(4)河川環境の現状と課題
1) 動植物環境
 最上川は、盆地部と狭窄部を交互に通過して日本海に注ぐ大河川である。盆地部では緩やかに蛇行しながら瀬、淵、砂洲等を形成し、急峻な山塊が迫る狭窄部では岩盤の河床を急流となって流下する。淵にはウグイ、瀬にはオイカワ等が生息するほか、サケ・サクラマス等の回遊魚も上郷ダム上流まで遡上している。また、上流〜下流域の河畔には、ヤナギ類、オギ群落、ヨシ群落等が広く分布し、畑地等の耕作地も所々に見られる。
 このように、多様な環境が連続的に存在する河川空間は、動植物の生息・生育地として重要であるとともに、本川に接続する支川や小水路は、周辺の山地等を行き来する生物にとっての通路としての役割も担っている。
 平成2年度より国土交通省が実施している「河川水辺の国勢調査※1」において確認されている植物、鳥類、哺乳類・爬虫類・両生類、陸上昆虫類、底生動物、魚介類の種数は表6のとおりである。ここに記載のほか、最上川流域には河川区域にとどまらず、レッドデータブック等による貴重種や天然記念物等の動植物が生息・生育している。

表6 河川水辺の国勢調査結果
項  目 確認種類数 調査実施年度
植物 135科976種 平成11年度
鳥類 14目142種 平成9〜10年度
哺乳類・爬虫類・両生類 哺乳類:18種
爬虫類: 6種
両生類:12種
平成8年度
陸上昆虫類 16目215科1,448種 平成12年度
底生動物 20目75科185種 平成9〜10年度
魚介類 8目17科51種 平成9〜10年度


@ 植 物
 最上川の代表的な植生は、シロヤナギ群落、タチヤナギ群落の河畔林であり、本川・支川ともに全川にわたって広く分布する。また、大淀や五百川峡などの狭窄部には河畔に成立するケヤキ群落、里山を代表するコナラ群落等が分布し、各盆地部には湿地や河畔にヨシ群落やオギ群落、近年河道内で増加傾向にあるハリエンジュ群落、そのほかオニグルミ群落等が分布する。なお、河口部には、砂丘植物群落等が分布する。
 注目すべき種として、環境庁レッドデータブック※2において絶滅危惧U類(VU)に指定されているタコノアシ、準絶滅危惧(NT)に指定されているミクリ類等が水際域に生育する。

A 鳥 類
 最上川に生息する鳥類は、植生・地形・渡り等の諸条件を反映して多くの種がみられ、代表的な水鳥であるサギ類やカルガモは、四季を通じて最上川全域に生息する。河口部にはウミネコ等カモメ類がみられ、盆地部や平野部の河岸に広く分布するヨシ群落はオオヨシキリ等の繁殖場として利用されている。
 注目すべき生息地としては、毎年多くのハクチョウ類や多くのガンカモ類が集団越冬する河口部等や、寒河江川合流点付近のヤナギ林に形成されるサギ類の集団繁殖地などがある。また、自然河岸の崖地に営巣するカワセミ、中洲などの砂礫地に営巣するコアジサシ等の生息地があげられる。

B 哺乳類、爬虫類、両生類
 最上川周辺には、水田等の農耕地、草地や樹林が広がる高水敷、山間の狭窄部、流入支川等の多様な環境が存在する。水田付近にすむトノサマガエル、草地や樹林にすむアマガエル、シマヘビ、アオダイショウ、イタチ等は最上川流域に広く生息し、アカネズミの生息も見られる。また、草地や樹林が連続する河川空間は、行動範囲の広いタヌキ、キツネ等の採食や移動経路としても機能している。一方、最上峡や五百川峡等の狭窄部では、森林性のヒメネズミ、テン等が生息している。
 注目すべき種としては、国指定特別天然記念物のニホンカモシカや減少傾向にあるトウホクサンショウウオが本川沿いの山間部の渓流に生息する。

C 陸上昆虫類等
 最上川には、多様な植生を反映した多くの昆虫類が生息している。オニグルミ・ヤナギ類・ハリエンジュ等の樹林には、ハムシ類の種類が多く、アブラムシ類を捕食するヒメカメノコテントウも多い。ヨシ・オギ等が広く分布する草地には、ベニシジミ、モンキチョウ等のチョウ類、オンブバッタ等のバッタ類が多くみられる。水際域や川原の石の下には、ゴミムシ類が確認されている。注目すべき種としては、ハグロトンボが中流から上流の広い範囲で確認され、生息域が減少傾向にあるジャコウアゲハやヒメシロチョウ、アカガネオサムシも確認された。また、止水域や湿地を生息域とするハラビロトンボ、チョウトンボがみられた。

D 底生動物
 最上川は、都市や農地が分布する盆地部と山間の狭窄部を交互に通過するため、水質・河床勾配・底質等が変化する。このような河川環境を反映し、五百川峡等の狭窄部では上流域にすむマエグロヒメフタオカゲロウ、山形市下流域の盆地部では富栄養化した流れにもすめるミズムシ等が優占する。その他、上流〜下流域の全域にわたって、早瀬や平瀬の礫にすむエルモンヒラタカゲロウ、造網性のウルマーシマトビケラ等が多い。河口部ではゴカイ等もみられる。

