第87回地域づくり勉強会(6月27日)

[東海大学海洋研究所地震予知研究センター長、教授 長尾年恭 氏]

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  今日は地震予知、あるいは関連の防災の話をします。

 地震予知関連の研究は、文部科学省が主管官庁ですが、阪神大震災のあと、地震調査推進本部というのができて、長期評価というものを行うようになっています。

 例えば宮城県沖地震の場合、今後30年以内に99%の発生確率といわれています。これくらい可能性が高ければいいのですが、例えば、十勝沖地震は今後30年以内の発生確率が6%で、そういう数値をどう評価するか。確かに統計表現ではありますが、災害対策を立てる上でこれは非常に使いづらいという話があります。しかし、地震防災に関する国の考えはここ2年くらいで劇的に変わりました。これには内閣府が非常に大きな役割を果たしています。

 もちろん我々は地震予知ということを目指していますが、最終的には災害をどう減らすかというのが最も重要であって、予知もひとつの方法ですが一番重要なのは、結論から言いますと耐震補強だと考えています。そのために国が非常に大きく動いてくれております。(一部省略)

 さて、大きな地震災害のとき何が起こるか、あまりイメージできないので、現実に何が起きるかを知ってもらうために、今から阪神大震災の時の再現映像をお見せします。実写ではありませんが、神戸の「人と防災未来センター」という所が作成したもので、フルバージョンで7分半ありますが、それをダイジェストで1分少々にしたものです。(再現映像 ※この記録には、映像データを掲載してありません。)

  2003年の5月26日に、宮城県沖で少し深い小さな地震が起きまして、7月に宮城県北部の地震、その年の9月に十勝沖地震が起きましたが、実は阪神とか宮城県北部というのは、たかだか10秒から15秒くらいしか揺れていません。それに対して将来発生が予測されている宮城県沖地震では、たぶん1分以上非常に激しい揺れにさらされると予想しています。東海の場合も2分くらいではないかと思われます。(一部省略)

 被害をどう減らすかという観点で、今日は予知の話をメインにお話しした後で、防災についてお話したいと思います。

 昨年から今年にかけて非常に大きな地震が相次ぎました。まず中越地震から始まりまして、12月にスマトラ島沖地震、それから3月に福岡市で非常に大きな地震がありました。その際は、玄界島というところで大きな被害が出ました。    今日は実際の地震予知研究はどのくらい進んでいるんだということをお話したいと思っております。今の公式見解では東海地震以外は短期直前予知はできません。しかし、科学的な予測自体はかなりできるようになったのですが、これが行政から発表できるものまでは、まったく至っていないということです。ここに、いわゆる行政が使える、動けるというようなレベルと、研究的にどこまでわかるというレベルとに非常に大きな差があるということで、その辺の話もしたいと思います。最初に地震予知研究というものをご紹介し、後は防災対策の盲点という話をしたいと思っております。そして、最後にリアルタイム地震情報という、これは地震が発生してからいかに即座に伝えるかという、新幹線を止めるユレダスというものに近いものですが、それが今ほぼ実用化されてテスト配信を受けてますので、それを紹介したいと思っております。

                                                                                   この新聞は、産経新聞の2003年の8月という2年ほど前のものですが、実は一昨年の宮城県北部の地震の時に、東京都が地震予知研究ということで、私ども東海大学がその委託研究を受けていました。この記事の一部に非常におもしろいことが書いてあります。今年6月に仙台市周辺で複数の電磁波異常が確認され、宮城県北部地震が発生した7月26日の前々日、東海大と東京都で非公開の打ち合わせをもち、仙台で非常に大きな異常が重なっているということを話し合っていました。電磁波の異常とガスの異常というのが主で、2つのデータは仙台のデータなのですが、仙台といってもどこだかわからない。要するに観測点が仙台1ヶ所しかない。その次は盛岡しかない。今これだけ震源が精度良く決まるのは、地震計が沢山あるからです。我々の電磁波観測というのは、ある意味100年前の明治時代の地震観測と一緒で、仙台の周りということはわかっても、どこかということはわからないわけです。また、この時は市内でガスのような匂いがするという異臭騒ぎが多くありました。それは長町利府断層に沿っての証言でした。河北新報に、この2週間くらい前に異臭騒ぎでたくさん通報があった、風向きを考えるとどうも工場などのガスではないらしいが原因不明であるという記事が載りました。その分布について私どもの仲間の一人が調査をした結果、明らかに断層沿いで証言が多いということがわかり、もしかすると地震の前兆で、今地下の状態が変わっている可能性があるということになりました。

                                                                                                                             

そこに電磁波異常が重なったために、今週末は仙台に気を付けましょうという話をしていて、商工会等にはそこからリークした情報を聞かれた方もいたみたいなのですが、偶然こういうことが起きてしまった。しかし、これは全く曖昧な情報で、市民に発信できるようなレベルではありませんでした。ただ、今の段階としては、どこに異常があるのか、あるいは地殻変動を起こしているのかということは、実際リアルタイムでわかるようになってきております。問題は、新聞発表となりますと、ヘッドラインの一行だけで「今週末地震か?」などとなってしまうことです。予知情報に対して行政が動き難いというのは、そういうところにも理由があると思います。

