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はじめに 
 最近、はまっているテレビ番組があります。それは某テレビ局が放送している「ほこ×たて」という番組です。
昔の中国の話、矛と盾を売るものがいて、自分の矛はどんな盾をも破ることができ、
自分の盾はどんな矛をも防ぐことができると誇っていたが、人に「お前の矛でお前の盾を突いたらどうか」といわれ、
答えられなかったと言う故事に基づいた「矛盾」という言葉。
これを現代の世界に置き換えて行われる、相反するもの同士の戦い。
「絶対に穴が開かない金属」VS「絶対に穴を開けるドリル」。
その分野の技術屋さん同士が英知を結集して対決する様子は本当にワクワクさせられます。
その緊張感ある対決を見て感心させられるのは、「日本の技術力(特に土木工学)の高さ」です。
今回の突撃現場リポートでは、そんな土木関係のあっと驚くような新技術をリポートしてきました。
 
 ※工事の概要は、第1回を参照

 
 新技術「ロッククライミングマシーン」!重機が山登りをして、痛んだコンクリートの斜面を削りとっています。
 土を掘るための重機のバックホウに、ウィンチを搭載し、ワイヤーロープでぶら下がりながら、
急な斜面で土を掘ったり岩を砕いたりすることができる重機です。
斜面上でも運転席の水平を保つことができる装置など、急な斜面で、安全・確実に掘削作業ができるよう
様々な工夫で改良された特殊な重機です。
 
へば、そろそろかへぎに山さ登るが! どっこらへと!
(キャタピラーを斜面に這わせたまま、運転席を水平に調整)
     
 
やっと着いだど!
(ウインチでワイヤロープを巻上げながらキャタピラーで山登り)
  うんしょ、うんしょ
  
斜面のてっぺんにある杉の木にワイヤーロープをつなぎ、ぶら下がった状態で
ウインチでワイヤを巻上げ、キャタピラを使って登っているとのこと。
木が倒れたり、折れたりしないか心配だったけど、木ってものすごい強度なんですね。

 どんなところに気をつけてますか?
 やはり高所での作業ですので、安全対策ですね。
    てっぺんにある杉の木の力を利用していますので、入念に根の張り具合を点検しています。
    それと、国道4号のすぐ脇での高所作業ですので、国道への石の飛び散りには充分に注意しています。
 
万が一の落石から国道を走る自動車を守るための鉄製の防護柵。
念のため、その上にネットを追加で設置。
 念には念を入れ、斜面途中にも落石防護柵
 ロッククライミングマシーンに乗っている人とは、どのようにして連絡を取りあっているんですか?
  無線で連絡を取ります。重機の運転手からは、斜面の下の方が見えませんので、
    斜面の下に作業員が立ち入るなどして危険な場合は作業停止の連絡をします。
   
連携プレーで行われている安全対策  斜面の下には削り落とされた大きな
コンクリートのかたまりがゴロゴロあります。


               
田中建設(株)さんには、お忙しい中、私の突撃取材に真摯に対応していただきました。
新技術「ロッククライミングマシーン」、重機が昆虫のように斜面を登っていく様は、
子どものころ見たSF映画を思い起こさせました。
最新の機械で行われる作業、その反面、安全面は職人さんたちの地道な点検作業に支えられています。
「人の命は、人が守る」、そういった面はまだ機械にだけ頼ってはいけないのでしょうね。
めざましい技術の進歩の裏には、技術者たちの多大な好奇心と涙ながらの苦労が、きっと隠されているのでしょう。

  
 
 吉田松陰といえば、松下村塾を設立し、幕末の偉大な志士を育てたあまりにも有名な人物。
(桂小五郎(後の木戸孝允)や高杉晋作、伊藤博文の先生でもありました)
その松陰先生が黒船に密航しようとしたというホントの話。
1854年、日米和親条約締結のため下田沖に停泊していた黒船に、吉田松陰と金子重輔が小舟で乗りつけました。
「自分たちは江戸の学者である。自分たちの学識は乏しく、兵法、軍律を議論することもできない。
自分たちは様々な書物を読み、欧米の習慣と教育とを多少は知っている。
長年の間、五大陸を周遊したいと望んでいたが、我が国は異国との交流を禁じているため、
このような希望は叶えられていない。
幸いにも、貴下の艦隊が来航されているので、出航する際には、我々も一緒に連れて行ってほしい」
当時の日本では、密航は重罪(場合によっては死罪)。二人の並々ならぬ決意が感じられるこの行動。
しかし、その夢は残念ながら、かないませんでした。(その後、二人は幕府に捕らえられ牢獄に入れられます) 
   ※このエピソードは、昨年の大河ドラマ「龍馬伝」にも描かれています。
   
 この二人の行動に感銘をうけたアメリカは次のように日本人を評しています。 
 「この事件は、日本の厳重な法律を破り、知識を得るために命を賭けた
二人の教養ある日本人の並々ならぬ知識欲を示すもので、興味深いものであった。
日本人は疑いなく研究好きな国民で、彼らの道徳的、知的能力を増大させる機会は、これを喜んで迎えるのが常である。
この不幸な二人の行動は、日本人の特質より出たものであったと信じる。
国民の抱いているはげしい好奇心をこれ以上によく示すものはない。
日本人の志向がこのようなものであるとすれば、この興味ある国の前途は何と実のあるものであるか、
その前途は何と有望であることか。」 

 150年以上前の話ですが、現在の経済大国、技術大国・日本を予見していたかのようですね。


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