2.河川の維持の目的、種類及び施行の場所

(1)維持・管理のあり方
 河川のもつ機能が最大限に発揮できるよう、整備した施設の日常の点検整備に努め、併せて自然環境との調和、地域との連携を図りながら最上川の維持・管理に努める。

(2)安全、安心な地域づくりのための河川の維持
1)日々の河川管理
  @河川情報の整備・高度化
 適正な河川の維持・管理を行うために、河川現況台帳を整備するとともに、省力化を図りつつ、高度な情報管理を行うための各種データベースや河川GIS等を整備し、情報の共有化と高度化を図る。
  A河川の状況把握の強化
 河川を良好に維持・管理するため、河川巡視により河川全体の状況の把握を行う。また、河川巡視を迅速に行うため、河川管理用通路の補修を行うとともに、河川管理用通路が未整備な区間については整備を図る。
  B堤防・高水敷の維持・管理
 堤防は、洪水を安全に流下させ、流域の人々の生命や財産を守る根幹的な施設である。
 堤防機能維持の視点から、堤防点検、河川巡視等を実施し適切な堤防の植生管理に努めるとともに、高水敷は、河川環境の保全・復元及び景観の維持・形成に重要な空間であり、適切な管理計画を定め実施する。
 また、高水敷の樹木は、生態系を育む重要な空間である一方、洪水時の流水の阻害等、沿川の治水対策に悪影響を及ぼす場合もある。このため、樹木の成長や繁茂の状況を定期的に調査・監視し、洪水の流下や河川管理施設等に支障と認められるものは、河川環境の保全・復元に配慮しながら、移植、伐採等適切な措置を講ずる。
 なお、河川が流域の共有財産であることを踏まえて、関係市町村やNPO等との協力体制づくりに努め、地域との連携を図りながら協働して省力化及びコスト縮減のための調査研究を推進する。
 

C低水路の維持・管理
 低水路の洗掘や堆積及び樹木の繁茂は、河川の流下能力や河川管理施設等に大きな影響を与える。このため、河道及び河岸の状況を定期的に調査・巡視し、河道の変動、河岸の浸食、護岸、根固工等の河川管理施設へ影響を及ぼす恐れがある場合には、その施設が機能するような措置を講ずる。これらの実施にあたっては、河川環境の保全・復元に配慮する。

 

2)洪水管理
 最上川は、昭和30年の洪水予報指定河川に指定以来、洪水時の河川の状況を監視し、関係機関と連携を図りつつ沿川地域に対し、洪水予警報を発信し、ともに係る災害に対処してきた。
 また、多くの狭窄部を有する最上川にとって、洪水の時間が長くなる事や、堰上げら れることによる被害増大がある。