 東海地震は、発生前に名前がついている世界で唯一の地震で、どこで、どれくらいということは予測されており、静岡県を中心とする駿河湾で、マグニチュード8くらいの地震が今後必ず起きると言われています。しかし、30年前から言われてますので、今の高校生・大学生は全然危機感がないのです。なぜかと言うと、生まれたときから言われている、まさに無限の時間。ちょっと考えてみますと、小学校の6年間と最近の6年間とを比較すると、最近のはあっという間に過ぎてしまう。その時までの人生に対する時間の長さ、精神的な長さの割合が違うからです。そうすると、静岡の高校生・大学生は、生まれた時からある意味、無限の時間言われているので、静岡県はあまり危機感がないとも言えるかもしれません。今一番危機感があるのは、名古屋です。突然東海地震の想定震源域が西側に広がったことから、名古屋の方が今、打てば響くというか、非常に熱い状態です。ある意味仙台も、一昨年の地震があったので、意識が高くなっているのではないかと思われます。ところが静岡は、年に有感地震が1回あるかないかという状況で、ふだん全く地震がありません。このように従来、長方形で見てたものがなすび型という形になったために、愛知県までほとんどの地域が警戒宣言の対象、地震対策特別措置法の対象地域となりました。そういうことから、特に名古屋の帰宅難民等の問題が出てきたわけです。

どこで地震が多く起きるかというと、実は日本の周辺で地震が起きる場所は比較的内陸は少なくて、海に帯状の広がりがあります。このピンクとか赤の点が震源を表してます。ここには海溝というものがあり、北から言いますと千島海溝、日本海溝、伊豆小笠原海溝。あと海溝という名前はついていませんが、相模トラフ、南海トラフという名前がついております。ここに地球表面のプレート境、地球をニワトリの卵に例えますと卵のヒビがここに入っているわけです。そこで地震が起きるというわけです。それと非常によくある質問が、「東海地震はこれだけ来ないんだからもう来ないんじゃないか」です。それに対して私が大学生に言っているのは、東海地震が来ますかという質問は、人間は死にますかと言っているのと一緒で、東海地震は必ず来るということです。ところがいつ来るのかとか、次がどこかというと、それは誰が一番先に死ぬかということと同じで、予測はすごく難しいのです。要するに、必ずこれは来るけれどもいつ来るかわからないということが答えになっております。それを克服し、いかに精度良く予測出来るかということが課題です。

東海地震に関しては、規則性というものが分かっています。過去100年から150年の周期で、ほぼ同じ規模の地震が同じ場所で起きている。これが近い将来起きるだろうという根拠です。実際には1707年、1854年、このあと1944年46年、つまり、昭和19年と21年です。 

                                                                       

その時に割れ残った場所、それが駿河湾です。1707年と1854年の地震は、非常によく記録が残っています。実は昭和の地震が一番データがないのです。昭和19年の地震というのは、実を言いますと日本の敗戦を早めた。実際には中京地区の軍需工場がほとんど壊されたのですが、いわゆる大本営発表で全く情報が出されませんでした。昭和21年の方は、戦後の混乱期という事もあり情報が不十分だったのです。

過去の東海地震を見てみますと、684年から一応記録はありますが、次が1096年。飛んでるのは、実は地震がなかったというよりも、古文書等から言えるのですが、記録に欠落があるということではないかと思います。そして1498年、1605年ときて、問題の次の東海地震は、たぶん名前をつけるとすれば、平成東海地震というのではないかと思いますけれど。ここには12月と書いてあります。これは静岡の地元の人も全く知らないし、皆さんほとんど知らないと思いますが、今まで過去1500年間で12回の地震が起きてますが、半数近くの5回が12月です。1月に起きていないじゃないかと思われる方もいると思うのですが、もし100回位あるとすると、きれいに冬に多いという結果になります。冬に多いというよりは、春から夏にかけては起きないと言う方が正しいと思いますが、原因はこれまで全くわかりませんでした。

 しかし、ようやく最近2つの理由が考えられるようになってきました。その1つが黒潮の蛇行です。黒潮というのは非常に栄養分のある重たい海水で、例えば八丈島で観測した時に、黒潮が近づくと平均潮位が80pくらい上がります。それが三宅島とか本州側を流れますと下がります。要するに黒潮が、日本の近くを流れるか遠くを流れるかによって変化が生じるわけです。

 もう1つの理由が、雪です。よくゴールデンウィーク前になりますと立山黒部アルペンルートで雪の回廊とか、八甲田・八幡平で道路が開通しましたというニュースがあります。要するに日本列島というのは脊梁山脈の西側では雪が8m・10mと降っています。雪と言っても10mも降りますと1mの水くらいの重さがあります。これは国土地理院のGPSでわかったことなのですが、地殻変動というのが、年周変化をすることがわかりました。この年周変化の仕方が普段、冬の間は雪の重みで、日本海側に1oとか2oとか傾きます。冬は太平洋側が持ち上がるということです。黒潮が遠ざかるというのも、上から抑えているものがなくなるので持ち上がる。要するに、太平洋側が持ち上がるということは、プレートとプレートを抑えている力が少なくなるということです。それが引き金になっているのではないかと言う訳です。例えば、牛がいて最初は50sづつ荷物を積んでいっても平気です。ところが最後は1s乗せてもつぶれてしまいます。この最後のきっかけが、雪のわずかな加重や、海流の変化なのです。いわゆる臨界状態に達した時に、最後の一押しを何がやるかということです。そうすると、冬のわずかな力のアンバランスがこういう結果を出しているのではないかと思います。

