3.その他河川の整備を総合的に行うために必要な事項
|
(1)流域社会との連携 |
これからの河川の維持・管理は、河川管理者だけで地域のニーズや多様化に対応したきめ細かい管理を適切に実施していくには限界があり、公開講座やシンポジウム、情報誌、インターネットや各種広報活動等を通じて分かり易い情報を提供し市町村やNPO、地域住民と河川に関する情報の共有化を図る。河川の整備を進めるにあたっては、住民合意のもとに進める必要があり、これまでの河川管理者主導の進め方から住民との協働にしていくことが重要である。このため、住民が川づくりに参画できる方策を積極的に進めて行く。
山形県では、最上川の総合的な研究を進めることとし、「美しい山形・最上川フォーラム」をスタートさせている。また、美しく快適な県土づくりのためにNPO活動を主軸に据え、行政主導から脱皮し名実共に県民が主役の運動としていくこととしている。河川管理者としては川づくりを進める民間団体や河川の清掃・美化を進める地域サークルなど、地域住民独自の取り組みを自治体とも連携をとりつつ積極的に支援していく。
さらに、地域住民や河川愛護団体等からの河川に関する情報が収集出来る体制づくりに努めるとともに、地域の川に対する関心を高めるなど住民参加の川づくりに努める。
|
|
(2)情報の共有と発信 |
最上川の洪水被害を防止・軽減するためには河川整備と併せ、洪水ハザードマップ等により警戒・避難を助ける防災情報の提供を積極的に行い、地域住民一人一人の防災意識を高めることが重要である。住民自らが洪水時の警戒・避難を行うという防災意識の高揚と、迅速かつ的確な水防活動の円滑な実施のためにも、自治体等と協力して平時から防災教育や防災訓練等を行う。
|
(3)福祉社会への対応 |
全国的に高齢化が進展している中で、最上川流域は特に高齢化の進展が著しい。さらに、産業構造の変化に伴い、職域の分散、核家族化、世代間交流の希薄化が進み、物質的豊かさを追求してきた戦後の半世紀から、精神的な豊かさを追求する新世紀へと移り変わりつつある。こうした地域社会の変化に伴い、最上川の河川空間が果たすべき役割も、新たな福祉型社会への対応が求められている。
このため、河川空間が有する癒しの機能を生かし、高齢者・障害者が隔てなく生活できるユニバーサルデザイン等による河川整備が必要である。
河川整備にあたっては、河川管理者のみによる河川管理の限界を認識し、利用者、住民・コミュニティ、地方公共団体など各主体と役割分担しつつ連携し、洪水時等の危機管理でもコミュニティとの連携を積極的に展開していく。
|
|
(4)次の世代への継承
|
自然豊かな最上川は、数多くの洪水・渇水等を経験し各種事業が実施され、最上川のもつ自然のダイナミズムと流域の人々の河川利用のかかわりの中で現在の最上川が形成され、「母なる川」として県民に親しまれている。この財産を次世代へ継承することが大切である。
とりわけ、次の世代を担う子供達に、身近な自然である河川に親しみ、楽しく学び、自ら考える機会を通じ、人間と自然との共生のための行動への意欲を育むことが大切である。また、過去の氾濫の実体験や洪水被害について学び継承するなど、増水時・洪水時の川の危険性と対処方法などのきめ細かな情報を広く伝えることが重要である。
さらに、人の心を育む川の恩恵の重要性を認識するとともに、自ら危険を回避し切り抜ける能力を養うため、教育における河川の有効性を発揮できるような施策を展開することや、最上川の文化・風土を継承していくための取り組みが必要である。
そのために、最上川に関する情報誌の作成や地域に根ざした河川学習に対する支援を関係機関やボランティア団体・NPOと連携しつつ積極的に展開を図っていく。
|
|