E 魚介類
 最上川では、瀬、淵、ワンド等が形成され、ヨシ等の抽水植物帯を形成している部分も多い。上流〜下流域の全域にわたって、淵にはギンブナ、ウグイ等、瀬にはオイカワ、アユ等が生息し、ワンドや細流は稚魚等に利用されている。その他、上流部ではイワナやヤマメ、礫底にすむカジカ、河口部では汽水・海水性のスズキ、ボラ、マハゼ等が生息する。また、サケ・サクラマスの遡上が鮭川や上郷ダム上流で確認されていることは、河川の縦断的連続性を物語っている。
 注目すべき種としては、環境庁レッドリスト※3の絶滅危惧TB(EN)に指定されているウケクチウグイ、絶滅危惧U類(Vu)に指定されているスナヤツメ、アカザ等があげられる。

2) 水 質
 最上川本川における水質の生活環境基準※4は、鬼面川(おものがわ)合流点より上流でB類型※5指定となっており、現況水質もBOD※6値で3.0mg/lを上回っている年もある。鬼面川合流点より下流ではA類型※7指定となっており、BOD値も2.0mg/lを下回っている。
 最上川支川の水質における生活環境基準は、須川及び京田川でB類型指定となっており、生活環境基準値を満足している状況にある。寒河江川、最上小国川、鮭川においてはAA類型※8指定もしくはA類型指定となっており、寒河江川上流において現況水質はBOD値で1.0mg/lを上回っている年もあるものの、それ以外では生活環境基準値を満足している状態となっており、東北地方の中でも有数の清流となっている。
 今後は、安定的に環境基準値を満足しうる水質の保全・回復に努める事が重要となる。
 その他、社会構造や生活環境の変化に伴う新たな水質問題として、病原性大腸菌、環境ホルモン等が懸念されている。また、油類の河川への流出や魚のへい死などの水質事故も年間10数件程度発生しており、それらの原因のほとんどが人為的なものであることから、地域住民の意識の向上が不可欠であり、水質事故防止に向けた啓発が必要となる。
 最上川の主要地点の水質経年変化状況は図5のとおりである。

図5 最上川水質の推移

3) 景 観
 最上川は古くからその山紫水明を詠われており、特に松尾芭蕉、斎藤茂吉などの詩歌でも全国的に知られている。景勝地としては五百川峡、楯山公園、碁点、大淀、最上峡等が挙げられるほか、平成10年3月に山形県の公募による「最上川ビューポイント」が10地点選定されている。
 最上川を代表する良好な景観の維持・形成に努めるとともに、田園地帯や周辺の町並みと一体となった最上川らしい良好な河川景観や水辺景観についても、維持・形成を図る必要がある。

写真10−1
ビューポイントの一つである「戸沢村古口」
写真10−2 「三難所(三ヶ瀬)」
4) 河川利用
 平成12年度の河川空間利用実態調査※9では、最上川を水遊びや散策などのレクリェーションで利用した人は、約132万人と推定される。他県からの観光客も含まれているが、最上川の流域人口からみると年間一人あたり平均利用回数は約1回となっている。利用形態別に見ると、散策等が41%と最も多く、次いで水遊びが26%、スポーツ19%と続き、これらで86%を占め、釣りは14%となっている。利用場所別には河川敷が49%と最も多く、次いで水面の28%、水際が12%、堤防11%となっている。
 平成12年度は、平成9年度に比べ約10%利用者が増加しており、特に利用形態別には散策等が、利用場所別には河川敷の利用が増加している。これを裏付けるように河川敷には、運動場、公園、ゴルフ場などの施設があり、周辺住民に利用されている他、 河川に関するイベントや観光、親水活動などが盛んに行われている。
 特に山形県の秋の風物詩となっている川原での芋煮会をはじめ、各地で花火大会、お祭などが開催されている。水面利用としては、年間30万人を越える観光客が訪れる最上峡をはじめ、大石田や三難所の舟下り、大江町や白鷹町の観光ヤナ場などがある。また、日本一のハクチョウ飛来地である最上川スワンパークには、シーズン中40万人の人々が訪れる。
 このように、人々の水辺に対する様々なニーズが高まっているため、安全で安心して利用できる川とのふれあいの場や川に学ぶ場の維持・形成を図る必要がある。

図6 各調査日の利用者数
「平成12年度 河川水辺の国勢調査 河川空間利用実態調査」
※1 「河川水辺の国勢調査」 河川環境という視点からとらえた河川における動植物の生息・生育状況調査
※2 レッドデータブック 「改訂 日本の絶滅のおそれのある野生生物−レッドデータブック−8植物T(維管束植物)2000年7月 環境庁」
※3 レッドリスト 環境庁 1999.2月
※4 生活環境基準 その河川が目標とする数値で、知事が定めるもの。
※5 B類型 基準値BOD3mg/l
※6 BOD 生物化学的酸素要求量。汚染度が進むほど数値は高くなる。
※7 A類型 基準値BOD2mg/l
※8 AA類型 基準値BOD1mg/l
※9 河川空間利用実態調査 「河川水辺の国勢調査」の一環として実施している河川空間の利用状況調査