 なぜこんなに東海地震が話題になっているかというと、これまでタブーだった発生時期の予測というものが、具体的に学説でたくさん出てきていることにあります。これは阪神大震災の後に、国が基盤観測網というものを整備して、GPS・地殻変動・地震計というものを配備したところ、地下のひずみというものがよくわかるようになりました。それは、予知というよりは、現在の観測データを元に概想したら、いつごろ破綻するかと数学的なモデルです。それについては筑波の防災研、名古屋大、東大、地震研など、外国からもロシアの解析結果などが出されています。例えば地震活動度変化とか御前崎の隆起とか、あるいはフラクタル次元という、地震活動のパターン変化などです。全部独立のデータを使っているのですが、発生時期として2003年から2008年という間に全てのモデルが収束しています。

 実は2つの可能性がありまして、1つはこの期間で東海地震が起きるか、もう1つは2020年から2030年まで起きなくてその後、東海地震単独ではなく、東南海,南海と連動して起きるだろうと考えています。

 今日はそのうちの1つだけご紹介します。

 名古屋大学の解析で、GPSの地殻変動の加速現象というものです。GPSはカーナビゲーションとしておなじみで、自分の位置が正確にわかる。最近では携帯電話等で、自分がどこにいるかという事が非常によくわかるようになりました。これはすべて宇宙技術です。

これは国土地理院が観測しているわけですが、赤丸で囲みました東海地方のあたりで、なんとなくほうきで掃いたような直線が揃ってます。これは水平方向の動きですが、これを時間軸で見てみますと、どうも浜松周辺の変化が非常に大きいのがわかります。横軸が97年から2005年までです。なぜ97年かというと、阪神大震災のあとに基盤観測網として国土地理院が整備を始めて、ほぼこの頃に観測網が出来上がったからです。そうしますと浜松市の東西方向の動きは、それまでは何も動いてなかったのですが、2000年から2001年位から上がりだして、2003年まで上昇。その後、若干停滞しましたが、またこれが加速しだして、ここでまた向きが変わっています。これは昨年、紀伊半島沖で大きな地震があってその影響です。実を言うと、毎月の気象庁の定例判定会でこのグラフが毎月毎月up to dateされます。これが加速しだすと、いわゆるプレスリップという東海地震の警戒宣言に繋がる変化なのです。実際、こういうことが地下で起きていることがわかるようになってきたということです。2000年から2005年まで約5年かけて浜松市が東の方に6p〜7p。南の方に5p〜6p動いているのです。先ほどの矢印がそういう意味だったのですが、5年間かけてたかだかこのくらいですから、もちろん市民は気が付かないわけです。実際には今マグニチュード7クラスのエネルギーはすでに開放しています。ところが想定される大きさは8ですから1違うと30倍違うので、だいたい3%のエネルギーがゆっくりと開放されたのです。でもまだ97%残っているのが現状です。、これが加速しだすと、実は判定会の前よりも、もしかしたら国土地理院のホームページを見ている人が騒ぎ出すかもしれません。昔と違って今情報のコントロールがきかないというか、コントロールしようとするとかえっておかしなことが起きる。たぶんこの国土地理院のホームページは、非常に注目されるものではないかと思われます。世間では、この更新が止まったら危ないんじゃないかとも言われています。

 さて、地震予知研究ですけれども、実は地震予知という言葉は阪神大震災の時はほとんど禁句のようになりました。超能力・オカルト的なんですね。例えば台風予知とか天気予知とは言いません、天気予報とか天気予測とか台風進路予測で。ですから予知という言葉は、ある意味政府の機関の中でもほとんど外されて、筑波の防災科研でも予知というセクションが無くなったのです。一番おもしろいのが、東大に地震予知情報センターというのがあって、日本語はそう書いてあるのですが、英語はearthquake information centerだけなのです。それしか書いていません。外国から見ると予知はやめたという風に思われているわけです。

 私は、地震学会の地震予知検討委員や、国際的な地震予知の委員をやっておりますが、一番正しい言葉は、早期検知とか早期発見です。ガンの早期発見とは、ガンの予知ではなくて非常に小さい種のうちに見つけることです。地震も全く兆候がないときに予知するというのは不可能です。ですから我々は、日時を指定した地震予知とか噴火予知というのは、これは頭から否定しています。例えば岩手山噴火説とか富士山噴火説とかよく出ますけれども、前の日になったら明日噴火するかもしれない、明日地震が来るかもしれないというのは言えるかもしれません。例えば宮城県沖で長町利府断層の深いところで動きがあり、地殻変動が起き出した。そして地下水も水位が上がったとか下がったとか濁ったとか、なまずが騒いだとかあるかもしれません。そういうことが重なったらこれは明日とか明後日とか日時が入る可能性がありますが、1ヶ月後とか非常に長い先の日時を指定した予知情報は、頭から否定していただきたいのです。