 これらの状況を踏まえ、今後、以下の視点での危機管理対策の充実を図ることとする。
  @洪水予報・水防警報
 洪水の規模を的確に予測し、沿川地域に発信する事は災害対策上極めて重要である
 このため、洪水予測の精度向上はもとより、流域に設置している水位計、雨量計等の機能の向上を図るとともに、観測機器の二重化に積極的に努める。
 また、情報の発信に関しては、防災関係機関や報道機関と連携を図りつつ、迅速かつ地域住民に分かり易い情報発信に努める。
 なお、毎年、出水期前に水防関係機関及びダム管理関係者等との情報伝達訓練を実施し洪水等に備える。県所管の中小河川において洪水予報の指定にあたっては必要な助言を行う。
  A出水時の巡視及び状況把握等
 出水時においては、洪水の状況、堤防の状態、河川管理施設等の状況を巡回し把握するとともに、水防管理団体、市町村と日常から協働して、危険箇所の早期発見、被害軽減に努める。
 さらに、より広範囲の河川状況のリアルタイムでの監視を可能とする、光ファイバー網を活用した遠隔監視を推進するとともに、沿川住民の自主的避難活動に資する事を目的とし、リアルタイムの河川の情報の発信を目指す。
  B円滑な水防活動の実施
 洪水災害に対して極力被害を軽減するために、洪水危険箇所の公表や水防管理団体等と現地確認を行うことなどにより周知等を図る。
 非常時にあっては、堤防破堤や河川管理施設への重大な被害のおそれがある。流域内の被害や河川管理施設の被害が最小限となるよう、迅速かつ最大限の対応を行うとともに、防災エキスパート等の活用を行いながら積極的に進める。情報提供は、迅速・的確に行うとともに、河川管理施設等に被害が発生した場合には、速やかに応急復旧等を実施する。
 また、水防技術の習得と水防活動に関する理解と関心を深めることを目的とした、水防技術講習会、水防訓練等を引き続き実施し、今後ともその充実を図る。
  C沿川危機管理情報の充実
 洪水予報指定河川について、沿川地域住民の自主的かつ円滑・迅速な避難を確保し、水害からの被害軽減を図るため、当該河川が氾濫した場合に浸水が想定される区域を、浸水想定区域として指定し、市町村長に通知する。
 洪水時の円滑かつ迅速な避難を図るため、各市町村で洪水ハザードマップが作成される場合は適宜指導・助言を行う。また、県において浸水想定区域の作成にあたっては、技術的な支援を行う。
  D情報の共有化
 国、県等が所有している河川情報(流量、水位、水質等)については流域内の情報の共有化を図るとともに、情報については積極的に住民に提供するものとする。
  E河川管理施設等の機能の維持・向上と運用
 ダム、堰、樋門、排水機場等の河川構造物が常に機能を発揮出来るよう出水期前点検、臨時点検、定期的な点検・整備を行うとともに、適切に補修、改修を行う。樋門等の操作については、「操作規則」、「操作要領」等により行う。
 今後、樋門の操作員の高齢化や人員不足が予想されるため、施設の統合や光ファイバー網の整備により、操作の確実性を確保しつつ、集中管理による遠隔操作化を図り、初動操作の迅速化、異常時の後方支援の強化、更にこれまで一部に限られていた画像情報の収集等を行う。
 なお、許可工作物の遊休施設が今後発生しないよう、管理者と調整を図る。
 ダム及び堰の操作は、「操作規則」、「操作要領」等により行うが、特に、各ダムについては、降雨の状況や貯水池の状況を勘案し総合的な管理に努めるほか、さらにダムの洪水調節容量の効果的な使用のための操作ルールについて、河川改修の進捗状況等も踏まえ検討を進めていく。
  F水防施設及び資材の適切な配置
 最上川には、内水対策として排水ポンプ車が配備され、他水系を含め広域的に活用されているが、内水被害の発生状況に対しては、災害対策車等と合わせて計画的な運用を図る。
 緊急資材倉庫に備蓄されている資材の定期的な点検・確認を行い、不足資材の補充を図るとともに、河川防災ステーションや側帯(非常の為の備蓄土砂)・車両交換場所についても、河川周辺の土地利用を考慮して、計画的に整備を図る。

3)低水管理
 最上川における主な渇水は、昭和30年、昭和48年、昭和53年、昭和59年、昭和60年、平成6年に発生しており、取排水量の適正な把握及び流況の適正な管理による低水管理を進めていく。
  @ 取排水量の適正な把握
 取排水量を適正に把握し低水管理システムの充実を図る。なお、利水者に対して取水量計等による管理が行われていない場合、適切な水管理が行えるよう、取水量計の設置を指導する。
  A流況の適正な管理
 渇水時等の流況低下時においては、流況の適正な管理に努めるとともに、ダム等の水資源開発施設に対しては、貯留を制限する流量(貯留制限流量)を設定し、低水時の流況を保全するための適正な管理に努める。
 
図13 最上川の主要な地点における貯留制限流量
4)震災対策
 気象庁が発表する各地の震度及びダム等に設置されている震度計の観測値が所定の値以上の場合には、速やかに震度や災害の規模に応じた体制を確保し情報連絡手段を確保するとともに、河川管理施設等の点検や、情報収集に努める。
 また、河川管理施設等に被害が発生した場合には速やかに応急復旧作業を実施する。 なお、迅速な対応を図るため年1回地震を想定した訓練(情報連絡、非常参集等)を行い、震災対応に努める。

