美しく、安全で、いきいきした海岸目指して

海と陸の接する海岸は、多様な生物が相互に関係しながら生息している貴重な空間であると同時に、わたしたち人間が暮らす場所でもあります。これまで海岸は、人々が暮らしていくという面からの整備に重点が置かれてきました。台風や地震による高潮や津波に対する防護がその一例です。この「海岸保全」の考え方は昭和31年に制定された「海岸法」の大きな目的でした。この海岸法の制定により、海岸四省庁(農林水産省、水産庁、運輸省、建設省)による海岸管理が始まり、現在にいたっています。

近年、環境保全意識が高まり、海岸利用方法が変化するに従って、海岸整備の方向性が変わってきました。自然環境を守り、自然と共存しながら人々にとって必要な利用環境を実現していくことが重要な課題となってきたのです。そこで平成11年、海岸法の一部改正が行われました。新しい海岸法では、これまでの「防護」という目的に加え、自然環境の保護と回復に焦点をあてた「環境」と、海岸を上手に利用してもらうための管理に焦点をあてた「利用」の2つの目的が追加されました。

このように「防護」「環境」「利用」の三つの方向から海岸を整備し、「美しく、安全で、いきいきした海岸」を次世代へ継承していくことがわたしたちの海岸法の理念です。

1956(昭和31年) 海岸法の制定
津波、高潮、波浪等の海岸災害からの防護のための海岸保全の実施

海岸侵食の進行
海洋性レクリエーション需要の増大
海岸環境への認識の高まり
地方分権化の推進
1999(平成11年) 海岸法の一部改正
公布月日:H11.5.28 施工月日:H12.4.1
1.法目的の改正詳細
2.一般公共海岸区域の創設
詳細
3.海岸管理のための計画制度の見直し
詳細
4.海岸管理における市町村参画の拡大
詳細
5.海岸保全上支障のある一定の行為の禁止
詳細
6.主務大臣による直轄管理制度の導入
詳細

1.法目的の改正
 総合的な視点に立った海岸の管理を行うため、旧海岸法の目的である「海岸の防護」に、「海岸環境の整備と保全」及び「公衆の海岸の適正な利用の確保」を加える。
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2.一般公共海岸区域の創設
 自然公物として公衆の自由使用に供される海岸を「公共海岸」として、公共海岸のうち海岸保全区域以外の区域(従来の法定外公共物)を「一般公共海岸区域」として、それぞれ法律上位置付ける。後者は、施設整備を伴わない、土地の占用、土石の採取等の許可等の海岸法に基づく管理を行う区域とする。
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3.海岸管理のための計画制度の見直し
 海岸の保全に関する基本的方向性を明らかにするとともに、地域の意向等を反映するため、主務大臣による海岸保全基本方針と都道府県知事による海岸保全基本計画を策定することとし、後者について、学識経験者、市町村長、地域住民等の意見聴取手続等を規定する。
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4.海岸管理における市町村参画の拡大
 日常的な海岸管理への市町村の参画を促進するため、市町村長が、都道府県知事等と協議して、海岸保全区域及び一般公共海岸区域における一部の管理を行うことを可能とする制度を導入する。
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5.海岸の保全上支障のある一定の行為の禁止
 海岸保全施設その他の施設又は工作物の損傷及び汚損、油等による海岸の汚損、自動車等の乗り入れ、船舶等の放置等を禁止する。
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6.主務大臣による直轄管理制度の導入
 国土保全上極めて重要であり、かつ、地理的条件及び社会的状況により都道府県知事が管理することが著しく困難又は不適当な海岸(政令で沖ノ鳥島を指定)について、主務大臣が全額国庫負担で海岸管理者としてその管理を行うこととする。
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