 それから私は、実は地震雲撲滅運動委員をやっています。普通の人が言う地震雲は全く根拠がありません。また国では、地震発生長期評価として活断層調査をやります。たとえば核燃料の最終処分地としてどこが安全かというような判断にはこの長期評価が役に立つと思います。実は最終処分場というのはすでに廃棄燃料は冷えていますので、科学的にはそれほど危なくないのです。どういうことかというと冷えるまでの中間処分場がもっと危ないのです。熱いわけですから。最終処分場に行くときには冷えてますし、元々地下にあったものなので全く危なくない、精神論だけなんです。もし、最終処分地となれば、未来永劫に赤字財政がなくなるということです。そうすると住民税もほとんどゼロに近いのではないかと思います。今が危ないということを言うとまた非常に問題なのですが、冷えてしまえばこれはどうということはない、元々地中にあったものですし問題ありません。この辺が今の科学知識と行政とのギャップというか住民の知識とのギャップといえます。

活断層調査や宮城県沖地震の予測のようなものが長期予測です。中期予測というのは、今日紹介しますような、地殻変動に伴う電磁気の観測などで行う予測です。例えば、去年京都大学の防災研究所が、京都府はおかしな状況が続いてると発表しています。阪神大震災の前と同じ状態でかつ地殻変動も起きていて、安土桃山時代から数百年動いてない銀閣寺の脇を通ってます花折断層というのが動く可能性があるのではないかと。これは京都大学が正式に、今おかしい、阪神大震災の前と全く同じ状況が起きてますということを発表してます。

 あともう一つは、福岡県西方沖で地震が起きたことによって一ヶ所のタガがはずれましたから、福岡市の下を通っている警固断層に応力が集中し、これも非常に悩ましい状態が続いてます。たまたま九州大学が違う目的で井戸を6ヶ所くらい掘っていまして、本震を含めて大きな余震が5回ありましたが、5回とも数日前から変わって直前にまた変わって地震が起きるという、全く同じパターンを繰り返しているという結果が出ています。そこで九州大学工学部では、もし次に同じ大きな変化が出たら記者会見するとはっきり言っています。次は福岡市の直下の可能性が非常に高いわけですから。これは日本で始めての地震予知のようなものといえます。

 長期中期というのはある意味統計的なものか、観測データに基づくものです。今日お話します短期直前予測というのは、公式見解としては東海地震以外はできないことになっています。しかし、実は研究レベルとしては非常に進んでいるということを今日お話します。けれどもまだ一般には情報として出せるものではない。もちろん前兆現象を捕捉することができますし、危機管理、食料備蓄、緊急物資、仮設住宅等の対応に使えます。

 実際にギリシャで今から15年ほど前に1度予知が成功しまして、その時は地震が起きる前からコンテナ車を改造して仮設住宅の発注が始まっていました。もう一つもギリシャで、かなり曖昧だが可能性は高いという情報が政府に入りまして、もちろん国の出先機関と軍隊にしか知らせない、一般には一切知らせません。そこで市長さんがやらせ質問を記者にさせました。「今政府がこういう動きがありますが、あなたは知っていますか?」と。「はい知ってます。」と。「地震は来るんですか?」と。「私はそれは答えられないけどそういう情報があるのは事実だ。」というやり方でリークしました。市長さんは、地震が来るということを発表すると罪になりますので、やらせ質問を記者にうまくやらせたのです。それで、実際に逃げる人は逃げたし、かなり大騒ぎになったのですが、一応情報が隅々まで伝わったことがわかります。

 更にもう一回ギリシャで、これは地震の情報は全く知らされてなかったのですが、何が起きたかというと、軍隊というのは普通、24時間待機ということで、いつでもフル装備で出動できると彼らは言っています。それを24時間から12時間、6時間待機といういわゆるレベルを上げました。実際、地震は、朝の8時くらいに発生したのですが、午後3時の段階で、そのとき8000棟倒壊しましたが、全ての世帯に午後3時までにテントが行き渡って、その段階で防災担当大臣が陣頭指揮していました。そういう意味では、後のフォローアップはうまくいったということです。実際の場合、情報を市民に伝えないということはなかなか難しくて、責任者である皆さんにもし情報が入った時に、奥様に言うかどうかということです。これは難しいとこで、奥様に言ったら地震波より速く伝わりますので、ここが公務員としての守秘義務の観点で難しいところです。

 私が、避難対策について本を書きましたときに、印刷屋さんが、人をけなすという方の「非難」を書いてしまったことがありましたが、その頃、どこかの国の首相が潜水艦がぶつかった時にゴルフしてたとか、確か隣の副知事さんが地震の時に公用車でパチンコしてたとかあって、非難を受けておりました。首長さんや幹部の「非難対策」としても地震予知というのは非常に役に立つのではないかという点で、あながちどちらも間違いとはいえないのではないでしょうか。

 ですから今、長期予測については国が行っており、中期予測に関して法律で動けるのは東海地震であり、それにのっとって短期直前については東海地震だけとなります。それ以外のところではできないというのが公式見解で、他の地域でのオフィシャルでの予知というのは一切できません。ただし、研究段階では行われており、どのようなことが行われているかということを今からお話します。

これらは明らかにデジタル技術で、いろんな手法がありますが、今日はGPSと電磁気をご紹介します。

                  

GPSは昔からの測量に取って代わった宇宙技術です。最近道路際で測量をしていないのは、みんなこの電子基準点があるからです。これまで、陸軍の陸地測量部、建設省、今は国交省の国土地理院が、100年かけてやっていたことが、GPSは1年でできます。GPSでこれだけ日本列島が動いているということがわかったわけです。そうしますと、太平洋側からどんどん押されていて、ひずみが限界まで達すると、100年に1回ほど、どんと戻る。それが手に取るようにわかるようになってきました。先ほどの揺らぎからずれてきて、明らかに今、どの地域がおかしいということがわかるようになってきました。本当に劇的な進歩だと思います。

