海と陸の接する海岸は、多様な生物が相互に関係しながら生息している貴重な空間であると同時に、わたしたち人間が暮らす場所でもあります。これまで海岸は、人々が暮らしていくという面からの整備に重点が置かれてきました。台風や地震による高潮や津波に対する防護がその一例です。この「海岸保全」の考え方は昭和31年に制定された「海岸法」の大きな目的でした。この海岸法の制定により、海岸四省庁(農林水産省、水産庁、運輸省、建設省)による海岸管理が始まり、現在にいたっています。
近年、環境保全意識が高まり、海岸利用方法が変化するに従って、海岸整備の方向性が変わってきました。自然環境を守り、自然と共存しながら人々にとって必要な利用環境を実現していくことが重要な課題となってきたのです。そこで平成11年、海岸法の一部改正が行われました。新しい海岸法では、これまでの「防護」という目的に加え、自然環境の保護と回復に焦点をあてた「環境」と、海岸を上手に利用してもらうための管理に焦点をあてた「利用」の2つの目的が追加されました。
このように「防護」「環境」「利用」の三つの方向から海岸を整備し、「美しく、安全で、いきいきした海岸」を次世代へ継承していくことがわたしたちの海岸法の理念です。
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