(5)維持・管理の現状と課題
 最上川では、大臣管理区間の323.9kmで国土交通省による維持管理が実施されている。区間内には、水門や樋門(ひもん)(300箇所)、堰(3箇所)、ダム(2箇所)、遊水地等の河川管理施設※1やかんがい用水を取水するための堰(11箇所)、樋門(54箇所)や道路橋及び鉄道橋等(145箇所)の許可工作物※2が数多く設置されており、それら施設の機能維持が重要である。

1)災害を防ぐための日々管理
 適正な管理を行うため、河川の延長や区域などを整理する河川現況台帳※3等の整備や、河川全体の状況を迅速に把握するため、河川管理用通路の整備が不可欠である。
 河道においては、樹木の繁茂、土砂の堆積、沿岸流の影響等による河口の閉塞等の洪水流の流下の妨げとなるような箇所や、河床の低下による河川管理施設への影響も懸念される。

2)洪水管理
 洪水時における河川巡視により、河川の状況等を把握して危険箇所の早期発見に努める他、日頃より水防資材の備蓄、水防関係団体等との水防訓練や情報伝達訓練、重要水防箇所※4の巡視・点検等の充実が必要である。
 また、樋門については、上流部での早期操作や下流部での操作継続時間の長時間化等、操作員への負担が大きく、さらに操作員の高齢化も課題となっている。
 洪水予測の基礎となる水位計や雨量計のデータを災害異常時にも的確に収集し、洪水予測の精度向上を図るとともに、洪水時の被害を軽減するため、地域住民に分かり易く情報発信を行い、かつ地域住民の水害に対する意識の高揚を図ることが必要である。

3)低水管理
 寒河江ダム完成後、最上川中・下流部(最上・庄内地域)の渇水は一定の解消傾向にあるが、最上川上流部(置賜地域)においては、夏期は毎年のように渇水状態となっている。近年では昭和59年、昭和60年、平成6年と渇水が発生しており、水質の悪化や取水障害等の問題が生じている。

4)震災対策
 新潟地震(昭和39年6月)や日本海中部地震(昭和58年5月)により河川管理施設等が被災していることから、地震を想定した資機材等の備蓄や情報収集・情報伝達手段の確保、迅速な巡視・点検体制の整備が必要である。

5)河川空間の適正な利用調整及び保全
 最上川の河川空間は多くの人々に多種多様に利用されている一方で、河川敷へのゴミの投棄やゴミの堆積が多く、良好な河川空間を著しく損なっている。
 また、河川敷には樹木の繁茂により、洪水の流下の阻害が懸念される箇所もあるほか、一部に不法占用や河口部においては小型船舶、プレジャーボート等の不法係留が見られる状況にある。
 近年は河川への油流出等の水質事故が増加傾向にあることから、事故発生時の情報収集・伝達、事故対策の迅速化及び住民への啓発活動が必要である。


6)河川生産物の調整
 最上川の内水面漁業漁獲高は、平成12年度※5でアユ、サクラマス等を中心に約442tである。また、漁期にはヤナなどが河川内に設置されている。
 河川区域内の土石の採取は、平成6年度まで行われていたが、平成7年度以降は河川砂利の枯渇、河床低下の影響を考慮し採取を許可していない状況にある。

7)地域と一体となった河川管理
 最上川における地域、住民等の河川管理にかかわる活動として、学校関係者による継続的な河川の観察と水質モニタリング、最上川桜回廊事業に関連した市町村を始めとする各種愛護団体等の清掃活動、環境保全活動が行われている。
 このように河川管理者と地域住民が協力・連携して多様なパートナーシップによる河川管理が行えるような環境づくりに努める必要がある。

※1 河川管理施設 流水の氾濫等を防ぎ、軽減するために河川管理者が行う河川工事として設置し、管理する構造物
※2 許可工作物 流水を利用するため、あるいは河川を横断する等のために河川管理者以外の者が河川法の許可を得て設置する工作物
※3 河川現況台帳 河川の延長や区間、区域などを明らかにしておく台帳
※4 重要水防箇所 堤防が低い箇所や、過去に漏水実績がある箇所など洪水時に危険度の高い箇所
※5 平成12年度 山形県の水産(山形県農林水産部)