地震予知の具体例に入る前にいろんな段階があるということをお話します。要するに直前予知ができるためには、何らかの前兆現象があることが必要です。また現在の地震学のコンセンサスとして前駆的な現象は存在すると考えられています。それらもたぶん観測可能であろうと思われてます。ただし問題は、その異常が地震発生前に、これが真に異常かどうかを判断できるかということなんです。

 東海地震で言いますと、たとえば静岡県下で1時間に50個の地震が起たとしますと自動的に判定会メンバーが招集される事になっていると仮定します。ところが48個だったらどうかというと、その時の当直の人は知らせなくてもいいんですが、でも50というのは、人間が引いた線で物理的に意味はありません。当初は45だったかもしれない。気象庁スタッフに、「48個だったらどうする?」と聞きますと、「私は知らせますよ。」という。「45個だったら?」「やりますよ」。「40個だったら?」「1時間様子を見ようかな」。当然です。ところが最悪の場合、前兆現象が出だしてから地震発生まで1時間か2時間しかないというモデルもあります。そうすると1時間待つとアウトなのです。ですから、異常を判断できるかというのが極めて大きな問題です。実際には、まだこの判断を社会に伝えたことはありません。1発目が本番です。これは何が起こるかわかりません。

 傑作だったのは、今から10年ほど前に当時の建設省の静岡国道事務所が、間違えて「警戒宣言発令中」というテロップ出してしまいました。ところが誰も気が付かなかったんです。要するに何の警戒宣言なのか意味が分からなかったんです。地震という情報はありませんでした。もし東海地震として政府が警戒宣言を出した時には、何か大変なことが起きるのか起きないのかもわかりません。どれくらい混乱が起きるのかもわかりません。

 実を言いますと、先月5月の26日に、アメリカの株価が上昇したのにもかかわらず日本の株価が150円台に急落したことがありました。原因は、あるアマチュアの方の予知情報で、エックスデーとして5月27日というのが出たことから、株屋さんが売りに走ったことによるものでした。その時は、なぜ突然こんなに下がったのかわからないという状況だったのですが、後から調べてみるとそのようなアングラ情報によって株が一部動いていたのです。ですから、本当に気象庁が警戒宣言を出したら、必ず経済に影響が出て、株が一時暴落するのではないかと思います。

 実は5月26日の株価の下落騒ぎも、ある一つの情報だけでした。しかし一部の人達は敏感に反応した。今の我々の地震予知の段階は、前兆現象を捉えるだけの計測機器はほぼ揃ったのですが、まだ十分ではないということです。医学でいうと進歩により、CTスキャンで情報を得るようになりましたが、地震予知の研究は、まだ聴診器ができたくらいです。どういうことかというと、地震計というのは地震が起きないと動かないということに多くの人が気が付いていないのです。ところが、地震予知をするためには、地震計が動く前に地下でなにが起こっているか観測をしなければならない。地震予知計画というのは、地震計というのがなかった時代から始まったために、予算の90%以上はいわゆる地震計の整備をしてきました。起きた地震のことは極めてよくわかる。問題は、よく地震予知は無駄遣いだと言うのですが、その理由は地震計の整備にあります。事実、年間100億円とかついていますが、うち90何億円は維持費です、極端な話、大学で使えるお金は2億円しかありません。北海道大、東北大、東大、京大など地震予知研究を実施している大学が使っています。研究者が100人以上いて2億円です。その2億円のうちの1億8000万くらいは地震観測に使ってますので、本当の研究的経費は2000万くらいしかないです。ですから、みんな一回東京に会議に行って帰ってきたら終わりというくらいのものですので、それでは予知ができるはずがない。

 地震計はいわゆる地震予知には役に立たないのです。役に立つのは地殻変動の観測です。東海地震の判定会でも今は地震計のデータは一切使っていないのです。政府もみなさんも、日本は地震予知研究をやっていると思ってます。国民の実現してほしい技術のトップクラスに地震予知はきます。けれども、地震予知、直前予測の研究をやっているかというと、実は、誰もやっていないということを誰も知らないのです。東大の地震研に入ってまず言われることは、地震予知をやりたいという人は出てってください、うちは地震予知はやってませんとはっきり言います。

 ですから、世間では、地震予知研究なので地震予知をしていると思っているでしょうけれど、実際には地震の基礎研究をしてるというギャップがあることが一番大きな問題です。結局、予算を取るときに、予知ができるといってしまったために、このような不幸なズレが起きてしまいました。

一番正しいやり方は、国土地理院にしろ地震観測にしろ、予知ができるできないに関係なく、地下の地図がなかったから地下の地図を作るんだと言って、予知とからめずに国が文明国として地下の地図があるのは当たり前だと言って地震観測を行えばよかったのですが、予知とからめたために矛盾が起きてるだけなのです。本当の意味での短期・直前地震予知研究というのは実際にはほとんどやられていないというのが現状なのです。

 さて、ここまで話をまとめますと、予知ができるためには何らかの前兆現象のあることが条件となります。しかし、それがあるからと言って正確な予知ができるわけではない。ですから、今出てるのは曖昧な情報といえます。