(3)豊かな地域づくりのための河川の維持
1)河川空間の適正な保全と利用
 河川空間という限られた範囲の利用については、地域と連携を図りながら、協働して流域として調和のとれた適正な保全と利用の調整を行う。
  @河川利用の促進
 河川は、釣りや高水敷を利用した各種レクリェーション等多くの人々から利用されている。河川の利用促進は、その周辺の地域住民が利用し易いよう配慮し、自然環境や景観との調和を図りながら進める。そのために、河川敷地を広範囲に占用利用出来る包括占用※1の周知を行う。多目的利用を促進するためには、高水敷等の空間を含めた利活用と保全の調整を、地域住民や利用者の声をモニタリング等により反映させる。
 また、河川利用に当たっての自己責任の啓発に努める。
  A不法投棄対策
 ボランティアによる「モモカミゴミバスターズ」や小・中学生等による河川清掃活動を支援し、「ゴミマップ」等の情報や「河川愛護月間」等の期間を活用して地域と一体となって河川愛護思想の啓発・普及に努める。あわせて河川巡視の強化、悪質な行為の関係機関への通報、車止めの設置等の適切な対策を講じる。
  B不法占用対策
 河川区域内の不法な工作物の設置等に対しては、不法工作物の早期発見のために巡視を行い、不法工作物が発見された場合には現状回復等の必要な措置を講じる。
 また、市町村の協力を得つつ、不法占用がなくなるように適正な利用についての意識の高揚を図る。
 

C克雪対策
 豪雪地域における定住策として、河川空間、河川水を活用した克雪対策は地域の期待が大きい。しかし、雪中洪水や融雪出水時には、流水の阻害となるおそれもあり、地域住民や関係自治体の理解を得ながらその適切な運用を図る。

  D堤外民地
 河川区域内に有する民有地を適切に維持管理するため、所有者等とコミニュケーションを図りながら指導・助言をして行く。
  E適正な水面利用の調整
 水面の利用は、地元への情報提供を行い地域住民の意見を聞きながら、河川の治水・利水機能と良好な河川環境が損なわれないように調整を行う。近年多く見られる不法係留は、河口部に集中しており、洪水時の流下阻害ともなることから、関係機関と連携を図りながら対応する。

 

2)水環境の保全・回復
 流域環境の変化が最上川流域の水環境の変化へつながることから、関係機関と協力しながら、良好な流域環境が維持されるように努める。
 また、水生生物調査等を通じて地域の人々が最上川に関心を持ち、最上川の現状を理解し、水環境の保全・回復に対する理解を深めるよう努める。その為に、地域住民やNPO等へ、分かり易い情報の提供などをこれまで以上に進めていく。
 また、水位とともに水質の自動監視化を図りつつ、水量・水質の日々の監視を行うとともに、行政・地域住民が協働して水量の確保や水質の保全に努める。また、近年多発する水質事故への対応方策については、「最上川水系水質汚濁対策協議会」を活用し、水質事故対策についてのマニュアル等の充実を図るとともに、住民への広報等の充実により発生防止に努める。事故発生時には関係機関の連携による早期対応により被害の拡大防止に努める。

 

  3)河川周辺における自然環境の保全・復元
 最上川の川づくりは、自然環境の保全・復元に努め、河川工事等に際しては、多自然型工法に努めるとともに、その一環として、最上川流域の森林の間伐により発生する木材の活用についても他機関との連携を進める。
 また、最上川流域の豊かな自然環境を保全・復元し、次の世代へと良好な形で引き継いで行くためには、流域の人々の理解と協力なくしては達成出来ないことから、地域住  民との連携及び協力体制の確立を積極的に行うものとする。

  4)砂利採取等の河川生産物 
 河川区域内の砂利の採取については、河床の低下及び河川環境等に配慮する観点から原則禁止とする。
 しかし、局所的な堆砂が流下阻害となるところについては、河川環境、河床維持、賦存量を総合的に判断して対処していく。

※1 包括占用 使用目的を限定せず占用を許可すること