(2) 治水の現状と課題
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1) 河川の整備状況
最上川の河川改修は、明治17年に舟運の航路確保を目的に始まり、その後、庄内地域は大正6年、村山、置賜地域は昭和8年、最上地域は昭和32年から本格的な河川改修が行われ、それぞれ庄内地域、置賜地域、村山地域、最上地域を洪水から守るため、堤防の整備を優先に事業を進めてきている。
現在までの堤防整備の状況は、最上川全川で堤防の整備が必要な延長326.8kmに対して、計画上※1必要な高さ及び幅が確保されている延長は246.2km(75%)となっているものの、計画上必要な高さや幅が不十分な堤防や無堤部を含めた延長80.6km(25%)があり、中でも最上地域には20.5kmの無堤部が残されている。
また、既に堤防が完成している箇所についても、流下能力※2が不足している箇所については、引堤※3ひきていや河道(かどう)の掘削による河積拡大※4かせきかくだいが必要である。
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図3 堤防の整備状況 「直轄河川管理施設現況調書(平成13年3月現在)」
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2)堤防の安全性
最上川の流れは、古来より洪水のたびに蛇行を繰り返しており、その様な箇所の上に築造された堤防の地盤は、透水性(とうすいせい)地盤や軟弱(なんじゃく)地盤となっている。このため、既設の堤防については、洪水時の漏水※5ろうすいの発生状況を見ながら、随時、補強工事を実施するとともに新たに堤防を築造する際には、必要に応じて地盤調査を行い、効率性や経済性の観点から、コンクリート護岸や遮水工※6しゃすいこうを主とした工法で堤防の安全性を確保してきたところであるが、未だ十分とはいえない状況にある。
また、最上川沿川には様々な動植物が生息・生育し、瀬や淵が連続した変化のある流れや豊かな自然環境を有しており、これまでの単純で画一化された工法だけではなく、堤防の安全性を確保しつつこれら河川環境との調和を図る必要がある。
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写真6 堤防強化対策(事例:平田町砂越地区) |
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3)河川内施設の現状
大正6年から始まった最上川の河川改修は、堤防の築造と同時に大小の排水樋門※7はいすいひもんや樋管(ひかん)、河床維持のための床固※8とこがためや堰※8せき、河岸保護のための護岸(ごがん)や水制※10すいせい等が施工され、長い年月が経過している。また、河川を横断する道路橋や鉄道橋等の地域間の交流や経済を支える重要な施設は145箇所にも及び、中には損傷が著しい施設や洪水の流下を阻害する施設があるため、これら施設の早急な改築等が課題となっている。 |
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写真7 流下を阻害している鉄道橋(事例:須川) |
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4)内水※11ないすい対策
堤防の整備によって洪水による氾濫被害が軽減される一方で、内水被害が発生する現状がある。このため、支川の合流部に水門や樋門を設置し、本川への排水や洪水流の逆流防止等の排水対策・排水機場の設置等による内水対策を実施しているところである。
しかし、最上川はその地形的特性である狭窄部上流部で、堰上げによる水位の上昇や洪水継続時間が長引く影響等により、小支川等を中心に発生している内水被害の対策は十分とは言えない状況にある。 |
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写真8 平成9年6月洪水の内水状況
(事例:大石田町大石田地区,横山地区) |
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5)危機管理対策
河川の改修が進むことにより洪水による氾濫被害が少なくなるに伴い、沿川の人々の洪水に対する防災意識は少しずつ薄れていくこととなる。相反するように流域の著しい開発等により、雨水が従来より早くかつ多くの量が河道内に流出することにより、河道に対する負荷は大きくなり、堤防の決壊等の万が一の事態にはこれまで以上の氾濫被害が予想されることから、地域の実情にあった迅速な防災活動ができる体制づくりが必要である。
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写真9 東村山地区河川防災ステーション※12
(事例:中山町 平成11年5月完成)
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※1 |
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計画上 |
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基本方針で定めた流量を安全に流下させるために必要な整備に関する計画 |
※2 |
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流下能力 |
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河道において流すことが可能な最大流量 |
※3 |
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引堤 |
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流下させる流量を増加させるため、川幅を広げ新しく堤防を築き既設の堤防を撤去すること |
※4 |
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河積拡大 |
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流水を流下させるための河道断面の確保 |
※5 |
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漏水 |
: |
河川の流水が地盤或いは堤防本体より漏れ出る現象 |
※6 |
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遮水工 |
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鋼矢板等により河川の流水の浸透を防止する工法 |
※7 |
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排水樋門・樋管 |
: |
支川等の流水の排水のために、堤防に設けられる施設 |
※8 |
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床固
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: |
上下流の川底の高さを維持するために、川を横断して設けられる施設 |
※9 |
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堰 |
: |
上下流の川底の高さを維持することや上流部の水位の安定等を目的に川を横断して設けられる施設 |
※10 |
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水制 |
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洪水流を川岸や堤防に衝突しないよう川の中央部に導く工作物 |
※11 |
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内水 |
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洪水時に本川水位が上昇し、支川のスムーズな流下が困難となり、氾濫する現象ステーション |
※12 |
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河川防災
ステーション |
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水防活動時の拠点及び水防資材等の備蓄基地 |
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