例えば、阪神の時に何が起きたかというのをご説明しますと、地震活動度は役に立ちました。この地域で震源地がここという時に、フラクタル次元という起き方の分析をします。すると、実はこの3ヶ月くらい前から極めてフラクタルというものが変わってまして、こうなると誰でもおかしいということが分かるわけです。                                                            今この状態が、実は岩手県でも起きてるんです。地震活動度が明らかに通常よりもおかしいという異常の状態が、2年くらい前から起きています。今こちらよりもこちらの方が可能性が高いとか、もしここでこういうようなことが起きたら注意しましょうというようなことは言えるわけです。ですから、さっき地震計は役に立たないと言いましたがこういう面では役に立っています。                        続いて、電磁気の話になるのですが、阪神大震災で1月17日に地震があったときに、いろいろな現象がその一週間くらい前に起きていたことがわかっています。他に2日くらい前に起こっていたことも分かっています。ついに、地震が電離層にまで影響を与えているということが証明されました。

どういうことかというと、1月17日の前後8ヶ月間で、ある種のパラメーターであるFM串田法というのがこの折れ線で、よく週刊誌に出てくるものです。下は電気通信大学の観測ですが、1月15日16日、地震の2日前くらいに、神戸上空の電離層に異常があったということがこれを見てもわかります。これは3シグマを越えるような異常です。

 



同じく1月15日16日に、大阪大のタンパク質研究所というところで飼っていたねずみが、夜行性なんですが、10年のうちでその2日間だけ昼間暴れました。要するに、そこに非常に動物を不愉快にさせるようなことが起きた。これはどうやら電磁波の異常だった可能性が高いということです。このように、震源上空でおかしなことが起きるということがわかってまいりました。これもようやく統計的に証明されました。ただし、こういうことがあったからといって、規模とか場所が正確に予測できるということはないのです。ですからこの間の5月の騒ぎで、南関東地震説はある特定の人が特定のパラメーターで予測して、結果、実際にはこなかった、ということです。

実は、地震発生時には、一番高い周波数の電磁波、光が出ることもわかってます。いろんなことが起きて地震というものに到達するのではないかということです。                                                            世の中には、地震についてさまざまな研究をしている人がいます。もともと地震予知研究のつもりで始めた人と、偶然自分の観測データがはまってしまった人などいろんな人がいます。




その中の具体例として、最近では一番大きな地震火山活動となりました2000年の三宅島の噴火と伊豆の群発地震の時に何が起きたかをご説明します。                群発地震は2000年の6月末から始まりました。我々は新島で地電流という地下を流れる電流と、伊豆半島で非常に精密な磁力計により地球磁場というものを測っていました。

 


横軸は98年から2000年の3年間です。観測はここから始まったのですが、明らかにこのあたりからおかしいというのは誰が見てもわかります。これが地震噴火が始まる2ヶ月前です。伊豆半島でも同時期異常が起きています。この異常はどこからやってきたか。これはステレオで測ればいい。しかし、大学はお金がないものですからそれができない。噴火なのか地震なのかもわからないが、伊豆半島と伊豆諸島の下で何かおかしなことが起きているということはわかりました。




それから2年後くらいに伊豆大島で同じようなことが起きて、その時は東京都にもお伝えしました。この時は、東海大のデータと筑波の防災科研と同時に異常が出ました。それから地震活動も起きて非常に緊張しました。(一部省略) 地震予知研究の最大の課題は、地震の前兆現象はあるけれども小さいということなんです。

 





今からお見せするのは、地磁気を測ったデータです。一番影響が大きいのは太陽活動で、よくデリンジャー現象とかオーロラとか、要するに太陽の影響で地球の磁場は変わるということです。ですから一番よく似てるのは太陽活動なのです。上が地磁気なんですけれど、この太陽活動の影響をまず取り除きます。

 





次におもしろいのは、上の1ヶ月分のグラフは規則的にヒゲが出てますね。これ日変化なんです。一番おもしろいのがここでして、0時〜24時、これ平日なんですが1日です。平日の記録を重ねますと朝の7時くらいからレベルが高くなって、お昼休みの時だけ一旦下がります。実はこれは電力消費量なんです。

 



ですから、地震の前兆現象というのは太陽活動の影響を取り除いて、人工の影響を全部取り除いた残りの残りかすに入ってるんです。これを解析するためにどれくらいデータが必要かというと、今我々は一日あたり1GBのデータを大学に転送しています。

 






1GBのデータを転送するということは、10年前では不可能でした。まさに今だからできるようなものです。それによって、原因が分かってるものを全て取り除いた残りかすが実はさっきの絵です。これはまさにデジタル技術の進歩です。今ではどこにどういう異常源があってということが全部わかって、包囲探査と言いますけれども、それにより震源の場所がわかるようになってます。

 





今我々が言えるのは、南関東で1週間以内にこういう異常が出ていて、過去においては10例中8例こういうことが起こりましたということです。例えば、仙台でも福島県境付近で非常に大きな異常が出ております。この時には、過去8例中5例において1週間以内にマグニチュード6の地震が発生したことがあります。という情報を使えるかどうかということなんです。

 





