用したベンチ(オリジナルの仕様による小型ベンチ5脚)を試作し市内で実用化することになっている。
・戸田市民のための共同農園を表郷地区に開設し、地元農家により季節の野菜が栽培され、双方の市民やNPOの手により戸田市に定期的に運搬するとともに、戸田市内の様々な店舗等が参加している「おやすみ処ネットワーク」を活かし、街角で白河の新鮮野菜を市民等にPR・提供することで野菜のマーケット拡大の新たな可能性を把握できた。

戸田市有志の間伐体験と、大企業も参加した間伐材利用の
合同ワークショップの様子

戸田市内のJR高架下の「おやすみ処」での
街角朝市の様子

おやすみ処ネットワークに参加している店舗での朝市に来場した
白河・戸田の両市民

居酒屋の開店前の時間を利用しての
野菜レシピの研究発表

レシピは事前に試作したものを含め
20品以上考案された.

今後の課題及び展望

課題
(1)森林保全・間伐材の有効活用に向けた課題
@ 友好都市双方の林業関係者・地権者・事業者・NPO等が連携した効率的な生産・加工・流通体制づくり
A 間伐材の品質確保と魅力のある製品の開発、および都市部での多様な間伐材マーケットの開拓 (2)耕作放棄の予防・放棄地の再生、限界集落の解消に向けた課題
@ 耕作放棄地の管理体制の充実、魅力ある新規就農環境の創出と若手人材の確保、改正農地法等法制度への対応
A農産物の効率的な流通・販売方法の検討(コストダウン化)と体制づくりと、既存の野菜販売業者との共存共栄
(3)活動の発展的継続のための課題
@ NPOと行政・市民団体・企業等の連携強化(企業のCSRの促進)による事業の体制づくり
A 利益のある社会貢献事業(ソーシャルビジネス)としての間伐材利用および野菜普及事業の採算性の検討

展望(活動の展開可能性)
(1)間伐材の有効活用事業の展開
@ 地域材活用木造住宅振興事業等の法制度を活用した展開
地域材による展示住宅を都市部に整備する場合等に助成を行う事業者向け補助事業等を導入するとともに、山 村と都市部の友好関係を活かすことにより、地域連携による間伐材の有効活用事業を展開できる可能性がある。
A 改正道路法の制度(道路占用の特例、道路外利便施設協定)の活用による展開
道路や沿道民有地における木製ベンチやプランタ等の設置・管理をNPO・行政等の協働で円滑に推進できる。
B 木造中層建築の動向を踏まえた展開
木製建材の研究開発により耐火性・耐震性が高まり、外国の事例では中層の建築物の木造化が見られるように なっていることから、日本でも実現すれば、間伐材の建材が大都市圏の住宅市場等に流通される可能性がある。
C 森林認証制度(国際認証 FSC)に対応した展開
二酸化炭素吸収源としての森林(生態系等を含む)の保全状態を国際規格で認証する制度の導入により、日本 の木材マーケットにおいても認証材が販売条件になれば、間伐材の有効利用が進展する可能性がある。
(2)耕作放棄地の再生(遊休農地の活用)への展開
農地法の改正や農家の個別所得補償等の法制度・公的措置の動向、就農意欲のある若手や団塊世代等の人材が 増えている状況を踏まえ、田園環境や文化の継承を図りつつ新たな農地利用や就農人口増加の期待がある。
(3)広域連携・協働体制づくりの展開
@今回の活動に参加・協力した白河・戸田市の各団体や企業に加え、新たに複数の市民グループや企業等が参加することにより、民間ベースによる友好都市間の協議会づくりに発展するなど多様に展開する可能性がある。
Aさらに、「新しい公共」の事業に取り組んだ東北地方の各団体が連携・協働することにより、延いては、国土の骨格的インフラをフルに活かした関東地方等とのより大きなネットワークづくりに発展する期待がある。


付属説明資料(PDF:5.7MB) >>

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