例えばそれが宮城県北部といっても気仙沼なのか仙台なのかわからないと首長さんも困ると思いますが、現状ではそれさえも出せないのです。ただし、阪神大震災クラスの規模であれば、仙台市北部でも東北地方南部でもいいんじゃないかと思うんです。問題は、そういう曖昧な情報で、可能性が100%ではないものがどう生かせるかということです。こういう状況がまだ続くわけですけれども、現時点においてもいろんなことが行われてます。驚くべきことは、フランスが人工衛星を打ち上げ、その後もトルコ、それからメキシコ、ウクライナ、ロシアが、地震予知の為の電磁計装を打ち上げようとしています。イタリアは、今の国際宇宙ステーションに先月、器械を持ち込んで、有人でも地震予知のための電磁波観測を国際宇宙ステーションからやろうとしています。日本だけはこの分野において何もやってない状況です。

 もう一つ、どういうことができるか。電磁層のどのような異常がキャッチ出来るかということです。今、FM仙台を遠くで受信するということを、千葉大学、東京学芸大学、電気通信大学、東海大学、北海道大学で行っています。FM仙台というのは、非常に電波の強い放送局で、あまり周波数を使っていない非常にめずらしい放送局なんです。まず、この四角の範囲内で、1年間のうち連続的に300日間、具体的には99年の7月から2000年の10月にあたる300日間を選んで、この範囲内に起きたマグニチュード4.5以上の地震を機械的に選び出します。 

 

FM仙台の放送というのは、本来東京では聞こえません。それが地震の前だけ聞こえるという話なのです。記録を見ますと、このスパイク状に飛び出ているのは、隕石の影響によるものです。その要因を取り除いたもので見た時に、ほぼ平らで何も異常がない。ちょっと異常がある。そこそこ異常がある。非常に大きく異常がある。このように4段階に分けます。東京からFM仙台をアンテナで受信しているとき、このような違いが現れます。そうしますと、300日間の中の60%、180日間と最も多いのは、もちろんなんの異常もない日です。異常の度合いが大きくなるにつれて、その日数は少なくなる。ここでいう大きな擾乱があった日はもちろん一番少なくて、300日の中の19日間しかない。ところが、異常電波のあった当日とその1日前2日前と三日間だけ見てみると、何か異常電波があったぞというところで、極めて高い確率で地震が起きているということがわかったんです。要するに必要十分条件で、このような異常電波が見られた時に、実際あとから見てみると、たくさん地震が起きている。統計的に明らかに有意です。これで、非常に考えづらい空の現象と地震の現象がようやく結びつきました。これが、串田さんが最初に発見したことなんですけれども、そのあと北大やいろんな大学が追試して、ようやく国際的にも認められました。
 

 それから実は、地震予知だけではなく制御すら可能かもしれません。

キルギスという、今、渡航制限があるところなんですけれども、地震が頻繁に起きるところがあります。愛知万博で展示してあるもので、地殻変動電動コントロールシステムといって、震源の深さ30qまでの震災管理システムというのがあります。キルギスは20年前からやっているのですが、ものすごい大きな発電機で地下に電流を送りこみ、20日間とか40日間ここで実験をするんですけれども、そうすると必ず送信後2日目くらいから地震が起きるんですね。


これを使ってキルギスでは地震を人工的に誘発してエネルギーが溜まらないように小出しにしようということで行っています。入れたエネルギーの100万倍が出てることがわかっています。            日本でも行ったらと思う人もいるかもしれませんが、うまくいったつもりが、小出しにできなくて大出しになってしまう可能性もあります。この国は、ある意味、補償しなくても良いという社会主義的国家だからできるのかもしれません。ただ、今や世界では、地震予知だけではなく地震制御までを目指している国もあるということです。                                                                  

  次は、防災の話を少しします。地震は、非常に広域災害です。集中豪雨と比較しても桁が違います。もし宮城県沖地震が起きたら、宮城県全体が被災しますから、応援協定市町村でも県でも、もしかすると隣の県からでも応援は来ないかもしれない。それから、マニュアルには、大きな地震ほど職員が早く集まると書いてありますが間違いで、大地震ほど人が来れなくなるということは明らかです。その中で対処しなければならないということです。それから非常食は生き残った人しか食べられないと言うのが現実です。しかも、よく講演会で言っているのは、「非常食は必要ありませんよ」ということです。なぜかというと、冷蔵庫の中のものを全部食べようとしたら結構時間がかかります。阪神も中越も、震災当時は冷たいながらも豪華な食事となりました。冷凍食品が溶けだしてしまうので早く食べないと腐ってしまうからです。

                  

 

 

 

 

 

 

 ですから今、我々が内閣府と一生懸命進めているのは、耐震補強の推進です。

 なぜ耐震補強をやっているかというと、実は地震では人は死にません。人は倒れてきた建物や家具に押しつぶされて死ぬことが多いのです。日本の建物は、一般的には極めて丈夫です。今の我々の最大の政策は、昭和56年以前に建てられた建物に対して、地震に対する対処法を進めることです。グラフの青い所が倒壊大破してしまう部分で、ここに住んでいる人たちは非常食があっても食べられない可能性が大きい。ここを救おうということです。

これは台湾のコンクリート建ての建物で、タイルが壁の中に入っているように見えますけど、これは全部一斗缶なんです。しかも、この中にはゴミが入っています。これは、ゴミの処分費用がかからず、コンクリートも減らせるという、皮肉を言うと非常に効率的かつ理想的な台湾の「標準工法」だったのです。もうありとあらゆる壁の中からゴミが出てきました。

 


もう一つ、なぜ耐震補強かということの最大の根拠ですが、いつ亡くなったか、何時に亡くなったかということを調べてみますと、8割は即死です。97%はその日のうちに亡くなってます。ですから初動体制がよくても、8割の人は助けるのが無理だったのです。村山内閣の対応のまずさにより自衛隊が遅れたのが死者が増えた原因というのは必ずしも当てはまらないわけです。死因を調べてみますと、8割が建物倒壊です。                             

 










ですから、これを救うには耐震補強しかないというのが、今内閣府が最重要として打ち出している、地震への対応策になります。

また、年齢別に見ると、突出しているのが学生の年代です。大学生というのは一番安いところに住んでいます。ですから安いということは古いということで、明らかに体力等は関係なくて、体力があっても古い建物に住んでいたら死んでしまいますよということです。

 

 


火事に関しても非常に大きな勘違いがあります。建物が壊れたから火事がでるんです。ですから建物を壊さなければ、火事が出る確立はかなり低くなります。これも驚くべき統計です。これもよくいいますけれども、中央防災会議で大地震が予想された地域のうち、ここの2ヶ所だけが残っています。ですから今年の冬は特に黒潮も南に蛇行してるし、何となくいやだなあと思っております。

 


災害が起きた際、被災された方々にとって重要なのは、被災後の暮らしです。これをみんな結構忘れてるのです。なんで避難所から出ていかないかというと、やっぱりいくら親戚でも1ヶ月もいられると嫌がられるに決まってます。そのためにも耐震補強をきちんとしましょうということです。

 





 

これが、問題はご高齢者の方だとした時の内閣府と僕らが出している提案です。リバース・モーゲージという不動産を担保にして融資を実施するものです。中野区ではもう始まってまして、地価の6割か7割を自動で貸してくれます。立て直すなり補強するなりして、もし跡継ぎの方がいないのであれば、お亡くなりになってから土地で返すというものです。また、大家さんを動かして、賃貸住宅の耐震補強なり強度がないと貸してはいけないという法律にこれからなっていくと思います。

 個人財産は補償しないと言っているんですけれども、結局がれきの撤去にしろ仮設にしろ全部国の費用、税金です。阪神の場合一棟あたり1300万円税金が入ってます。東京でもし起きたら約80兆円の被害が出ると言われてますけれども、1兆円で対処方法が全部終わるので、それを公共事業でやってしまおうとしています。平成版ニューディール政策と呼んでいます。それが結局は、国の支出が減ることにつながるということにようやく政府が気付きました。

トルコとかイランの場合は耐震補強は新築と同じくらいお金がかかるんです。これではそれは成り立たない。日本みたいに耐震補強が新築の5%とかで出来るということであれば成り立つ訳です。ようやく、このような考え方が出てくるようになりました。

 

 


また、非常時に備えてこういうことも考えていかなければならないという一例をあげますが、東京都のある区のマニュアルでは、震度5の地震が発生すると10%の職員が1時間以内に当直室に入ります。震度6だと30%が30分以内です。震度7だったら10分以内に100%となっています。しかし、これは普通に考えてあり得ないことです。要するに、極端な話をすると震度7が起きたら誰も来ないというマニュアルに書き換えなければならないということです。そういうところから見直す必要があります                                                                                  

最後に2,3分非常におもしろいデータをお見せしたいと思います。

 国土交通省が水文水質データベースというものを河川の管理でやってます。信じられないことに、2003年十勝沖地震の時、国交省の北海道の雨量計のデータが頻繁に欠測しました。故障によらないで欠測するということは、原因不明の電波伝搬の異常ですとか混信とかそういう影響が考えられます。国交省の水文水質データベースで検証したものを、時系列で見てみると、今回の十勝の欠測は、2003年の9月になってから頻繁に始まったことがわかりました。地震が起きる3週間前はほとんど欠測してませんでしたが、2週間前は一部欠測、1週間前は40%くらい欠測してます。そして、地震が発生して1週間後、自動的に全部正常に戻ってます。低気圧とか台風がきてもほとんど有意な変化は見られなかったことから、今回の現象は十勝沖地震に先行する電磁気的な現象を捉えた可能性があることが考えられる訳です。このようないわゆる電波障害みたいな話があり、実は東北地方でも類似のものをモニターしてる人がいまして、来週東北で地震があるとか言っている人もいるんです。信じがたいことなんですけれども、世の中にはこういうことをやっている人が結構います。これだけで予知ができるわけではないんですけれども、合わせ技で曖昧な情報をいかに確実にするかということだと思います。問題は、このような情報はオープンで出てますから、勝手にやる人が出てきます。このような異常と思われるような現象が目に触れると、仙台のどこかがおかしいとか、代議士さんに来週地震が起きますなどと話す人が出てきたりします。そうすると、我々もあたふたして夜中に呼び出されたり、スマトラ島沖地震をうけて、ゾウが地震を予知したからゾウを飼わなきゃいかんとか、そういう極端な話が出てきたりするのです。

 ある意味、社会のシステムが微弱なシグナルで制御されてますので、何か想定外の擾乱が入ると、こういう異常が起きることがあるということなんです。

 以上で、終わりにしたいと思います。

 今日は本当に長時間ありがとうございました。